ブログ

撮影レポート 廣瀬智紀 篇

2017.12.19

まだ衣裳を仮につけただけのテスト撮影時にも関わらず「メイク前なのに、既にカッコイイ〜」と大好評のヴィジュアルだったのは、“下弦の月”で<無界屋蘭兵衛>を演じる廣瀬智紀さんです。「品がある〜」「クールで美しい〜」とスタッフたちは口々に絶賛。

picture

アートディレクターの河野真一さんに「(事前に撮影を済ませていた“上弦の月”の蘭兵衛役)三浦(翔平)くんと同じようなハイライトを」と注文された、メイクの内田百合香さん。早速、筆を出し、廣瀬さんの眉間に白いラインをスッとひきます。このワンポイントが入ることでまた顔の印象が変わり、凛と引き締まった感じもします。

picture

今回、生澤美子さんが手がけている衣裳は、三浦さんが紫のグラデーションだったのに対して、廣瀬さんは青のグラデーション。デザインは基本的には同じなのですが、裾や背中に広がる女性の絵はなにせ手描きで仕上げているため、全体の色合いも含めて少しずつ違う部分がある模様。テスト撮影で入った修正を、撮影直前までスタジオで描き足したりもしていたという、出来立てホヤホヤの力の入った作品でもあります。

picture

バストショットの撮影が始まると、カメラマンの野波浩さんから「口元、ちょっとだけ口角上げて」「目線はクールに」「涼しい顔で」などと次々にオーダーが入り、見た目はクールで妖艶なのにもかかわらず、「ハイ!」と元気よく返事をする廣瀬さん。「頭を、気持ち傾けてみて」と言われて少し右に傾けると、ほんのちょっと角度が変わっただけだというのに雰囲気がすうっと一瞬で変化するのが不思議です。

picture

河野さんから「今度はもうちょっと強そうに」というリクエストが入り、妖艶モードからキリッと戦闘モードへ。小道具として使われているのは、蘭兵衛ならではの刀が仕込んである“黄泉の笛”。アクション指導で撮影に参加している横山一敏さんからこの笛の持ち方、握り方をアドバイスされ、あくまでも美しい姿勢で構える廣瀬さん。さらに「周りにいる敵を意識して」「背後まで敏感に意識している仕草で」「身体をもっと前に傾けて」など、次々に繰り出される注文の数々にも丁寧に反応していきます。

picture

美しいポーズを撮影するためには、不自然に身体を傾けたり、ねじったり、腰を落としたり、片腕を上げたまましばらくじっとしていなければならなかったりするため、身体的にはむしろアクションよりもハードだったりもします。河野さんが「このまま、まだ続けられる?」と気遣うと、「はい、大丈夫です!」と笑顔の廣瀬さん。そう言いつつもセットチェンジの一瞬の隙には、アキレス腱を伸ばしたり、ぐーんと背筋を伸ばしたり。

picture

動きのあるショットの撮影に入ると、引き続き横山さんが構えた笛の角度を微調整したり、笛を握る手の仕草を修正し、さらには廣瀬さんの目の前でやってみせてくれたりもしつつ、迫力のあるポーズの数々が撮られていきます。さらに風を入れ、髪をなびかせながらのアクションでは、ヘアメイクの宮内宏明さんのブロワーが絶妙な風を生み出し、モニターチェックしているスタッフからもまた「牛若丸みたいに身軽そう」「戦う目になってる」「冷たい表情が、またいいね」などなど満足げなコメントが多数、漏れ聞こえてきます。

picture

撮影の終盤は、後ろ姿で笛を吹いている姿からの流れで、笛を構えて見えない敵と戦うという一連の動きをおさえていきます。野波さんから「左に敵がいる気配を感じて」と言われるとぐっと力を込めて左方向を睨みつけ、河野さんから「さっきまではクールだったけどここからは、もう俺は怒ったぜ!って表情で」と言われれば一転、激しく怒った表情を作ってみせる廣瀬さん。「おお〜、この顔もかっこええなあ!」と、ここでもかなりのハイスピードでシャッターが切られていきます。

廣瀬さんには撮影終了直後、衣裳もまだつけたままのホットな状態で、撮影の感想や作品への想いを語っていただきました。

——撮影中、なんだかすごく難しいポーズでストップさせられたりしていて、本当に大変そうでしたね。おつかれさまでした!
ハハハ、でも実は噂をいろいろ聞いていて、もっとキツイんじゃないかなって内心思っていたところもあったので。

——意外に、そうでもなかった?
いや、それなりにキツイ瞬間もありましたけど、楽しくやらせていただきました。このヴィジュアル撮影から、作品の世界に入っていくんだろうなという想いがすごく強くあったので。事前に、今日の撮影に合わせて身体のコンディションを整え、お肌の調子もケアして臨んだ感じです。

——前日はお水を控えたりとかして?
パックをしてみたりもして(笑)。

——さすがです!
いやいや、ありがたいことにファンの方からそういうものをいただいたりもするので、せっかくなので使ってみました(笑)。そうしたらメイクの方に「お肌が綺麗なのですごくメイクがしやすかった」と言っていただけたので、やった甲斐があったなあと思った次第です。

——実際に撮影に臨んでみて、ご感想は。
いや、新感線さんの撮影はヴィジュアル撮影から結構大変だという話をあちこちから聞いていたので、ドキドキしながらも、ある程度の覚悟はできていたので最後まで楽しくやらせていただけました。それに、こういう和服ってすごく好きなんですけど、あまり和服の衣裳を着るような作品に巡り合うことが今まで少なかったので、そういう意味でもすごく楽しみだったんです。

——<無界屋蘭兵衛>という役を演じることに関しては、いかがでしたか。
もう本当に、名だたる先輩の方々がやっていらっしゃった役なので。本当にやりがいがある、という想いに尽きます。自分もこれまでにいろいろな作品をやらせていただいてきましたが、そのひとつひとつを一生懸命やっていったことで先につながったようにも思うので、今回はそういう風にがんばってきた最大のご褒美なのかもしれないな、なんて思ったりもしています。

——かなり、やりがいのあるご褒美ですね。
はい。人生を捧げるくらいじゃないとダメなくらいの(笑)。本当に僕なりの、無界屋蘭兵衛さんを本番までに仕上げたいです。そのためにも身体づくりを始め、殺陣のお稽古とか、稽古前にも準備をいろいろやっておきました。

——これまで、殺陣とかアクションのご経験は。
舞台で刀を振るのは、これが2作目なんです。なので、そこはちょっと自分の中にまだ不安があるんです。

——新感線の殺陣って、他ともちょっと違うと言われていますしね。
そうですね。だけど僕、これまでも、たとえば他の方々が体力的にこれはツライと言っている場合でも、楽しもうと思う気持ちで臨んで、なんとかなってきていたので。どんなにキツくても、やっぱりカーテンコールでお客様から拍手をいただけると忘れられるんです。今回もまたそうやって一回一回リセットできるように、その下地として体力づくりをきちんとしておこうと思っています。

——そして今回の“Season月”に関しては他のシーズンとは違って、ダブルチームというシステムとなります。
今回同じ“下弦の月”チームの鈴木拡樹くんは、過去の作品で何度か共演させていただいていますから、また一緒に作っていけるのがうれしいです。

——じゃあ、<天魔王>役とはいえ、鈴木さんがいらっしゃるのは心強いですね。
ハハハ、そうですね。でもいっぱいからめるわけですから、よりいっそう、いろいろお話もしやすくなるかもなと思っています。

——“上弦の月”で、同じ<無界屋蘭兵衛>をやる三浦翔平さんのことは。
三浦さんに関しては本当にテレビでしか見たことのない方なので、そんな方と肩を並べてやらせていただけるというのはすごく光栄です。きっと、三浦さんならではの無界屋蘭兵衛が出来上がると思うので、その中にある自分が欲しいと思うパーツは盗ませていただきたいですし、逆に僕もそういう刺激を与えられるような無界屋蘭兵衛ができたら、ダブルチームでやる意味が出てくるのかなと思ったりもしています。プレッシャーに負けないよう、がんばります!