手作りフリップ（2022年10月2日放送）
独裁者ムッソリーニを肯定？イタリアで初の女性首相が誕生
9月25日に行われたイタリアの総選挙で、右派連合が過半数を獲得。かつての独裁者ムッソリーニを肯定したことがある次期首相が支持を集めた背景とは。EU諸国では右傾化が加速し、対ロシアでの結束の弱まりも懸念されています。
■次期女性首相メロー二氏、政治活動の原点はムッソリーニの流れをくむ極右政党
イタリアで初の女性首相に就く見通しのジョルジャ・メローニ氏、45歳。絶叫するような演説の強さで支持を集めたとされています。
メローニ次期首相
「この国に自由・誇りを取り戻すために。我々にふさわしい偉大さを取り戻すために。イタリア万歳、イタリアの同胞 万歳、中道右派万歳、ありがとう」
メロー二氏とは、どんな人物なんでしょうか。2006年、29歳で下院議員に初当選すると、2年後には「若年対策担当相」に抜擢されました。 15歳の時、ネオファシスト政党「イタリア社会運動」に参加しましたが、実はこの組織こそ、ムッソリーニの流れをくむ極右政党だったのです。
■独裁者ムッソリーニとは
ムッソリーニとは第二次世界大戦中、ドイツのヒトラーと並ぶ全体主義的・権威主義的な体制=ファシズムの指導者でした。
1940年、日本とドイツとの間で軍事同盟を締結、アメリカなどと戦ったのです。その後、ムッソリーニは解任・処刑されましたが、イタリアでは言論統制や反体制派への弾圧が行われていて、戦後はムッソリーニを肯定することはタブーとされてきました。
■“ファシズムとの決別宣言”もネオファシスト政党と同じロゴ
ところが、ムッソリーニに共鳴していたというメローニ氏は19歳の頃「よい政治家だったと思う。彼がしたことは全てイタリアのためだった」と語ったことがあるといいます。
現在はファシズムとは決別したと説明していますが、メローニ氏が今年8月、自身のSNSに投稿した「ロゴ」が一部で物議を醸しています。イタリア国旗と同じ緑、白、赤の3色の炎が燃えさかるロゴ。実はかつてメローニ氏が身を投じたネオファシスト政党と同じデザインだったのです。
■物価高騰の対策で支持拡大か
では、そんなメローニ氏をなぜ国民は支持したのでしょうか。背景の一つが、ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰です。イタリアではガス代や電気代が1年前に比べ、3割から4割も上がる見込みです。
メローニ氏は公約で不法移民の排斥を掲げる一方で、保育所の無償化や所得税の減税など手厚い支援を訴え、支持を得たとみられます。
■EUの足並みを乱しかねない”2人の存在”
一方、EU諸国からは“ある懸念”が指摘されています。連立を組む2つの政党のそれぞれトップであるサルビーニ元副首相と、ベルルスコーニ元首相は、ともにロシアのプーチン大統領を称賛してきた人物です。新政権の発足で、ロシアへの制裁の足並みが乱される懸念が広がっています。
■右傾化が加速するEU、結束に影響か?
こうした右派・極右政党の台頭はイタリアだけに留まりません。ポーランドやハンガリーでは右派が政権を握り、フランスでは、6月の総選挙でルペン氏率いる極右政党「国民連合」が躍進。またスウェーデンでは9月、極右政党を含む勢力が総選挙で過半数を獲得。アンデション首相は辞意表明に追い込まれました。
すでにEUを離脱したイギリスのこともあり、今後EU諸国の結束はどうなっていくのでしょうか。