グルジア日記 (2001年11月11日)


今週は奇妙な週だった。振り出しは好調で、この地方の人々を何週間も悩ませたトラブルも終わり、地雷除去員が全員現場に戻ることができた。最近の攻撃はチェチェンの将軍ガラエフの指揮によるものだったが、ガラエフは今グルジアの病院に入院していると全ての新聞が報じている。でもスクミでは現状に関する情報が入りにくい。ありがたいことに病院に運ばれてくる患者は少ないので、良くあることだが実際の戦闘よりも噂が先行していると思う。

月曜と火曜の作業は順調に進み、危険物の含まれた土を大量に粉砕することができた。不思議なことに、何もかも上手く行く日があり、いつもなら遅れの原因となる出来事もちょうど良いタイミングで起きたりする。例えばベルト・コンベアに疑わしい装置がのっていた場合は作業を中断してチェックし、爆発物だった場合は爆破しなければならない。月曜と火曜はちょうどこれが休憩前に起きたので、私が調べている間に他の者は休むことができて良かった。しかし作業を始めた途端に中断しなければならない日もある。こういう時は腹が立つが、安全のためには仕方がない。

水曜は作業開始時に騒ぎがあった。私達は夜に現場を去る時、クラッシャーに警備を2人つけて行くことになっている。クラッシャー自体は重過ぎるので盗めないが、地元の人々はとても貧しいので警備をつけずに帰ると、中の電球やケーブルを盗まれて市場で売られる可能性があるのだ。だから何も盗まれないように毎晩警備員がクラッシャーの側にテントを張って寝るのだ。朝になって私達が来ると警備員がポットにお湯を沸かせて待っていて、通常のチェックやクラッシャーのウォーミング・アップをしている間、お茶を入れてくれる。しかし水曜に来てみると、警備員たちはいつもの場所でなく道路に立って私達を待っていた。まず私は非常に腹を立てた。クラッシャーが置き去りにていたからだ。これは非常にマズいことった。クラッシャーがなければ仕事ができないし、仕事ができなければ家族が苦しむことになる。だから私は仕事をサボった警備員に向かって思いきり怒鳴りつけた。しかし警備員たちはこう答えた。「怒鳴るだけ怒鳴るがいいさ、アリ。でもクラッシャーの中にいる熊の方がお前より声が大きいぞ。」それを聞いた私は笑うしかなかった。

アブカジアには熊がたくさんいる。この熊は冬の到来を前に町に食料を探しに降りてきたのだ。警備員たちはテントの外で熊が動き回る音を聞き、一目散に逃げた。幸い何も取られていなかく、熊は去っていったようだった。熊が戻ってきた時に備えて、今後警備員はショットガンを携帯して大きな焚火を焚くことにしている。私は熊の話が広まったので良かったと思っている。もう誰もクラッシャーから何か盗もうと思わないだろうからだ。警備員は一晩怖い思いをしたが、今後は楽になるだろう。これからは、仕事に来たらいつでもクラッシャーが使える状態になっているはずだ。


アリ・マクマチャノフ
クラッシャー・フィールド・オフィサー






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