グルジア日記 (2001年12月10日〜16日)


悪事を行う時はさほど頭を使わなくてもいいが、人に親切にして正しい行いをするためには十分に考え、分析をした上で決断を下さなくてはならない。なぜなら、時として自分が正しいと信じている事が実は間違っていて、人に害を与える可能性するある場合があるからだ。これは私達の仕事についても言える。地雷を破壊して土地を取り戻すことで人の命を救うことができるが、HALOが長年の経験に基づいて設置した規定に従わなければ、ケガをしてしまう場合もある。

つまり、規則に従い地雷の破壊に専念していれば他人のために正しい行いをすることができるが、規則に従わなければ自分や他人にケガをさせてしまう怖れがあるのだ。

月曜の作業前に私は、このことをチームに説明しようとした。私としては常にこのようなことをみんなで話し合い、地雷原で作業をする時に気を引き締めて安全規定を守らたいと思っている。本当は全員の前でHALO安全規定の要点を読み上げたいのだが、実はどの除去員もここに来た初日からそれを完全に理解していた。それでも私は、時折思い出させるようにしている。

他人に親切な人と言えば、地雷除去の資金をHALOに提供しているドナーたちこそがそうだ。

一年前に、HALOのスタッフが地雷原の近くに住む老人の裏庭の地雷を除去したが、私は最近、この老人に次のような質問をされた。「ここのプログラム・マネージャーは誰か?」「誰がスタッフのユニフォームや設備を提供し、地雷除去の費用を出しているのか?」私は、ここにあるものは全て日本人のドナーのおかげだと答えた。老人は日本のことを知らないだろうと思ったが、驚いたことに彼は本で読んだ日本の文化や伝統について話してくれた。

彼は子供の頃から日本に興味を持ち、いつか訪れてみたいと夢見ていたそうだ。老人は、自分の代わりに日本のドナーに感謝し、よろしく伝えてくれと私に頼んだ。また、日本のドナーがアブカジアに来ることがあれば、裏庭でとれたマンダリン(みかん)をご馳走したいと伝えてくれ、とも言っていた。


アリ・マクマチャノフ
クラッシャー・フィールド・オフィサー






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