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撮影レポート 天海祐希 篇

2018.03.14

3/17(土)にいよいよ待望の幕が開く、劇団☆新感線『修羅天魔〜髑髏城の七人Season極』。2017年3月末から約1年かけて上演してきた『髑髏城の七人』“花・鳥・風・月”各シーズンの世界観はそのままに、登場人物の設定やストーリー展開をがらっと変える“完全新作”となる今作、主人公は『髑髏城〜』の主要キャラクターの一人である<極楽太夫>です。“信長に愛されたスナイパー”という新たな設定のもと、彼女がどういう形で関東髑髏党の党首<天魔王>と絡み、どんな風にこの新しい物語を紡いでいくことになるのか、興味は尽きません。まだまだ謎のベールに包まれたままの『修羅天魔』ではありますが、初日開幕の前に少しだけヒントになるかもしれないヴィジュアル撮影レポートと、撮影当日に敢行したミニインタビューの模様をお届けいたします!
初回はもちろん、<極楽太夫>を演じる天海祐希さんからのスタートです。

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撮影スタジオのフロアに新<極楽太夫>として衣裳とメイクを整えた天海さんが現れると、周囲のスタッフ、関係者たちから「カッコイイ!」「早くも心躍る!!」「あまりの綺麗さに、毛穴が開いた…!!!」などの感想が漏れ聞こえ、ちょうど撮影の様子を見に来ていた中島かずきさんまでも「有無を言わせない雰囲気があるね。すごいなあ、もう頷くしかないよ!」と興奮気味。白地の着物を着ているせいか「ちょっと、捨之介のイメージもあるね」「なんだか、イケメン!」との声も聞こえます。蓮の花と流水が描かれた衣裳はシンプルさの中にも華やかさと品があり、「仏さまみたい、徳の高さを感じる」「似合うねえ!」と大好評。

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ちなみに今回のヴィジュアル撮影もアートディレクターは河野真一さん、カメラマンは野波浩さんで、新感線の作品づくりにお馴染みのスタッフ陣が揃っています。衣裳を担当しているGROUP色の沼田和子さんに聞いたところによると、今回の<極楽太夫>は“渡り遊女”という設定でもあるため、旅のできる身軽な装束をイメージしたとか。いのうえひでのりさんからは、色は“白”で“蓮”を取り入れた柄にしてほしいとの要望があったそう。スリットの入ったデザインの着物に、紫色の半幅の帯という組み合わせもちょっと変化があって印象的です。

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フロア中央にスタンバイした天海さんの立ち姿を見た河野さん、しみじみと「やっぱり、綺麗やなあ」と呟くと、まさに花魁が使うような鼈甲風のかんざしを何本、どの位置に挿すかをヘアメイク担当の宮内宏明さんと確認。いろいろと試してみたのち、結局4本をバランスよく挿して整えれば、いよいよ撮影開始です。

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まずは赤バックのバストショットから。今回の<極楽太夫>は“スナイパー”という設定のため、天海さんが手にする小道具としては拳銃が用意されています。「風を入れたい」という河野さんの注文にはブロワー係として宮内さんが天海さんのすぐ横に立ち、絶妙の微風を作って髪や衣裳を揺らします。そしてシャッター音が途絶えるたびに、髪一筋の乱れにも気を配るスタッフ陣。あうんの呼吸で完璧な美しさを目指す、このチームワークの良さには毎度ながら感心するばかりです。

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セットチェンジなどのちょっとした合間には、モニター前まで来て自ら確認する天海さん。その際には周囲にいるスタッフに気軽に声をかけて雑談を交わしているため、スタジオ内には頻繁に笑い声が巻き起こっています。撮影に立ち会っていたいのうえひでのりさんの姿を見つけると「こんなにずっとお芝居をやり続けていて、ちゃんと寝られてます? 食べてます?」と矢継ぎ早に質問。いのうえさんが「小一時間は飲まないと寝られないんですよね……」と打ち明けると、「お酒も飲み過ぎると脱水症状になるのよ、ちゃんと水分もとらないと!」とちょっぴりお説教モードな天海さんの様子に、いのうえさんの周りにいたスタッフはニヤニヤ。撮影中に漂っていたピリッとした緊張感が、ふわっと緩まる時間。天海さんのこうした何気ないやりとりや気遣いが、カンパニーを引っ張る力となっていることも感じる瞬間です。

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拳銃を構えての全身ショットの撮影に入ると、今度は「立つ角度はここでいい?」「袖を持っていたらおかしいかな?」など、天海さん自らアイデアを提案したりする姿も。「銃口はもっと下に向けたほうがいい?」と聞かれた河野さんは「真下じゃないほうがいいな、斜めに軽く構える感じでいこう」と指示。さらに野波さんから「目線はこのあたり」とリクエストされ、手で示された右斜め上方向をスッと見つめる天海さん。その凛々しさに、またもやあちこちから溜息が漏れるスタジオ内。

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片手で銃を構えるポーズの撮影では、銃身の位置を固定するためにスタンドが用意され、カメラに映らない位置で天海さんの腕を支えることに。とはいえ手首から先はずっと浮かせていなければならず、小道具の銃とはいえそれなりに重みがあるため天海さんも「うわー、これ意外に重い!」と苦笑い。「でも撮る瞬間だけなんだからいいよ、大丈夫!」との言葉に、ここでまた改めてスタッフたちのチームワーク感がアップ。シャッターを切るギリギリまで小道具スタッフが銃口部分を持って、天海さんの負担を少しだけ軽減しつつ、気分を引き締めて撮影は続きます。

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「そのまま、もう少しクールに微笑んでみようか」という河野さんの注文に、キリッと表情を変える天海さん。野波さんも「その鋭い目、すごくいい!」と言いながら、シャッターを切り続けます。「OK!」と声がかかった途端、「ふうー!」と大きく息をつくと、両手を上げてお茶目なポーズをとり「いい筋トレになったかも!」と柔らかく微笑む姿には、スタッフたちも自然と拍手喝采。

そんな長時間に及ぶ撮影が無事終了後、天海さんに久しぶりに劇団☆新感線に出演することについて、そして『修羅天魔』への想いなどを語っていただきました。


——毎回のことですが長時間の撮影、おつかれさまでした! 今回の撮影の感想はいかがでしたか?
新感線のヴィジュアルはいつもすごくカッコイイものになるとわかっているので、何の迷いもなくやらせていただきました。信頼するクリエイターの方たちが揃っていますから、何も不安はないです、言われたとおりにしていれば絶対に素敵なものになりますので。

——『修羅天魔』が始まる前、『髑髏城の七人』の各シーズンをご覧になっていたそうですが。IHIステージアラウンド東京という劇場の客席に座ってみて、どうでしたか。
すっごいワクワクしました! 遊園地の乗り物に乗るような感覚もあって、あれ、これ今、動いてるんだろうか、動いてないんだろうかって最初は気にしていたんですが、だんだん劇が進むにつれて気にならなくなっていつの間にか物語の中にすっかり取り込まれていました。まさに、自分の目の前でいろいろな出来事が起こっているように感じることもできました。そもそも舞台ってそういうものなんですけれども、この劇場でいのうえさんが演出している作品の場合は映像や音楽が特に効果的で、生の舞台なのに映像作品のようにも思えてすごく不思議な感覚になるんですよ。そしてこの360°回転する劇場の真骨頂というか毎回、待ってました!と思うほどの、この劇場のひとつ大きな武器だなと思うのがフィナーレ、エンドロールの場面。客席が回転して、すべての場面が流れるように現れると、いつも泣きそうになってしまうんです。また出演者がそれぞれみんな、やり遂げた顔をしてそこに立っていてくれて。あれは本当に、この劇場でしか味わえない感動ですね。

——“花・鳥・風・月”と、演出がガラッと変わるのもすごいことで。
そう、それもいのうえさんが出演者に合わせた演出をしてくださっているんですよね。その人が一番素敵に見えるパターンに変えてくれるというか。新しいことも取り入れながら、いろいろとチャレンジもしながら。そう考えると、(アクション監督の)川原さんだって全部で6パターンの殺陣をつけたんですからね。もしかしたら、ひとりで何手のアクションをつけたって申請すればギネスブックに載るんじゃない?(笑) そのくらい、すごいことだと思います。

——客席から観ていた時は、やはりご自分もこの最終章で舞台側に立つんだと意識しながらご覧になっていたんですか?
それはもう。最初に小栗旬くんの出ていた“花”を観た時に「これはやめたほうが良かったんじゃないか」と思いましたから(笑)。楽屋にご挨拶に行くと小栗くんにも山本耕史くんにも「ねえさん、これやるんですよね、マジ大変ですよ」って脅かされて。それで怖くなって、プロデューサーの細川さんに「今更ですけど、やめさせてもらってもいいですか?」って言ってみたら、「あ、残念。30分前に締めきっちゃいました!」だって。ちなみに、そのあとも劇場に観に行くたびに毎回このやりとりを儀式のように繰り返していたんですけどね(笑)。

——そして『修羅天魔』の台本を読まれた感想は。
第一稿を読んだ時、これは願望でもあるんですけど、まず「かずきさんは楽しかっただろうな」と思いました。だってご自分が何年も前に書かれた作品が毎回演じる役者も変わり、これだけ変化をして、今回は6パターンにもなったわけで。お書きになるのはすごく大変だったと思いますけど、でもここまで変えられるなんて、すごい力量ですよね。その中でもこの『修羅天魔』は私としては別物、新作を読むようでした。かずきさんも「新作として書きました」とおっしゃっていましたけど、確かにこれまでとは違う面が浮かび上がっているように思いました。

——<天魔王>を演じる古田新太さんとは、久しぶりの共演ですね。
そうなんですけど、今回のヴィジュアル、ダメでしょ、怖すぎるでしょ!(笑) それにしても、やっぱり同じ舞台に古田さんがいてくださるだけでものすごく安心感があるんです。そのおかげで私は私で、自分のことに集中できて。前回ご一緒した『薔薇とサムライ』の時は味方同士だったんですが、今回は敵対する役まわりなので戦わなければいけないんですけどね。だけどあのヴィジュアルだと面と向かった時、相当怖そうじゃない?(笑)

——改めて、天海さんにとって新感線に出る時の楽しさ、新感線に感じる魅力とは。
それはやはり、集団の持つ力というか。いのうえさんの向いている方向にみんなが一緒に向いているところというか。それでいて個々の個性もしっかり出ていますし。あと、受け入れ体制が素晴らしい。誰が来たって、まったく浮くことにならないんです。なんだか本当に、よく構ってくれる人たちなんですよね。

——みなさん、すごく気を遣ってくれますし。
ええ。そしてもちろん作品も面白くて。客席で観ていても笑えて泣けて、すべての感情が盛り込まれていますから、毎回本当に一緒にワクワクできちゃうんです。それに“いい筋肉の人たち”、って感じもします。いい筋肉っていうのは、ふだんはすごく柔らかいんですよ。それがひとたび使わなきゃいけない時にはグーッて力が入って硬くなる。いつもすごく柔らかいから、「大丈夫なのかな?」と一瞬思うけど、やる時はやるってことです(笑)。また、稽古場も楽しいですしね。「うわっ、こんな方角から?」ってところから球を投げてくる方たちも多いから、周りを見ているだけで本当に面白いんです。

——では最後に、お客様へメッセージをいただけますか。
みなさんに楽しんでいただけるように、それを一番に考えながらお稽古を重ねて初日を迎え、そして千穐楽を無事に迎えられるようにがんばりたいと思っています。“Season花”から始まって5組6パターン上演してきたこの劇場での『髑髏城の七人』のシリーズも、この『修羅天魔』でいよいよ最終章です。しっかりと、いいシメ方ができるように頑張りますのでぜひとも劇場まで足をお運びください。もし万が一、まだこのアジア初の360°回転劇場を体験なさっていない方は、ぜひこの機会に『修羅天魔』で、こんな風にエンターテインメント、演劇は進化していっているんだということを体験していただけたらと思います。