もっと強く願っていいのだ
わたしたちは明石の鯛がたべたいと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは幾種類ものジャムが
いつも食卓にあるようにと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは朝日の射すあかるい台所が
ほしいと
すりきれた靴はあっさりとすて
キュッと鳴る新しい靴の感触を
もっとしばしば味いたいと
秋 旅に出たひとがあれば
ウィンクで送ってやればいいのだ
なぜだろう
萎縮することが生活なのだと
おもいこんでしまった村と町
家々のひさしは上目づかいのまぶた
おーい 小さな時計屋さん
猫背をのばし あなたは叫んでいいのだ
今年もついに土用の鰻と会わなかったと
おーい 小さな釣道具屋さん
あなたは叫んでいいのだ
俺はまだ伊勢の海もみていないと
女がほしければ奪うのもいいのだ
男がほしければ奪うのもいいのだ
ああ わたしたちが
もっともっと貪婪にならないかぎり
なにごとも始りはしないのだ