ブログ

撮影レポート 岸井ゆきの 篇

2017.09.08

IHIステージアラウンド東京にて、“花・鳥・風・月”と4つのシーズンで脚本・演出・キャストを入れ替えながら上演中の劇団☆新感線『髑髏城の七人』、その第3弾となる“Season風”で<沙霧>役を演じるのは岸井ゆきのさんです。テスト撮影のためにひととおり衣裳を着けた段階で、小道具の高橋岳蔵さんから「肩にカメを載せよう!」と提案があり、試しに載せてみたところ「アリ!!」「カワイイ!!!」「ホビット族みたい!」「雲南省から出て来た感もあるね」などなど、みな口々に感想を言い合っていると、その様子を見守っていたいのうえひでのりさんも「この、おにぎりが似合う感じがなんともいいねえ!」と大満足のご様子。

picture

この“Season風”の沙霧の衣裳はセパレートになっていて、下はショートパンツ。つまり、チラッとお腹が見えるスタイルです。衣裳の前田文子さんによると、今回の沙霧の衣裳は中国や中央アジアの山の民、山岳地方の活発な女の子をイメージしたとのこと。素材はコットンの生地を裂織(さきおり)風に仕立てたもので、ブルーをベースにした中に朱赤の帯や腕の紐などのアクセサリーが効いています。

picture

撮影が始まると、カメラマンの野波浩さんが「もしかして、息、止めてない? リラックスしてね」と声をかけると「止めてないですー」と岸井さん。そのタイミングでパシャ!と撮った1枚がモニターに映し出されるとたまたま目を瞑ってしまっていて、その様子を見に来たスタッフたちはそのキュートな表情に、ついつい爆笑。

picture

また岸井さんが実は器械体操経験者で、キックボクシングもやっているという話になり、「Y字バランスやバック転をやってもらおうか?」という意見も出始めました。どうやら今日は、なかなか動きの激しい撮影になりそうです。野波さんも「腕の紐のせいかもしれないけど、なんだかムエタイ選手みたいにも見えてきたな」と笑っています。

picture

「これだったら誰にも負けない!って顔をしてみて」と言われ、ちょっと困った様子の岸井さん。すると今度は野波さんだけでなくアートディレクターの河野真一さん、小道具担当の高橋岳蔵さんらが口々に「純粋だけど生意気」「ちっちゃいけどいっちょまえ」「自然の子で本当は賢い、だけど意外にちょっとバカなところもあるかもね(笑)」など、それぞれの抱く沙霧のイメージをあげて岸井さんにアドバイス。

picture

次のカットでは小道具として短刀、ウメガイを使うことに。セットチェンジをしている待機中には、腕をうーん!と伸ばしたり、柔軟運動、ストレッチをしたりする岸井さん。そのうち短刀を手にニコニコしがら自分の腕をツンツンし出して、その明るくいたずらっぽい笑顔に「なんだか癒されるね……」とスタッフたちからも頻繁に笑顔がこぼれる撮影になっています。

picture

さらに、この撮影でも風を効果的に入れようということで、特殊効果の南義明さんとヘアメイクの宮内宏明さんという、いわば新感線の撮影においては“風のプロ”と言うべきお二人が、サーキュレーターとブロワーを駆使してここでも絶妙なテクニックを披露。そして岸井さんはこのあとも、床にゴロンと寝っ転がったり、膝を抱えて座ったかと思えばそこからすぐにジャンプさせられたり、すぐさま短刀を構えたり、そう広くもないスタジオ内で全速力で走らされたり。すると再び照明の位置などを変更している待機中、岸井さんがふっと無意識に足をクロスして、スッと立った瞬間、「それっ! そのポーズのままで、ここに風入れて!!」と河野さんが叫び、すかさずシャッター音が響き始めます。「今の笑顔よかったな〜!」と野波さんもにっこり。

picture

無事に撮影が終了した後、岸井さんにも劇団☆新感線初参加の意気込みや、『髑髏城の七人』Season風への意気込みなどを伺ってみました。

——何度もジャンプさせられたり全力で走らされたり、大変な撮影でしたね。こういった長時間の撮影もきっと初めての経験で驚かれたのではないかと思いますが。
そうですね、確かに驚きましたが、私にまだまだ至らない点が多いなぁと改めて感じました。

——ふだんはリクエストされなさそうな動きまで、求められていましたね。
いろいろと初体験のことばかりでしたけど・・・でも楽しかったです(笑)。

——今回、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』へ出演するというお話を聞いた時、最初はどう思われましたか。
まず、客席が360°回転する新しい劇場で、同じ演目を4回もやるというのはものすごい試みだなと思いました。それも全部キャストが違うということは、沙霧を演じる人が4人もいるというわけですから。どうしても比べられてしまうんだろうなと思って、かなりプレッシャーを感じました。でもそれぞれ脚本と演出が変わるとも聞いているので、どういう風に変化した『髑髏城の七人』が生まれるんだろうと、とても楽しみにもなりましたね。私、以前に『髑髏城〜』は何作か観たことがあるんです。

——ご自分が出ることが決まる前から?
はい。実は母が劇団☆新感線を昔から好きだったんです。

——そうだったんですか。じゃ、劇場でもお母様と一緒に観ているんですね。どのバージョンの『髑髏城〜』を観たか、覚えていらっしゃいますか?
劇場で観たのは、2011年版の『ワカドクロ』です。ゲキシネでは『アカドクロ』と『アオドクロ』を見たことがあります。

——では、12歳の時に『アカ』と『アオ』を観たということになりますね。そうやって子供の頃から観ていた作品に、ご自分が出るということ自体についてはいかがですか。
本当にまだ不思議な感じです。こうやって撮影をして、ようやく実感が湧いてきたような。あとは、やっぱり母が一番喜んでくれるだろうなって思いました(笑)。

——お母様はどんな風におっしゃっていました?
「嬉しい!!!」と興奮していました。たぶん、私が出ていなかったとしても今回の『髑髏城の七人』は観に行っていただろうなと思います(笑)。

——沙霧役は今日の撮影からも連想できるように、とても身体を動かさなければいけない役でもありますが。キックボクシングをやられているとか器械体操出身だとも伺いましたが、体力面での自信のほどはいかがですか。
器械体操は小1から中3までやっていて、その時は本気で取り組んでいたんですが、その後のブランクもありますし。キックボクシングも含めて、今は趣味みたいな感覚になっていて。だから新感線の舞台に向けて、改めてトレーニングを始めたところなんです!筋肉ってすっごい素直で、少しずつでもちゃんとついてくれるんです。それが今はとにかく楽しくて。しばらく続けて、なんとか稽古までに基礎的な体力を復活させる予定でがんばっています。

——今回のカンパニーについてですが、岸井さんの目にはこの顔ぶれはどう映っていますか。
最初にキャスティングを聞かせていただいた時には、まるで映画みたいだなと思いました。松山(ケンイチ)さんにしても向井(理)さんにしても(田中)麗奈さんにしても、みなさん昔から映画やドラマで何度も拝見していた方々ばかりで、それぞれにすごく濃い印象があります。そんな方々が集まって、果たしてどんな化学反応が起きるのかすごく楽しみです。この間、“Season花”の舞台を観させていただいた時、カーテンコールが本当に素晴らしくて。それこそ、映画のエンドロールみたいでした。「これが私たちの組になった時は、どうなるんだろう」と、ものすごくワクワクしながら観ていたんですが、きっとあの“Season風”のキャストなら、また全然違う雰囲気の作品になりそうですよね。

——“Season花”をご覧になっている時は、やはり自分があそこに立つんだと思いながら観られたんですか。
『髑髏城〜』にはエピソードがいっぱいあって、どの話が描かれるかで違いが出てくる気がして、今回はどういう『髑髏城〜』になるんだろうと思いながら観ていました。あと、役者さんたちはどこから出て来てどこへハケていくのかが、客席から観ているだけではちょっとわからなくて。それに360°の劇場ということは、上下(かみしも)ってどうやって決めているのかな、とか。

——上下というより、東西南北でエリアを分けているようですね。
東西南北なんですか?!びっくりしました(笑)。

——大勢スタッフがいて誘導してくれますから、大丈夫ですよ(笑)。
そうなんですね。それが少し不安だったので、ひとまず良かった〜! それにしても、あの舞台の上から見える景色って、どんななんだろうということもとても気になります。なにしろお客さんたちが回ってる姿を見られるのは、あそこに立っている人だけなんですものね! もう、今からとにかく本番を迎えるのが楽しみで仕方がないです。ちょっと、まだ怖いですけどね(笑)。