手作りフリップ(2021年6月13日放送)
「新薬が…アルツハイマー病とは」

「アルツハイマー病」の治療薬について解説する前に押さえておきたいポイントがあります。
そもそも「認知症による もの忘れ」と「加齢による もの忘れ」どんな違いがあるのかご存じですか。
たとえば、朝何を食べたのか、その時のメニューを詳しく思い出せない、なんてことはありませんか、これは・・・「加齢によるもの忘れ」の範囲内です。

では・・・朝食を食べたこと自体を忘れる、これは・・・認知症の可能性があります。
こちらは「経験の一部を忘れる」、一方こちらは「経験全体を忘れる」、このような差が、認知症かどうかを見極めるサインになるかもしれません。
その認知症ですが、日本の65歳以上にはおよそ600万人いるとされていて、数ある認知症の中で、7割近くと最も多い割合を占めるのが「アルツハイマー病」です。 症状として、昔のことはよく覚えているものの、最近のことは忘れてしまう。 また、軽度のもの忘れから徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。

ちなみに「アルツハイマー」という名称は、100年以上前、はじめて症例の報告をした ドイツの精神医学者「アロイス・アルツハイマー博士」に由来しています。
では、アルツハイマー病にかかると脳はどうなってしまうのでしょうか、脳の中をのぞいてみましょう。
脳内に有毒なたんぱく質「アミロイドベータ」がたまると、神経細胞が破壊され脳の萎縮が起こります。
そこで、この有毒なたんぱく質に対し直接働きかけ・・・取り除く効果があると注目されているのが、アメリカのFDAが承認した治療薬「アデュカヌマブ」です。
認知症予備軍と軽度のアルツハイマー病の人を対象にした臨床試験で、「アミロイドベータ」が最大で7割以上(59%~71%)減少。アルツハイマー病の進行を長期間にわたり抑える「世界で初めての治療薬」として期待されているのです。

ただ一方で、治療薬には副作用が確認されています。
日本の製薬大手「エーザイ」と共に開発したアメリカの医薬品メーカー「バイオジェン」によると、治療薬を投与された、およそ1100人の中から、脳内に一時的なむくみ(35%)頭痛(13%)意識障害(5%)めまい(2%)などが見られたといいますが、重篤な症状の発生は患者全体の0.3%、経過観察中に88%の患者の症状は消失したというのです。
また「アデュカヌマブ」には、こんな課題もあります。
実は、専門家の間で、治療薬の効果に懐疑的な意見もあるため、FDAは承認後も追加の臨床試験をするよう義務づけています。
もし期待通りの効果が認められなかった場合、承認の取り消しもあり得るというのです。

それでも、日本認知症学会・理事長を務める岩坪東京大学大学院 教授は、「副作用も専門医が管理できると考えられていて、今後の治療の発展につながる大きな第一歩」と、新たな治療薬に期待を寄せています。
一方、日本では去年12月、厚生労働省に承認申請されました。
患者やその家族にとって“救いの一手”となる治療薬。
年内にも出される可能性があるという審査の結果が注目されます。
