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ゆら |
「そのちゃん先輩大変ですっ!」 |
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ゆら |
「先輩の言ってること全然意味がわからないって声が山のように……」 |
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れんと |
「はい。わたしも解りません♪」 |
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八千代 |
「ケーキおごってもらったんならいいんじゃん?」 |
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カリラ |
「ていうかオレ、そのちゃんの講義内容なんて、全く覚えてないぜ」 |
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そのら |
「おまえら、ヒドイな……」 |
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ほのか |
「確か、撃ってる自分と相手は同じ、みたいな話よね?」 |
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そのら |
「それそれ」 |
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ほのか |
「じゃ、またまた始めるわよ?『よいこのためのサバゲー講座 第4回:戦争ごっことホントの戦争』。今回はシリアスよ? じゃ、そのちゃん、続きをどうぞっ」 |
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そのら |
「例えばだ、ゆら」 |
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ゆら |
「はい」 |
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そのら |
「わたしとゆらでサバゲーしてて、15メートル先のブッシュに隠れたわたしを見つけ、1マガジン分フルオートで撃ちまくったとする。で、そのうち1発が当たった。ヒットだ。で、わたしはどうすると思う?」 |
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ゆら |
「えっと、そのちゃん先輩がヒットコールしてフィールドから退場、ですよね」 |
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そのら |
「ヒットコールしないかもしれないぞ? 15メートル先の藪の中の相手に本当にBB弾が当たったかどうかなんて、ゆらには解らないだろ?」 |
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ゆら |
「でもそれがルールですから……」 |
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そのら |
「そうだな。サバゲーで『バレなきゃオッケー』をやったら最悪サバゲーフィールドから追放だ」 |
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ゆら |
「え!?」 |
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そのら |
「なぜなら、そいつはもうサバゲー仲間じゃないからだ。自分が撃ったBB弾に『ヒット』されてくれる仲間だって信頼してるから、安心して撃てる。きっと当たってるはずなんだけどなって思っても、信頼関係があれば『あれ気がついてないのかな?』で話が終わる」 |
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ゆら |
「なるほど……」 |
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そのら |
「相手だって同じだ。ゆらがいくら悔しくても正直にヒットコールするって全面的に信頼して、銃口を向け、銃弾を飛ばしてくる。つまり、撃つ者と撃たれる者、フィールドに参加する全員が『サバゲーの精神』を共有してるんだ。精神を共有すれば、お互いの距離は『ゼロナノメートル』。これで解るか?」 |
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ゆら |
「なんとなく……」 |
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カリラ |
「相変わらずそのらは説明へったくそだなぁ(笑)」 |
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そのら |
「わるかったな」 |
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ほのか |
「戦争ごっことホントの戦争の違いってね、『戦死を自分で決められること』なのよ」 |
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カリラ |
「リアルな戦争での交戦距離はだいたい300メートル以上。誰が撃ったか判らない銃弾が突然飛んできてそれでオシマイ。突然『死』を強制されて、もう家族にも友達にも会えない」 |
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ゆら |
「でもサバゲーは違いますよね」 |
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八千代 |
「『ヒットコール』は自分で『戦死』を決めるってことじゃん? セーフティーゾーンで敵味方関係なく雑談して休憩して次のゲームできるしさ」 |
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れんと |
「お互いの顔が見えるから、敵チームさんとも仲良くなれちゃいますしね♪」 |
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カリラ |
「『あとでメール送るからそのうち日程合わせて貸しきりでやろうぜ?』とかな」 |
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ほのか |
「もし弾切れして戦えなくなったり、体調が良くなかったりしたら無理しないで『戦死』して退場してもいいのよ」 |
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ゆら |
「そうなんですか? でもそのちゃん先輩は最後まで戦えって」 |
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そのら |
「違うな。『最後まで楽しめ!』だ。で、最後まで楽しんだら、勝ちだ!」 |
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カリラ |
「考えても見ろよ。 灼熱の中、極寒の中、土砂降りの雨の中、水も食料もなく、ボロボロのコンディションで、毎日不安と恐怖に怯え、理不尽な命令で無駄に死ぬ遊びが『サバゲー』だったら、サバゲーやるヤツなんかひとりもいないだろ〜?」 |
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れんと |
「それはイヤすぎですー」 |
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八千代 |
「確かに軍服着て銃持ってるけど、もしかしてあたしら超平和主義じゃんね?」 |
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そのら |
「形と精神性を重視するって意味で、サバゲーって禅や弓道に考え方似てる所もあるんじゃないかな。日本人ならではの娯楽なのかもな」 |
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れんと |
「海外では日本人は『HENTAI』ですからねっ」 |
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カリラ |
「今回のオチはそれかよ……」 |
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ほのか |
「そんなわけで今回はおしまい。また来週ね」 |