手作りフリップ(2021年4月18日放送)
「原発処理水を海洋放出へ」
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政府が海に流す方針の処理水はどんなものでしょうか。
今タンクに溜められているのは、溶けた核燃料「デブリ」を冷やす水に地下水などが混じった汚染水をALPS(アルプス=多核種除去設備)に通し、放射性物質を一定程度取り除いたものです。ただストロンチウムなど放射性物質が取り切れておらず、タンクの水の7割がそのままでは海に放出できない水準です。

そこで東電はタンクの水を改めてALPSで処理し、ほぼ全ての放射性物質を取り除くとしています。それでも残るのがトリチウムです。

トリチウムは、三重水素とも呼ばれている放射性物質で、水素と同じ性質を持っていています。水分子の水素の一つ、ないし2つが、トリチウムに置き換わったものが、トリチウム水で、水から分離するのは困難です。トリチウムは雨水や水道水にも存在していて、半減期はおよそ12年ですが、放射線はごく弱いとされます。

国の放出基準は1Lあたり6万ベクレルで、政府・東電はこのトリチウム水を、 さらに海水で薄めて、基準濃度の40分の一以下にしたものを「ALPS処理水」として、放出する方針です。経産省は「健康影響はないと考えられている」としています。
トリチウムは、これまで少なくとも世界13の国と地域の原子力施設で液体や気体の形で放出されています。例えば、液体ではフランスのラ・アーグ再処理施設は 年間1京3700兆ベクレル、放出しています。

また、現在稼働している国内の原発からもトリチウム水は放出されています。 大飯原発では56兆ベクレル、川内原発では55兆ベクレル放出しています。
政府・東電は事故前の福島第一原発の放出上限だった年間22兆ベクレルを下回る量を2023年にも流す方針です。少量から始めて、環境への影響をモニタリングした上で、IAEAにもチェックしてもらうとしています。

しかし地元の漁業関係者からは風評被害を懸念する声があがっています。
その背景にあるのは、「政府や東電への不信感」です。
例えば、2015年、東京電力が、福島県漁連に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と表明していたにもかかわらず、放出の方針が決まるなど、議論の進め方にも不信感が持たれています。

最近でも福島第一原発の地震計や、新潟県・柏崎刈羽原発の外部からの侵入検知設備が故障したまま放置されるなど、東電のずさんな管理態勢が明らかになったばかり。
タンクの水を流し終えるまで30年~40年かかる見通しですが、地元住民や漁業関係者などの十分な理解と納得が得られる対応が求められます。
