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撮影レポート 高田聖子 篇

2018.01.28

 2017年11月末に幕を開け、2018年2月末まで絶賛上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season月。このあと“Season極”の上演を控えているとはいうものの、いわゆる本来のストーリー展開と人間関係による『髑髏城〜』という意味では“花・鳥・風・月”の締めくくりとなるこの“月髑髏”で、<極楽太夫>はダブルチームどちらも劇団の看板女優が務めることとなりました。まず“上弦の月”チームで<極楽太夫>を演じるのは、高田聖子さんです。1990年初演時には<沙霧>、その後の1997年版、2004年版『アオドクロ』では<極楽太夫>、さらに2011年版の通称『ワカドクロ』ではなんと<贋鉄斎>役をも経験してきた高田さん。つまり<極楽太夫>に扮するのは13年ぶり、これが3回目となります。

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 ゴージャスな衣裳、ヘアメイクでスタジオに登場した高田さんに周囲のスタッフたちもすっかりハイテンション。「わあ、クールで綺麗〜」「美魔女!」「生誕50周年!」などなど大盛り上がりで、少し照れくさそうな高田さんを迎えます。まずは椅子に座った状態でのバストショットから、撮影開始。カメラマンの野波浩さんの「顎を上げて、ゆっくり下ろして」「目線はカメラキープで」「少し微笑む程度、口元は優しげで」というリクエストに瞬時に反応する高田さん。その反応の良さは毎度のことで、すんなりと狙い通りの写真が撮れていくため誰よりもサクサクといいペースで撮影が進んでいきます。

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 モニター上では、事前に撮ってあった“下弦の月”チームの<極楽太夫>羽野晶紀さんの写真と高田さんのショットが並ぶことになり、古参のスタッフ陣は「こうしてふたりのヴィジュアル写真が並ぶのは2000年以来か……」と、しみじみ。今回は違うチームに分かれての出演になるとはいえ、やはり久しぶりの劇団看板女優の揃い踏みにはワクワク感が抑えられません。

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 今回の衣裳を手がけている生澤美子さんによると、この<極楽太夫>の衣裳で蝶のモチーフをデザインに使ったのは、実は織田信長が使用していた七つの家紋の中に“揚羽蝶”の紋があったからとのこと。そして安土桃山時代に伝わった外来文化の影響の匂いを感じさせたいとの狙いから、ヘッド中央には中国陶器風の飾りを鎮座させたのだそう(ちなみにこれ、実物の陶器ではなく樹脂でできているものなのでそれほど重くはないのだそうです)。“上弦”と“下弦”で、色合いも帯の形などのデザインも少しずつ絶妙に違っているので、ぜひ観比べてみてください。また、信長の七つの家紋に関したモチーフは、“揚羽蝶”の他にも“隠れ○○”のように主張しないデザインでこっそり入っているのだとか。衣裳をじっくり近くで見られる機会がもしあった時には、探してみたいものです。

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 全身写真を撮るため、高さが30cm近くある“花魁下駄”の上にのる高田さん、スタッフたちのサポートを受けつつ「ヨイショー!」との掛け声と共に一気に高身長に。「(髪飾りの)長いタッセルのせいか、なんだかピラミッドパワーみたいなものを感じる」、「UFOとか何か、呼べそうな気がする」「妙にありがたい感じもあるよね」など、その存在感からコメントも面白い方向のものが増え出し、高田さん本人も「そうか、八頭身だとこういうバランスか」「なんだかランドマークっぽくない?」と苦笑い。挙句の果てに「天魔王を倒した後に現れる最後の敵みたい」との意見まで出る始末で、高田さんも「ドーン!まだラスボスがおったんや!って?」と爆笑。

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そうやってひとしきり笑っていても、撮影が再開するとすぐにキリッと表情を変え、引き続きクールで美しいショットの数々が撮られていきます。なにしろ高い場所にいるので、心配したアートディレクターの河野真一さんが「危ないから、倒れそうになったらその前に言って」とフォローすると「下駄が自分の足より広いから、案外安定感はあるんですよ。じっとしている分には大丈夫!」と、高田さん。とはいえ、身体の向きを反対側にする時は、自力では無理なので河野さんが「みなさーん、お手伝いくださーい」とスタッフに声がけ。数人がかりで高田さんの手を取り、衣裳の裾や袖を持ち、「せーの!」と息を合わせて左方向へと少しずつ動かしていきます。

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 ある意味、そんな“大掛かりな”撮影をなんとか無事に済ませた高田さんに、撮影終了直後に今回の企画への想いを語っていただきました。


——今回の撮影も、なかなか大変でしたね。おつかれさまでした!
椅子に座る時も、もうお尻が半分しかのらないような状態でしたからね。「落ちる—」って思いながら、撮ってもらっていました(笑)。大変なのはいつものことやから覚悟していたんですけど。でも、あの頭、見た目よりはそれほど重くなかったです。

——見ている分にはかなり重そうに見えましたけど、そうでもない?
重いことは重いんですけど。重い場所がいつもと違って。

——バランスみたいなことですか。
そう。前が重いんです。今までは後頭部のほうが重いことが多かったから、後ろに持っていかれる感じがあったんだけど、今回は前が重いから、下を向くとズッと首にくる感じ。

——陶器がのっているから?
いや、あれはペットボトルみたいな素材でできているから、ほとんど関係なくて。カツラの本体の重さだけだと思います。

——そうなんですね。それにしても、今回の衣裳もすごく素敵でした。
ねえ。私もビックリしました。もう、“花・鳥・風・月”でシーズンの最後だから、そろそろやりようもなくなって、残りカスみたいなことになるんじゃないかなって思っていたのに(笑)。「じゃあ、豪華にしよう!」ってことになったのかー、そうかーと思いました。

——蝶々まで飛んでいましたね。
まあね。年増の<極楽太夫>だから、豪華になっているのかな。

——羽野さんが今回17年ぶりに劇団復帰すると聞いた時は、どう思われましたか。
いやあ、うれしいですよ。でも、本音を言うと一緒の舞台に立ちたかったな。ダブルチームだから、同じ“Season月”なのに結局、本番は一緒にはできないので。それがね、ちょっと残念です。

——稽古は一緒にできても。
そうなんですよね。本番でも、一緒にアホなことをしたかったです。でもまあ、もうちょっと、お子さんが大きくなったら、また機会もあるでしょうから。だから今回は肩慣らしということでね。って、肩慣らしにしては過酷な公演になるかもわからないけど。公演期間はとても長いですから。

——高田さん自身も、久しぶりの<極楽太夫>ですね。
そうです。もう、私がこの役をやることはないと思っていましたけど。

——2011年版で<贋鉄斎>までやってしまったので。
そうですよ。だからもう、『髑髏城〜』で私がやる役はないんじゃないかと思ってた(笑)。

——初演で<沙霧>をやり、再演とアオドクロで<極楽太夫>をやり。
あとは、村木(よし子)さんと一緒に、無界屋で年増の遣り手をやるしか道はないかもなあって言っていたんですけどね。

——では今回<極楽太夫>を、という話を聞いた時にはどう思われたんですか?
いや、それはきっと羽野を出したいから、ついでに私もそれでいいんじゃないかってことなんだろうと思って(笑)。じゃ、いいですよと。そうだ、実は<礒平>枠(“Season月”では<仁平>と<いん平>)も狙っていたんですけどね。

——次、やるなら、と?
ええ。そうなると“お母さん”が迎えに来ちゃったという流れになるのかもしれないけど。

——そうか、それはそれでアリかもしれません(笑)。ところで今回の稽古、本番に向けての楽しみというと、どういうことになりますか。
そうですねえ、なんだろう。まずは、ダブルチームで同時に稽古をやっていくので、相手方というか別チームの稽古を見ることで、もしかしたら客観視ができるのかなとは思います。同じ舞台装置で、脚本も一緒なわけですし。

——演出のほうもベースは同じとはいえ、稽古しながら徐々に変わっていきそうですね。
それも参考になると思いますね。あ、こう見えてるのかとか、わかりやすいだろうし。

——実際に、この新しい劇場の回る観客席をお客さんとして体験してみた時の感想はいかがでしたか。
「まわってるなあ、私たち」と思いました(笑)。エンドロールでぐるっと一周回っていく時は、それぞれの場面で「なんだか、菊人形みたい」とも思いましたね。それは特に、逆木(圭一郎)さんの姿を見て、ですけど(笑)。逆木さんがポーズをとって止まってるのを見たらもう、私、みんなも菊人形にしか見えなくなっちゃって。エンディングであそこまで笑ってるの、私だけだっただろうからおかしいと思われてるだろうなと思いながらも、ついつい面白いよー!って笑っちゃいました。

——ではお客様へ、メッセージをいただけますか。
もう“花・鳥・風”を観て、もしかしたら飽きてきた方もいらっしゃるかと思いますが。せっかく“風”までご覧になったなら、“月”もなんとか観ていただきたい。まあ、ダブルチームですから、ふたつのうちのどっちかでもいいですよ。好きなタイプの男の人が多いほうでいいので(笑)。

——そして観てみて、気に入ったらもうひとつのほうも。
もしくは気に入らなかった場合に、もうひとつのほうを観ていただいてもいいかも。どちらかで、補てんできたりするものかもしれませんからね。って、なんだかちょっとダメな感じのコメントばかりになっているかもしれませんが、なんせ私の場合はこうやってあえて泥を塗ることも仕事のひとつなんでね。それに私、泥まみれのイケメンのほうが好みですし! 何かに傷ついていたりするほうが、さらに何割かイケメン度も増すものじゃないですか(笑)。