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撮影レポート 浦井健治 篇

2018.10.12

IHIステージアラウンド東京にて3組のチームに分かれて上演される、新感線☆RS『メタルマクベス』。11/9(金)に幕を開けるdisc3で、主人公のランダムスターを演じるのはミュージカルにストレート・プレイにとジャンルを越えて幅広く活躍している浦井健治さんです。過去に『薔薇とサムライ〜GoemonRock OverDrive』(2010年)、『ZIPANG PUNK〜五右衛門ロックⅢ』(2012-2013年)に出演し、劇団☆新感線には縁の深い“準劇団員”とも言える存在の浦井さん。過去の2作品とも“シャルル王子”という強烈な個性を放つ独特なキャラクターだった。今回はマクベスの役まわりにあたるランダムスターを演じることとなり、かなりのハイテンション、ノリノリでビジュアル撮影に挑んでいました。その撮影の模様と、直後に行ったミニ・インタビューをご紹介します。

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スタジオに登場するなり、既に撮り終えた他のキャストの写真が映し出されたモニターを見て「ヤバイ!すごい!」と、早くも大喜びの浦井さん。「なんといっても、今回はシャルルじゃないですからね!」と、新感線の舞台で“ハマリ役”と大評判だったキャラクター以外の役を今回は演じられるということが本当にうれしそう。今回のビジュアルのコンセプトをアートディレクターの河野真一さんから説明されている間も、熱心に真剣に話を聞いているものの表情は常にニッコニコです。

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レース素材を活かした細身の真っ黒いコートを羽織り、王冠をつけてフロア中央に出てくると「パンツのラメが効いてるね」「それにしてもすごい存在感のあるブーツだな」と、そのハードな印象の衣裳に身を包んだ浦井さんの立ち姿にスタッフたちの目はすっかり釘付け。左手には、かなり尖ったメリケンサックのような手袋を装着しています。「こういう格好をすると、冠(徹弥)さんサイドになったという感じもしますね」と笑いながら話す浦井さん。「うわー、ヤバいー!こういうのが夢だったんですよ!」と飛び跳ねるようにしながら、まずはテスト撮影に向かいます。今回も、カメラマンは岡田貴之さんです。

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それぞれのチームごとにdisc1は青、disc2はピンク、とイメージカラーが違うのですがdisc3チームの色は緑。テスト撮影でのショットをモニターでチェックしていた河野さんは「なかなかいいねえ、この色、浦井くんに合ってるよ」と、満足げに頷いています。

スタジオに流れるBGMは、もちろんヘヴィメタル。リズムを刻みながら歩き、黒い革張りのソファに座る浦井さん。撮影用のギターが渡され、それを抱えるようにしてポーズを作ります。ヘアメイク担当の宮内宏明さんに、disc1、2のランダムスター同様、指の爪に黒いマニキュアを塗ってもらうと「パワーアップしましたー!」と両手を広げてみせる浦井さん。照明が王冠に当たることで生じるグリーンの影のバランスを調整すると、撮影がスタート。

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「表情はどうしましょうか?」と聞く浦井さんに「挑戦的な顔でいきましょう」と、河野さん。さらに「ギターのネックを抱え込むようにしてみて」と岡田さんに言われ、ギターを抱きしめつつ、レンズに強い視線を送ります。

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セットチェンジのためのブレイク中にスマホをチェックすると、「さとしさんからLINEがきた!」と興奮気味。どうやらdisc1のランダムスター、橋本さとしさんから励ましのメッセージが届いたらしく、感激しきりの浦井さん。この日はメイキング用にと、動画のカメラも入っていたのですが、そのカメラにも気さくに対応。「ホント、ヤバいんです。高校生の時からの夢が叶ったわけなので。身震いします!!」と、ここでもアツく、アツく、語っています。

衣裳担当の伊賀大介さんもサポートに入り、ソファに座る際にはコートの裾を綺麗に広げて整えます。そして、撮影再開。今度は大きく両手を広げてみたり、ギターを抱えながらネックにキスしてみたり。深い位置に腰をかけて不敵な笑みを浮かべると「いいねえ、いかにも王っぽい!」と好評。河野さんから「健ちゃん、カッコいいよ!」と言われると、その途端にくしゃくしゃっと破顔して「やったー!」とガッツポーズ。

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「OK!」と声がかかると、撮影は無事終了です。と、そこにちょうどdisc2のランダムスター、尾上松也さんが顔を見せ、「久しぶり!」とハイタッチ。その場で仲良さげに近況報告が始まっていました。

その後で、浦井さんにも今回の舞台への思い入れや意気込みを語っていただきました。



——『メタルマクベス』にご出演が決まった時、まずどんな思いを抱かれましたか。
めちゃくちゃうれしかったです!そして今、めちゃめちゃ緊張もしています!!僕、今回で新感線には3回目の出演になるんですが、ということはこれで晴れて“準劇団員”と名乗ってもいいらしくて(笑)、本当にうれしいです。大勢の方に支えていただきながら、1回目と2回目の時にはシャルルというおバカな王子の役をやらせてもらいましたけど、今回は王子からいきなり王ですからね。この重みはすごいなと思っています。なにしろ高校時代から、僕はこの瞬間を夢見てきたんです。夢って、叶うんですね!今日「ヤバイ」って、何回言ったかわからないくらいですよ。ずーっと、ヤバイヤバイって言ってましたよね。

——軽く30回くらいは、おっしゃっていたかと(笑)。
やっぱり、そんなに言ってましたか(笑)。

——高校時代に夢を見ていたというのは『マクベス』に出るということですか?
いえ、そうではなくて、劇団☆新感線の、このパンクでロックで、いかつい感じの世界に本気で憧れていたんです。今、そこにいるんだ、どうしよう!って気分です。ちょっと、涙が出るくらいに。諸先輩方の勇姿が、今も僕の心には熱く焼き付いているので。そんなフィールドに自分も同じように立たせていただけるんだっていうことが何よりもうれしくて。今までやってきてよかった、とうとうここに来られた!って気持ちでいっぱいです。とはいえ、稽古に入るのは少し怖かったりもします。そんな現実も、徐々に差し迫ってきていますね。

——“準劇団員”になれたのに、怖さもあるんですか。
やっぱり、いろいろな思いがありますよね。まず、こうしてビジュアル撮影でも今回はシャルルとしてではなくランダムスターとしてここにいる。これまでは常に金髪で「アッハハハ〜ン」ってやってましたけど、今日はまったくそういう空気ではない状況ですし、いつものスタッフさんたちから「かっこいー、かっこいー」って言ってもらえて。そのせいなのかよくわからないですけど、今もなんだか、ずっと緊張してます。

——そう言われれば、確かにシャルルの時には「カッコイイ」とは言われていなかったかもしれませんね。「可愛い」とか。
「ウザイ」とか、言われていましたから(笑)。

——じゃ、今回、「カッコイイ」と初めて言われて。
「おう、健ちゃんカッコいいぞ」って言っていただけたのも、スタッフのみなさんがカッコよくして下さったお陰ですし、せっかく、ランダムスターをやらせていただくからには、カッコイイ部分をたくさん出していけたらなと思っています。

——『メタルマクベス』の初演は、ご覧になりましたか。
はい、劇場で観ました!あのシェイクスピアのマクベスの世界観と、宮藤(官九郎)さんの世界観と、劇団☆新感線の世界観が、ぐわっ、ぎゅって凝縮されていて、これぞエンターテインメント!という舞台でした。それでいて、結構がっちゃがちゃもしていて。いわゆるロックミュージカルというか、パンクミュージカルというか、そんなテイストの真骨頂も目の当たりにして、ずーっと鳥肌立てていましたね。当時は森山未來くんがカッコいいのとオチャラけた部分と何でもできる王子として出演されている姿を、羨ましいなあって思いながら客席から観ていたんです。だけど今回は、まさか自分があの時の内野聖陽さんの役をやることになるとは! まったくもって驚きの展開が自分に待っていましたね。あの時は(橋本)じゅんさんとか、たくさんの諸先輩方が縦横無尽に暴れまわっていた印象も強く残っていますけど、今回は果たしてどんな舞台になるんだろうなと、今からとても楽しみです。

——そしてランダムスター夫人役では、長澤まさみさんが参加されます。
ご一緒できるのがまず光栄ですし、長澤さんと共演されている方々からも、すごく優しい方だよと教えてもらったりしているんですけど、もちろん映像や舞台でも観させていただいていて、なんて華のある、そしてなんて芯の強い、大きな大きな女優さんなんだろうという印象を持っています。その長澤さんが、ランダムスター夫人、つまりマクベス夫人を演じられるんですからね。僕、どんだけいじめられるんだろう(笑)。とにかく、しっかりと夫人を愛しながら甘えながら、そして利用されながら罵倒されながら、ランダムスターを演じきれたらなと思っています。すでに絶大な信頼を置いてますが、一緒に楽しくやっていきたいですね。

——長澤さんは初参加なので、浦井さんのほうが新感線経験者としては先輩ですね。
やめてください、そんなこと言うの!だって僕、確かにシャルルを2回やりました。3回目の参加なので“準劇団員”にはしていただけそうですが、なんせシャルルしかやってきてないんですよ。シャルル、シャルル、ランダムスターなので(笑)。まったく先輩らしいことなんて、できません。

——3年ぶりに、いのうえひでのりさんの演出を受けることに関してはいかがですか。
正直、最高にうれしいんですが、最高に怖いです。きっと、ボッコボコにされるんだろうとは思いますが、そのあとの景色を一緒に見られるように、なんとか食らいついていきたい。あの、新感線のオープニングで必ずかかる、ドゥン、カッ、ドゥン、カッ、というあのイントロを「よしっ!」と胸張って聞けるように、しっかり稽古していきたいと思っています。諸先輩方の中にはあの曲を聞くだけで極度の緊張に襲われるって方もいらっしゃいますけど。

——そうなんですか(笑)。
僕は、大好きなんです。違う現場の時でも時々聞いては「よし!今からだ!!」と、気合いを入れているんですよ。

——IHIステージアラウンド東京という、客席が360°回る劇場での上演になることについてはいかがでしょう。
『髑髏城の七人』の時に観に行かせていただいて、なんて最先端なんだ!と思いました。そして演劇を越えて、これはアトラクションか?とも思いましたし、新しい演劇を目撃した!という気持ちにもなりました(笑)。終演後に楽屋に挨拶に行かせていただくと、自分がここに出ることが不安になるくらい、出演者のみなさんが「メチャクチャ大変だからな」しか言わないという。「まず、足腰を鍛えておけ」とか「筋トレしておけ」、「なるべく走り込んでおけ」というアドバイスをいただいているので、とりあえずそれは今から実践しています。

——体力をつけておいたほうがいい、と。
じゃないと、絶対にもたないよ!といろいろな方に言われましたから。体力、バッチリつけておきますよ!

——では最後に、お客様に向けてメッセージをいただけますか。
今回は3チームもあるし、かなり大所帯になるだろうとは思いますけれども、それぞれのチームで一丸となって、みんなでより良い『メタルマクベス』を作っていけるようにがんばっていくつもりです。兄貴ともいえるさとしさんからは「おまえにちゃんと渡せるように完走するから、そのバトンをしっかり受け取ってくれや」と言われているので、バトンをさとしさんから松也くん、松也くんから自分へと、三人でつないでいけるように、ランダムスターを演じていきたいと思います。一回一回の舞台を大切に務めさせていただきますので、ぜひぜひ劇場に足をお運びください!