| そのら | 「今回は前振り無しだ。始めるぞ! 『よい子のためのサバゲー講座 第7回:違法改造銃』!」 | |
| ゆら | 「よろしくおねがいいたします」 | |
| そのら | 「わたしも聞いた話なんだけどな。昔、日本のサバゲーは暗黒時代があったらしい」 | |
| ゆら | 「あんこくじだい……ですか?」 | |
| そのら | 「ああ。銃のパワーアップ競争がたどり着いた先の負の世界だ」 | |
| ゆら | 「?」 | |
| そのら | 「サバゲーで勝つなら、相手より遠くから撃てる強力な銃を持てば有利だ。どうしてだと思う?」 | |
| ゆら | 「向こうが撃てないうちに一方的に撃てますから……」 | |
| そのら | 「そう。そのために改造して工業用スプリングを入れたり、炭酸ガスや高圧圧縮空気をそのまま流し込むんだ。BB弾も重い方がいい。そのほうが低伸弾道が得られる。そして金属製の6mm弾を使うヤツらも出てきた」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| そのら | 「ひどい世界だったらしいぞ? 歯が折れたり肉に弾がめり込むのは当たり前で、最悪殴り合いもあったんだってさ」 | |
| ゆら | 「そんなのっ、楽しくないじゃないですかっ!?」 | |
| そのら | 「そう。楽しくない。だからみんな去っていった。みんなだ。日本のサバゲーはそのとき滅びかけたんだ」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| そのら | 「しかもその改造銃で面白半分に通行人や動物を撃つヤツらも出てきた」 | |
| ゆら | 「許せないです……」 | |
| そのら | 「ああ。わたしも絶対許さない。結果、わたしたちのエアガンは『有害玩具』になった」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| そのら | 「でもだ、ここで不思議なことが起こった」 | |
| ゆら | 「不思議なこと、ですか?」 | |
| そのら | 「エアガンの法律が変わったんだ。その法律でエアガンのパワーは基本0.98ジュール以下に……つまり。よっぽどのことがないとケガしないようなパワーにしないといけないって法律ができた」 | |
| ゆら | 「はあ……」 | |
| そのら | 「その法律の名前は『改正・銃砲刀剣類所持等取締法』。通称改正銃刀法。つまり、危険なパワーアップ改造エアガンを作ったり持ったり撃ったりすることは、本物の実銃を撃つのと同じ法律で裁かれるようになったんだ。怒られてすむ話じゃない。0.1ジュールでもオーバーしたら逮捕されて刑務所行きだ」 | |
| ゆら | 「それって厳しすぎるんじゃ……確かに人にケガさせるような危ない銃をサバゲーに使う人は許せないですけど」 | |
| そのら | 「確かに厳しいな。でもなゆら、不思議の話はまだ続いてる」 | |
| ゆら | 「はい」 | |
| そのら | 「その厳しい法律のおかげで、マナーさえ守ればサバゲーは『安全で楽しい戦争ごっこ』になった。もう誰も血が出るような大怪我はしない。憎しみも生まれない」 | |
| ゆら | 「ほわー」 | |
| そのら | 「遊べる場所もそのへんの空き地や公園から、サバゲー専用フィールドになった」 | |
| ゆら | C³部も専用フィールド使ってますしね! | |
| そのら | 「で、サバゲーはまた、楽しい遊びになった。『楽しんだら勝ち』って、前に言ったよな? で、みんなが勝てる遊びになった。だから、わたしたちも参加できる。みんなが集まれる。みんなが集まれば、楽しさは1億パーセント!」 | |
| ゆら | 「おお!」 | |
| そのら | 「エアガンのパワー制限と一緒に、サバゲーマーにも『モラル』ができた。誰も傷つけない、誰も憎まない遊びをわたしたちはするんだっていう約束だ。今のゲーマーははこれを死守してる」 | |
| ゆら | 「……あの、そのちゃん先輩」 | |
| ゆら | 「わたしたちのアニメ見て『サバゲー面白そう』って人が増えてるみたいです。その人たちもそういうルールとモラル、守ってくれるんですか?」 | |
| そのら | 「まー最初は無理だろうな」 | |
| ゆら | 「ええっ??」 | |
| そのら | 「なぜそれをしてはいけないのか。それをルーキーに伝えるのは、ベテランのサバゲーマーの仕事だ。だろ?」 | |
| ゆら | 「はい」 | |
| そのら | 「真剣にていねいに話せば絶対わかってくれる。それでも言うこと聞かないヤツとはサバゲーしないし関わらない。最悪なのは警察に通報する。それがわたしたちのやり方だ」 | |
| ゆら | 「はいっ!」 | |
| そのら | 「ということで今回は以上だ。今回は洒落や冗談じゃないからな? じゃ、またな」 | |
| ゆら | 「またでーすっ!」 |