手作りフリップ|サンデーモーニング|TBSテレビ

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手作りフリップ(2022年5月22日放送)

知床観光船事故 船内捜索の“カギ”握る飽和潜水とは? 地上13倍の圧力「水深120m」で捜索へ

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北海道知床半島沖で26人が乗った観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故。民間の潜水士による船内捜索が行われましたが、水深120メートルという過酷な環境の中で行われた「飽和潜水」とはどういったものなのでしょうか?

■船体沈む水深120メートル 地上の13倍の圧力で“窒素酔い”リスクも

5月19日から行われた、観光船の船内捜索。船体は水深およそ120メートルの海底にありますが、そこに人が近づくのは容易ではありません。

スキューバダイビングなどのダイバーでも潜れるのが、およそ40メートルまでと言われています。なぜ、このあたりが限界なのでしょうか。水深が深くなればなるほど問題となるのが「水圧」です。地上が1気圧なのに対し、水深120メートルは13気圧。実に13倍の圧力がかかります。

水難学会の斎藤秀俊会長は「水深が深くなればなるほど“窒素酔い”のリスクが、より高まる」と指摘しています。窒素酔いとは、潜水中に呼吸で取り込まれる窒素が血液などに溶けやすくなり、判断力の低下やめまいなどを引き起こすことです。

そして、最も危険なのが海底での作業を終えた後の「減圧症」だといいます。浮上の際、圧力が下がることによって、体に取り込まれた窒素が泡となって出てきます。これが血管を詰まらせることで、手足のしびれや呼吸困難などを引き起こすといいます。

■過酷な環境での捜索可能に 潜水技術「飽和潜水」とは

水深120メートルの過酷な環境でも作業を可能にするのが「飽和潜水」です。まず捜索にあたる3人の潜水士は、気圧を変えられる「加圧室」で2時間ほど過ごします。この時、潜水士は「減圧症」を防ぐため、ヘリウムを含むガスを吸うことで体に含まれる窒素の量を減らします。斎藤会長によると、ヘリウムを吸うことで声が高音となるため、会話はままならならないそうです。

高い気圧に体を慣らした潜水士は「加圧室」と同じ気圧に保たれた「水中エレベーター」に移動。40分かけて船体が沈む海底を目指します。

水深およそ100メートル地点に到達すると、潜水士は、水中エレベーターから出て、船内の捜索にあたりますが、赤色で示すケーブルとつながっています。実はこのケーブルはヘリウムや酸素を送るだけではなく、ウエットスーツの中に温水を送り込むためのもの。こうすることで、深海の低い水温で体温を奪われるのを防いでいるのです。

作業が終わった後ですが、すぐに外に出られるわけではありません。地上と同じ気圧に体を戻す必要があり、5日間程度は加圧室で過ごさなければなりません。そのため室内にはトイレやシャワー、ベッドなどが備え付けられています。

■難航する捜索… 船体引き揚げの見通しは

5月20日までにおよそ6時間かけて行われた船内の捜索では、カメラやバッグ、傘などを回収しています。しかし、行方不明者12人の発見には至りませんでした。今後は行方不明者の捜索範囲を広げる必要があるとの指摘もあり、難しい捜索が続くことになりそうです。

一方、沈没した船体ですが、この作業船のクレーンを使って上に引き揚げられます。天候悪化の影響で作業に遅れが出る見込みで、作業船への引き揚げは早くても5月24日になる見通しです。

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