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撮影レポート 長澤まさみ 篇

2018.10.19

絶対にここでしか味わえない新たなシェイクスピア体験ができることでも話題を集めている、新感線☆RS『メタルマクベス』。360°客席が回転するという没入型の劇場、IHIステージアラウンド東京を効果的に使い、脚本は宮藤官九郎さん、演出はいのうえひでのりさんが担当します。disc1からdisc3まで、3つのチームが競演するという形での上演となる中、11/9(金)に開幕するdisc3でマクベス夫人の役まわりとなるランダムスター夫人役に扮するのは、これが新感線初参加となる長澤まさみさんです。以前、チラシなどの宣伝ヴィジュアルのために行われた撮影の模様と、その直後のミニ・インタビューをここでご紹介します。

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撮影のための衣裳を身につけ、スタジオに登場した長澤さんのスタイルを目にしたスタッフたちは「カッコいい〜!」「足、長〜い!」「顔、ちっちゃ!」など、口々に感想を呟きまくり、長澤さんの存在感抜群の“女王様ぶり”に早くもすっかり盛り上がっています。エナメル素材の衣裳は、胸元が大きく開いたショート丈のライダースジャケットにマイクロミニ、網タイツにニーハイブーツと、ほとんどを黒で統一。ジャケットの襟にはスタッズがびっしりとつけてあり、指には黒く長い付け爪。大ぶりのティアラが、赤いメッシュの入ったショートカットの髪によく似合っています。

手袋は片手だけにしようということになり、衣裳担当の伊賀大介さんと相談する長澤さん。まずは右手につけ、試しにソファのところでポーズ。「逆のほうが良い気がしませんか?」という長澤さんの意見に、「確かにそうだね」と頷く伊賀さん。身体の向きに合わせて、まずは左手だけに装着。その後、身体の向きやポーズに合わせて、随時付け替えることに。

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その様子をモニター画像でチェックしていたアートディレクターの河野真一さんが「長澤さん、ソファの背に座る位置はもう少しセンター寄りでお願いします」と声をかけると、そのハードな衣裳とメイクの状態からは連想できないほどの屈託ない明るい笑顔で「ハーイ!」と答える長澤さん。カメラマンの岡田貴之さんからの「そこから、レンズに向かって前かがみにしてみてください」というリクエストには「こうですか?」とソファの後ろから乗り出すようにしてポーズ。「めちゃめちゃ、セクシー!」とスタジオのあちこちから、歓声が上がります。

浦井健治さん扮するランダムスターが手にするギターの位置と、長澤さんの足をどう組み合わせるかを河野さんがモニターで確認しつつ、ソファに両足を載せるバージョン、右足だけを大胆に前方に出すバージョンなど、さまざまなバリエーションでシャッターが切られていきます。長澤さんも自らモニターを覗きに来て、どの位置に足が来ればいいのか、その範囲をチェック。それに合わせて、自らポーズをアレンジしてくれています。

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岡田さんに「ヒールが見えるように、もう少し伸ばせます?」と言われた長澤さんが、「このくらいで、どうですか?」と足をグイッと伸ばすと、モニター前で河野さんが「いいじゃん、いいじゃん、いいじゃん!」と三連発で好反応。さらに、より美しいバランスになるように、伊賀さんが太ももの角度や曲げ具合をアドバイス。「顔は正面、挑発的な表情で」という注文には「ハイッ!」と元気のいい返事で応じる長澤さん。

グリーンの照明を少し調整する間には、衣裳スタッフたちが両面テープを使ってジャケットの襟が乱れないよう、ベストの位置で固定。そこに伊賀さんが薬莢(ヤッキョウ)のようなものがついたベルトを持ってきて、長澤さんの左腕に巻き、ハード度もさらにアップ。

また、チューインガムを噛んで風船を膨らませての撮影に入ると、ガムを2つ、3つ口に入れてモグモグ、しばらく噛み続ける長澤さん。「ちょっと、やってみますね」と試しに膨らませてみると、一発目からいきなり大きな風船ができ、岡田さんがすかさず手持ちカメラで寄っていきパパパパパッとハイスピードでシャッターを切ります。「おぉー、すごい」「絵になる!」「風船膨らますの、うまいねえ〜」と周囲は感心しきり。河野さんから「次はウインクして」「ふてぶてしく笑って」「ハスッパな感じで」などと注文が入り、その後もいくつも風船を膨らませつつ、さまざまな表情をつけつつ、撮影は続くのでした。

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長澤さんにもすべての撮影が終わった後で、劇団☆新感線初参加に当たっての想い、『メタルマクベス』への意気込みなどをお聞きしました。


——劇団☆新感線の『メタルマクベス』に出演することが決まって、まずどう思われましたでしょうか。
もともと新感線の舞台は好きでしたし、機会があればいつか出てみたいなと思っていたので、お話をいただいてとてもありがたく光栄でした。

——新感線のどういうところがお好きだったんですか。
お客さんも一緒になって、一体感が生まれる感じがすごくあるところと、あとは音楽がすごくカッコいいところ。そして、観た後にスカッと明るい気持ちで帰れるところが好きですね。

——『メタルマクベス』の稽古はまだまだこれからだとは思いますが、作品に対してどんな印象をお持ちですか。
まだ今日の時点では台本をもらっていないので、何とも言えないんですが。でも、とにかくカッコいいイメージがあります。歌がメインになるとも思いますので、その点はがんばらなくちゃ!と思っているところです。

——初演に出られていた松たか子さんにお会いした時に、『メタルマクベス』のお話になったと聞きましたが。
そうなんですよ。「実は……」とお話したら「がんばれ!」って、背中をポンと叩いてくださって。松さんはとても尊敬している先輩なので、その言葉が自信につながって、思いっきりできたらいいなと思っています。

——脚本は宮藤官九郎さんなので、かなりぶっ飛んだ内容になるかもしれませんね。
そうですね。宮藤さんの脚本は20歳くらいの時に、一度だけ経験しています。宮藤さん独特の世界観と視点で『マクベス』がどうなるのか、とても楽しみです。

——比較的笑いもたくさん盛り込まれるのではないかと想像できますが。そういう、笑いの多い作品に出るということに関してはどう思われていますか。
私、ここ最近はわりとこの舞台に限らず、笑いに包まれた作品に恵まれていて。中でもこの舞台は、そんなこの1年を象徴する作品になる気がして、楽しみで仕方がないんです。もともと、人を笑わせるのは好きなほうなので、作品的にもそういう要素が多いとなると私自身もとてもやりがいを感じます。

——そして、disc3のランダムスター役は浦井健治さんです。浦井さんとは初共演になりますね。
そうですね。浦井さんが出演されていた『ビッグ・フィッシュ』を拝見していて、とても華がある方だなという印象でした。頼もしい方だと思うので、ぜひ引っ張っていってもらいたいなと思っています。

——そして今回、disc1から始まり、長澤さんの出られるdisc3まで、3種類の『メタルマクベス』が誕生することについてはいかがですか。
今回、IHIステージアラウンド東京での『髑髏城の七人』のシリーズを観に行かせていただいていたんですが、やっぱりいろんな人が同じ役を演じるというのはとても面白い試みだと思いました。誰もが演じてみたいと思える魅力的なキャラクターを、時期をずらして違う人が演じていくというのは、演じる側にとってとてもいいチャンスだと思いますし、観る側にとっても違う楽しみ方ができますしね。

——IHIステージアラウンド東京の観客席から、舞台を観てみた感想としては。
やっぱり、のめり込んで作品を観られる気がして、とても集中できました。舞台が広いと、物語の世界観も広く感じますし。そこもすごいなあと思いながら、夢中で観ました。

——客席が360°回転することについては。
私は、ごく普通に、それを受け入れて、ストーリーに入り込んでいました。不思議な感覚もありましたし、素敵でしたね。

——今度は、ご自分がその舞台側に立つわけですね。
はい、そうですね。でもなんだか、舞台上が意外に寒いという噂を聞いたんですよ。私たちが出させていただくdisc3の公演が始まる頃には、季節が冬になっていると思いますので、それが少し心配です。ちょっと、舞台が寒いってどういうことなんだろう?と思いつつ、がんばります(笑)。

——いのうえさんの演出を受けるのも、初体験ですね。
いのうえさんは、型から動きから全部つけてくださると聞いたことがあるので、しっかりついていけるようにがんばりたいと思っています。そのためにも、稽古が始まるまでにもっと体力をつけておかなければ。きっと踊ったりもするんでしょうし。歌の準備も、踊りの準備も、いろいろととにかく準備を怠らないようにしておくつもりです。あと、自分たちの舞台が始まる前に、disc1と2があるわけなので、そちらの舞台も観に行けたらいいなと思っています。

——同じ作品や役柄で競演するような場合、競演相手の舞台を観に行きたい人と観たくない人とに分かれますけど、長澤さんは観に行きたいほうですか。
今回は特に3人ともタイプがまったく違う気がするので、観ておいても大丈夫かな、と。しかも私以外のお二人はミュージカル界で活躍されている方々ですから。逆にそのいいところを盗めたらいいのかなと思っています。

——いろいろなジャンルのお仕事をされている中で、舞台のお仕事の楽しさ、醍醐味はどこに感じられていますか。
いろいろな演出家さんから演出を受けてみると、とても勉強になることが多いので。舞台に出ることは私にとって、勉強の時間なんです。もちろん、お客様にはちゃんとしたものを見せられるように、それまで精一杯がんばらなければいけないんですが。私、その稽古期間が一番好きなんです。稽古で自分のものにしたものを、そのままお客様に届けられたらなと思っています。

——今回、一番楽しみにしていることは、どういうことですか。
まだわからない部分もありますが、稽古をしていくうちに自分自身が、みなさんに観に来てほしいなと思えるようになれたらいいな、と。

——では最後に、お客様へ向けて長澤さんからメッセージをいただけますか。
今回は私自身も、ちょっと未知の世界への挑戦になります。これまでにやってきた舞台で経験させてもらってきたことを活かして、この芝居を最後までしっかりとやり遂げることができればいいなというのが、第一の目標です。みなさんに楽しんでいただけるよう、がんばります!