手作りフリップ（2021年1月24日放送）
「バイデン大統領の就任式は」
平和的に権力が移行することを内外に示す、アメリカにとって重要な就任式。舞台となったのは連邦議会議事堂西側正面の特設会場で、今月6日にはトランプ支持者がまさにこの場所の警備を突破し、占拠した場所でした。
トランプ大統領は欠席しましたが、退任する大統領が参列しないのは、南北戦争のしこりが残る1869年のアンドリュー・ジョンソン大統領以来152年ぶりです。コロナ禍で参加者は2000人に絞られ、毎回数十万人が埋め尽くす緑地帯は、星条旗や州の旗など20万本が立てられました。
バイデン氏はおよそ130年前から一族に伝わる聖書に手を置いて宣誓しました。聖書を使うのは慣例ですが、トランプ大統領は、リンカーン大統領が宣誓に使った聖書と子どものころに母親が贈った聖書の2冊を使いました。
また連邦議会議事堂で宣誓するのも慣例ですが、過去にはホワイトハウスで行われたこともあったほか、ケネディ大統領暗殺で副大統領から昇格したリンドン・ジョンソン氏は、ダラス空港から棺を乗せ飛び立つ直前の、大統領専用機の中で大急ぎで宣誓を行いました。こちらにジャクリーン・ケネディ大統領夫人の姿も写っています。
今回の就任式では、国民の結束を訴えるバイデン政権のメッセージが込められていました。例えば、国歌を歌ったレディー・ガガさんは、バイセクシュアルを公言しているほか、歌手のジェニファー・ロペスさんはヒスパニック系、22歳の詩人アマンダ・ゴーマンさんは黒人と、多様性を重視する人選でした。
ゴーマンさんは「私たちは、目的を持った団結をしようと努めている、人間が持つあらゆる文化、肌の色、個性、条件に力を尽くす国を築くために」と詩をよみ、トランプ政権との違いを際立たせたかたちです。
ハリス副大統領は、アメリカ民主党のイメージカラーである青と、共和党の赤を合わせた紫の出で立ちで登場。紫は、100年以上前、女性参政権を求める運動でもよく着られた色でした。
大統領就任初日に、パリ協定復帰や、WHO脱退撤回の他にも、メキシコ国境の壁建設中止、子どものころにアメリカにやってきた不法移民を保護する措置、職場での性的マイノリティへの差別を禁止するなど17本の大統領令と関連文書に署名し、「脱トランプ」に大きく舵を切ったアメリカを印象付けました。
トランプ大統領によって分断が深まったアメリカの急速な方向転換となり、バイデン政権にとって波乱の船出となりそうです。