―ドラマが決まったときの感想を教えてください。
これまで取り締まる側の役が多かったので(笑)、殺人事件の犯人ではないかと疑惑に翻弄される役をやってみたかったんです。また宮部みゆきさんの作品は、会社でも家庭でも日常にあふれているような人間関係の情感を見事に描かれていて、物語にすごく奥行きを感じます。その作品に参加出来てとても嬉しいですね。
―第1部(1〜5話)をご覧になられていかがですか?
姉妹のお話でしたが、「こういうことあるな」という、まさしく宮部さんの世界を見させていただきました。私にも兄弟がいますし、親戚とか知人に話を聞いても、どちらも相手を羨ましがっていることはありますね。親はいつも私以外の兄弟に気を回しているんじゃないかと思い込み、お互いに同じように思っている。そういう本心の部分が立体的に描かれていて、ドラマという3文字では言い表せないような、新鮮な気がしました。
―第1部と第2部で作りが変わることについてはいかがですか?
主人公の日常が進んでいるという感じがして面白いですね。出会う人が変わって、人の人生を俯瞰で見ると、いろんな側面から人間って出来ているんだなと思いますね。励みにもなり、勉強にもなります。
―古屋暁子を演じてみていかがですか?
暁子はいつも自問自答しながら生きているんだなって感じますね。口には出さずに、無意識にそういった環境になってしまって、その自問自答が自分のトラウマの対処法というか、護身術みたいなものなのかなと思います。そして、実は暁子が登場人物の中で一番愛を乞う人ではないかと思って演じていますね。
―暁子とご自身で似ている部分はありますか?
私は普通の家庭でワイワイ育ったので、どちらかと言うと正反対の家庭環境ではありましたが、「普通でありたい」と思うことと、「平凡でなく生きて行きたい」という矛盾が共存している部分は似ていますね。結局、人から見て自分の人生を第一に考えているように見えているんですけれども、実は自分の人生を後回しにしてしまっているんです。主人公の杉村さんもそうですけど、良かれと思ってやっていることがよくなかったり、みんなのことを考えて行動しているけれど、裏目に出てしまったり、矛盾した人生ですよね。視聴者の皆さんを含めて、こういった小さな台風のようなものはあちこちで起こっていて、形と位置を変えているだけな気がしますね。
―共演者のみなさんの印象を教えてください。
小泉孝太郎さんは、世界中どこを探してもこの役は小泉さん以外考えられないだろうなと思いますね。普段の小泉さんのまっすぐ生きてきたお人柄がすごく反映されているのではないでしょうか? 特に、私は途中からゲストとも違う特殊な入り方をしているのですけれど、自然に入れるような入口を作ってくださってとても感謝しています。また、1〜5話を見ていたので、小泉さんが目の前にいるのは不思議な感覚ですね(笑)。杉咲花ちゃんは、とても自然体の演技で、声もあどけなく、10代の世の中に対する好奇心であふれている感じがとても素敵ですね。美知香役が彼女で本当によかったと思います。
―現場の雰囲気はいかがですか?
撮りたいものが見える、みんなの目指している方向が一致している現場ですね。始まっているところに入っていったのですが、特に戸惑いとかもなく、むしろすごく良い追い風に乗って船が進んでいるような気がします。
―視聴者の方にメッセージをお願いいたします。
私が演じる古屋暁子は、毒に侵されて闇に落ちていくという瞬間があるのですが、これはもしかしたら明日、誰がなってもおかしくないのかもしれないと思いながら演じています。この作品は、人間はみんな毒を持っていて、でもその解毒剤も人間が持っていると感じることが出来ると思います。「宮部さんの作品の世界は、必ず光が差し込む」ということが原作のあとがきに書かれていましたが、私もそう思いました。これが本当に闇だけだったら夢がありませんが、一筋の光が見えてあっちへ行ってみたいと思わせることが、生きるということではないでしょうか? 私はこの作品で勇気をもらっています。ドラマをご覧の1人でも多くの方にも、勇気をもらえる月曜日を味わってほしいなと思います。