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撮影レポート 尾上松也 篇

2018.08.10

劇団☆新感線のIHIステージアラウンド東京においての新たなる挑戦『メタルマクベス』で、disc1に続き9/15に開幕するdisc2でランダムスター役を演じるのは、これが新感線初参加となる人気歌舞伎役者の尾上松也さんです。今回のチラシ等の宣伝ヴィジュアル撮影の模様を、ここでご紹介させていただきます!

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ヘアメイクを整え、ひととおり衣裳を身につけた状態で控室から現れた松也さんの様子に、スタジオ内は「さすが、貫禄ある!」「カッコいい上に、めちゃめちゃ美しいねえ」「眉毛のないところが、これまた怖そう!」と、早くもざわめいています。確かに何気ない仕草に品があり、自然と醸し出される雰囲気、そして存在感は既に王様そのもの。

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今回も、disc1のランダムスター役の橋本さとしさんと同様に撮影直前にマニキュアを塗ることになり、ヘアメイク担当の宮内宏明さんが松也さんの爪を一本一本、丁寧に黒く塗っていきます。そして、disc2のランダムスターの衣裳はレザーのロングコートに、ちょっと袴のような、スカートのようなボリューム感のあるスタイル。毛皮の襟もゴージャスで、そこに王冠をかぶり、スタッズだらけのブーツを履く……。ここまでハードなイメージの衣裳をまとった松也さんというのも、なかなか新鮮です。

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disc2用の撮影では照明にピンクのフィルムを装着し、陰影にピンクが濃く出る演出が施されています。松也さんがどっかりと深くソファに腰かけ、手にした撮影用のギターの向きを調整したら、いよいよ撮影がスタート。カメラマンの岡田貴之さんから「顔をちょっと右に傾けて」「ギターのネックをちょっとだけひいて」などの細かい注文が入るたび、丁寧に反応していく松也さん。その様子をモニターを通してチェックしているアートディレクターの河野真一さんも「いいねえ、いいねえ」と深く頷いています。

「じゃ、次はポーズを変えてみましょうか」と岡田さんが声をかけると、浅く座り直したり、手や足にも動きを加えてみる松也さん。「手を開いてみて。逆に閉じてみて」などとリクエストされると、その通りにポーズ。「うんうん、これもいいな!」と、モニター前の河野さんも満足そうです。

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するとそこに、衣裳担当の伊賀大介さんがベルトを手に現れ、衣裳にベルトの飾りをプラス。さらに、毛皮の襟もより大きく広げて整えます。その際に「両手を組むというのも、いいかもしれないですね」と、伊賀さんがポーズを提案すると、早速そのアイデアを採用!ソファに浅く腰かけた松也さんが両手を組んでカメラのレンズに目線を送ると「クールだねえ!!」とモニター周囲のスタッフから歓声が沸き、かなり好評の模様。

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さらに河野さんから「今の格好のまま片足を上げて」「膝をもう少し高く」「右手を右耳にあてて」などなど、ミリ単位で微調整するような注文のポーズが続き、シャッター音に合わせるようにして、リクエスト通りに少しずつポーズを変えていく松也さん。「ココが違うんだよ!みたいに、頭を指差してみて」と言われると、頭を指差しながら今度はニヤリと怪しげな表情。それだけで、ものすごい迫力を感じます。

ギターを抱えこむようなポーズの時には、ギターのネックを顔のそばに引き寄せて冷たく微笑む松也さんに対して「ひゃー、カッコいい!」と女性スタッフたちから溜息が漏れています。パパパパパッ!とハイスピードでシャッターが切られると、くっと唇の端だけを上げ、今度は不敵な表情に。「お、それもいいねえ!」と、そういうほんの少しの変化にも、すかさず河野さんの反応の声が上がります。

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セットチェンジ後、全身を撮るショットでは「今着ているコートを脱いで肩にかけてみようか」「羽織るだけの感じもいいな」などなど、スタッフたちもノリノリでアイデアを出しています。髪を整え、撮影が再開すると、手に表情を出すために動かすたびに、どうも手甲の鋲が気になる様子の松也さん。「歌舞伎でもいろいろとんがった役をやってきましたけど、ここまで身体の各所がとんがっている役は初めてですよ!(笑)」と、それまでほとんど口を開いていなかった松也さんからのボヤきにも似たコメントには、スタジオ全体が反応。シリアスモードだった空気が一転し、一瞬ですっかり笑いに包まれていました。

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松也さんにも、撮影が無事終了した直後にインタビューを敢行、初参加となる新感線のことや、今回の舞台に対する意気込みなどをお聞きしました。

——劇団☆新感線から『メタルマクベス』への出演依頼が来た時は、どう思われましたか。
いや、感無量でしたよ。だって僕はずっと前から、いつか新感線に出たいと思っていたので。新感線(の舞台)を観に行くたびに、あらゆるところがウズウズしていました(笑)。ですから今回、いのうえ(ひでのり)さんから声をかけていただいた時には本当に天にも昇る気持ちでした。

——新感線の舞台の、どういうところに魅かれていらしたんですか?
だって、かぶいているじゃないですか(笑)。新感線の作品には、歌舞伎の要素がたくさん入っているんです。だから新感線を観るたびに「もっとやりたい、もっとやりたい。俺だったらこうしたい」みたいに、意欲をすごくかきたてられるようなところがありまして。現・(松本)幸四郎さんも新感線とは何度もご一緒されているじゃないですか。その中でも、僕が一番悔しかったのは新橋演舞場で歌舞伎版の『阿弖流為』をやった時(2015年)。僕も出たかったのに、入れてもらえなかったのがどうにも悔しくて、ムチャクチャ羨ましかった(笑)。その頃から「僕も、いつか必ず新感線に!」と、より強く思うようになっていたので、今回はめちゃくちゃうれしいんです。

——『メタルマクベス』という、この演目での参加になったことに関してはいかがですか。
これは、予想外でした。まさか『メタルマクベス』で僕に、と言ってくれるとは思っていなかったのですごく驚きましたね。参加させていただけるならもう少し和物の作品になるんじゃないかと、自分で勝手に思っていたので。しかも歌がふんだんにあるということにも、非常に驚きました。

——松也さん扮する、ランダムスターという役柄についてはいかがでしたか。
一言で言えば悪、なんでしょうけどね。実はこういう役どころ、僕はすごく好きなんです。オーソドックスにイメージを作ることもできますが、それよりもそこに至るまでの過程や苦悩が一番面白い部分でもあるので、ただの悪ではないというところをしっかりと演じられるということに、すごく魅力を感じています。

——しかも宮藤官九郎さんの脚本なので、またブッ飛んだ設定になっているかもしれませんよね。
そうですよね。僕自身は、宮藤さんの脚本で舞台に立たせていただくのが初めてなので、それもすごく楽しみなんです。だって、宮藤さんの脚本で歌舞伎座でやった『大江戸りびんぐでっど』(2009年)の時にも、同じ月の歌舞伎座の舞台に僕は出ていたにも関わらず、出していただけなかったんですよね……。僕ね、はずされてばっかりだったんですよ(笑)。でも、これまでそうやって悔しい思いばかりしてきたんですが、今回はそのすべてがひとつになっているような舞台になりそうですからね。本当に、楽しみです!

——リベンジが果たせるわけですね(笑)。
そうですよ、夢がようやく叶いました!(笑)

——また今回は、IHIステージアラウンド東京という特殊な劇場での上演になりますが。
ワクワクしていますよ。ただね、僕、『髑髏城の七人』シリーズのほとんどを観てきたんですが、出演者の方にお話を聞くたび「とにかく大変だ」とみなさんおっしゃるんですね。「とにかく走るぞ」ということも、さんざん聞いてきました。ですから、いつも以上に覚悟を持って、未知の世界に飛び込むつもりでがんばりたいなと思っています。とか言いつつ、今はとにかく楽しみしかないんですけどね。

——今回の舞台のために、特別な準備などはされていますか?
何より、たぶん経験したことのない舞台装置ですからね。話によると、最初はみなさんやっぱり苦労するのがタイミングみたいで。あと僕たちって、ふだんは舞台のどこが真ん中かを常に意識しながら、それぞれのポジションを決めたりしているんですね。だから一番心配なのが、パッと出た瞬間にどこが真ん中か分からないということ。でもこればかりはもう、慣れるしかないので。とにかく、早いところ慣れるようにしたいですね。

——上手(かみて)と下手(しもて)がないということに、まずは戸惑いますよね。
そうみたいですね。そして、裏ではみんなずっと走ってるって言っていました。まあ、特に『髑髏城〜』みたいな作品の場合は、走らざるを得なかったんでしょうけど。『メタルマクベス』ではどうなるんでしょう。とにかく体力はいつも以上につけておかないと、大変なことになりそうですよね。

——IHIステージアラウンド東京で、客席からご覧になってみた感想はいかがでしたか。
いやあ〜、面白かったですよ。ちょっと、映画を観ているみたいな感覚もありました。そして舞台転換のための時間がないおかげで、ずっと繋がっていられるじゃないですか。その感覚というのはほかの劇場では得られないことでしょうしね。まだまだ可能性のある劇場だなとも思いました。『髑髏城〜』を経て、『メタルマクベス』はさらにその経験を活かし、またお客様により楽しんでいただけるような演出になったらすごいだろうな、と思っています。

——そして松也さんのお相手、disc2でランダムスター夫人を演じるのは大原櫻子さんです。どんな印象をお持ちですか。
可愛いですねえ〜。若くてね。いいんですか、僕の奥さん役で?と問いたいくらいですよ(笑)。ですけれども、あの役はマクベス夫人の役まわりですから、ある意味マクベスよりもすごい役だと思っていて。精神的な体力を使いそうじゃないですか。ひとりで狂喜乱舞しなきゃいけませんし、大変ですよね。だけどマクベスひとりではなくて、あくまで夫婦で堕ちていくというところも重要ですから。それでいて最後まであのふたりの愛は消えないというところもひとつの見どころだと思うんです。年齢は結構離れていますが、そのへんのことは一切気にせず(笑)、現場でいい夫婦を作れたらいいですね。

——そして今回は3組の『メタルマクベス』が誕生することに関してはいかがですか。
『髑髏城〜』シリーズでもいろいろなパターンを拝見できましたけど、同じ作品でも演じる人によって印象って全然違ってきますからね。きっとお互いに意識はするんでしょうけど、僕としてはあまり意識し過ぎないよう、まったく違う作品を作るつもりでやっていけたらいいと思っています。各disc、それぞれの面白さを味わっていただけるようにがんばりたいですね。

——では、お客様に向けて、ぜひ松也さんからお誘いメッセージをいただけますか。
『メタルマクベス』disc2では僕を始め、いろいろな個性を持った役者さんが集まっていると思いますので楽しみにしていてください。そのメンバーを、宮藤さんの脚本といのうえさんの演出で一体どういう風に仕上げてくれるのか、僕自身も楽しみです。またdisc1、disc2、disc3が、まったく違う作品になるように、僕たちもがんばりますので、ぜひとも何度も劇場に足を運んで『メタルマクベス』の世界を深く堪能していただきたいなと思います!