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撮影レポート 松雪泰子 篇

2017.05.30

『髑髏城の七人』Season鳥で極楽太夫を演じる松雪泰子さんの場合は、メイクをする前に衣裳だけを合わせてカメラテストをしている段階で既に「笑っちゃうくらいに美しい…!」と大好評。頭には鳥居の形をデザインした髪飾りが乗り、「なんだかありがたい感じ」「神々しい、拝みたい…」との声まで出ています。撮影立ち会っているいのうえひでのりさんが「おっ、綺麗じゃないっすか!」と話しかけると、松雪さんも「ちょっと、七福神のひとりみたいですよね」とニッコリ。

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アートディレクター・河野真一さんから今回のヴィジュアルイメージの説明を受けると、撮影がスタート。カメラマンの野波浩さんからは早速「身体はもっと右に向けて、顔は正面、左肩を少し落として」「表情はなるべく妖艶に、色っぽく」「ゆっくりと目線はカメラに、もう少しアゴを上げて」など細々とリクエストが飛び、その通りに身体をひねったり、姿勢や表情を変えていく松雪さん。

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“Season鳥”バージョンの極楽太夫のために用意された小道具のひとつが、琵琶。舞台用の小道具とはいえ、本物の楽器です。まずはアップの撮影用に、ぎりぎりまで顔に近づけることに。河野さんは野波さんの真後ろに立ち、モニターも確認しつつ「もうちょっと下」「そう、そこ!」と小声で琵琶のベストポジションをガイドしていきます。さらに河野さんから「手をオホホ…的な位置にもっていって」と言われ、微笑みながら左手を口元に近くに添える松雪さん。「いいねえ!」と野波さんが唸りながら、シャッターを切る音がどんどんスピードアップしていきます。

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極楽太夫のもうひとつの小道具は、白い鳥の羽でできた扇。持ち手のところにはシンプルで上品な、パールと銀細工の飾りがついています。野波さんに「右手をチョイ上げて、スーッと伸びる感じ」「気持ち、しなっとしてみて」と言われた松雪さん、小道具担当・高橋さんにジェスチャーで、表がこっち?と確認してからそちらの面を向けてポーズ。さらに持ち手部分の飾りをどう持ったら美しく見えるかも、高橋さんがその場で実際にやってみせ、自然に片手でまとめて持つようにアドバイス。扇の面もどの角度、どの位置で止めるのが一番いいか、微調整していきます。

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衣裳の堂本教子さんによると、この髪飾りは鳳凰をモチーフに、鳥居や雲をあしらって“極楽”をイメージしているとのこと。花魁風の着物のようでもありつつドレスのようにも見え、ちょっと異国風な雰囲気がまさにゴージャス。色味は、捨之介、天魔王、蘭兵衛の黒、赤、白とかぶらないようにと紫紺を選んだのだそう。

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続いて、床に座って琵琶を抱えるポーズの撮影では、河野さんから「ギター雑誌の表紙みたいに」という注文が飛び出し、爆笑する松雪さん。先ほどまでのクールな表情が、ぱあっと明るく、お茶目な笑顔に変わります。照明の当たり具合を調整するために一瞬、撮影が止まるたびにスーッと高橋さんが傍らに立ち、松雪さんの負担にならないようそっと琵琶を支えていました。毎度のことながら細やかな気配り、さすがです。

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スタジオの床にペタッと座ることになるので下に何か敷こう!と急遽、座布団が用意され、その上にどう座ればいいかは河野さんが自ら向かい合ってお手本として斜め座りをしてみせています。撮影するうち「立て膝をしてみてもかっこよさそう!」ということになり、「その場合は足を出す? 出さない?」「出すなら、どう出す?」と意見交換が行われると、それに合わせて松雪さんも自分で裾をめくって足を出したり、引っ込めたり。さらに特殊効果用の煙がスタジオ内でたかれると「わあ、綺麗!」「弁天様、降臨!!」とスタッフ一同、絶賛の嵐。こうして幻想的なムードの中、まだまだ撮影は続くのでした。

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やはり劇団☆新感線にはこれが4回目の出演となる松雪さんにも、『髑髏城の七人』Season鳥への想いを語っていただいています。

——まずは、長時間の撮影の感想から伺えますか。とっても素敵なお衣裳でしたが。
そうですね、すごい迫力で私もビックリしました。特に、頭に鳥居が乗ったことがちょっと衝撃でした(笑)。そしていざこうして撮影が始まると、前回出させていただいた『五右衛門vs轟天(GVG)』(2015年)のことを思い出して、本番に向けてまた死ぬほど鍛えないときっと持たないなと思いました。

——『髑髏城の七人』という作品にはどんなイメージがありましたか。
私、初めて新感線さんを観たのが『アカドクロ』だったんですよね。その時にとても感動しまして「どうしても新感線さんに出たい」と思ったんです。それで熱烈にメッセージを送っていたら、こうして出していただけることになりまして。それからの御縁なんです。ですから今回『髑髏城の七人』で呼んでもらえたのがすごくうれしくて。まさか自分が『髑髏城の七人』に出られるとは思っていなかったので。

——7年に1回しか巡ってこない作品でしたしね。
しかも私の場合は『GVG』に出させてもらったばかりのタイミングで、ないんじゃないかな?と思っていたので、お話をいただけてちょっと驚きました。

——しかも、それを“花・鳥・風・月”と4シーズンで、新しい劇場でやるというこの企画を聞いた時にはどう思われましたか。
いやー、本当にすごいことですよね。キャストは毎回変わるとはいえ、これだけの期間をロングランしていくというのは、新感線さんじゃなきゃできませんよ。それも、このIHIステージアラウンド東京という新しい劇場で、ということなので。通常の劇場でも極上のエンターテインメントなのに、今回は一体どんなことになってしまうんだろうと思ってすごくワクワクしています。稽古をどうやってやるのかも、ちょっとまだ想像できなくて。

——よくわからないですよね(笑)。
でも、私たちは第1弾ではないので。“花”で同じ極楽太夫をやる、お友達のりょうちゃんに「どうやってやったの?」って詳しく教えてもらおう!と思っています(笑)。

——改めて、劇団☆新感線の魅力とは。松雪さんは、どんな集団だと思われていますか。
ふふふ。みなさんを、とても尊敬しています! そして、いのうえひでのりさんが大好きです!!(笑)。私は準劇団員にしていただいているので、ここではもう懸命にやるのみです。中島かずきさんの脚本ももちろん素敵ですが、そこにいのうえさんの演出が加わると何十倍もふくらんで、それに対して劇団員さんたちのお芝居もものすごいことになっていくので、私も一緒にがんばらなきゃ!といつも思いながらやっています。みなさんにとても可愛がっていただいて、楽しく自由にやらせてもらっています。なにしろ私の場合は、前回の『GVG』を乗り越えたことで、かなりいろいろなものが蓄積されたと思いますし。なので、もうどんなものが来てもそれほど怖くはないです。

——既にいろいろなことに挑戦していただいていますからね。
ね(笑)。でも今回はキャストに合わせて台本も書き換えるんでしょう? それがすごく楽しみです。とりあえず私たちのやる“Season鳥”は、“オモシロ髑髏”になるという風に聞いてはいます。

——エンターテインメントな『髑髏城の七人』になるとか。
しっかり歌って踊るということなので、早めにレッスンに行っておこうと思います(笑)。なにはともあれ、今回も体力勝負。ケガをせずに、最後まで無事に公演を終えるというのが一番の目標です。

——“鳥”のカンパニーについては、どんなメンバーが揃ったと思われていますか。
すごく個性的で大好きな、素晴らしい先輩方がたくさんいらっしゃるカンパニーなので、ご一緒できることが本当に楽しみです。もし自分がお客さんとして観に行っても、出てくるキャラクター、出てくるキャラクター、絶対楽しめるに違いないと想像がつくようなキャストの方ばかりですしね。

——お馴染みの方々って感じですか?
ほぼ、お馴染みですね。今回も(池田)成志先輩についていこうと思っています。先輩についていけば間違いないので。そして絶大に信頼できる粟根さんもいらっしゃるので、何か困ったことがあった時には成志さんと粟根さんを頼ろうと思います。

——極楽太夫という役柄についてはいかがですか。
器量の大きな女性。悲しみもひと時の喜びも、愛も深く内包して凛とし、強く生き抜こうとする女。それがまた切ないです。さらに今回は歌って踊るので、きっととても華やかで切ないものになるのかなと想像しています。歌とダンスを妖艶にパワフルにやりたいです。これまで新感線さんのみなさんに鍛えられたものを凝縮しつつ、新しい方向にも進んでみたいと思っています。 

——ファンの方へ、お誘いのメッセージをいただけますか。
キャストが変わるたびにまた全然違う色合いの『髑髏城の七人』になるはずです。ものすごいことが豊洲で起きていますので、これを見逃したら本当にもったいないです。ぜひとも期待して、劇場に足を運んでいただければと思います。