INTERVIEW[インタビュー]

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泉谷しげる(上杉博史役)

(写真) ―― 演じられる「上杉博史」という役について教えてください。
警察という立身出世を第一にしている組織の中で、まさに「たたきあげ」という存在だね。
上杉博史は、いくら平刑事とはいえやっぱり警視庁の人間で、所轄の新参者である加賀には負けたくないっていう気持ちはある。
本来、警察は上下関係が凄く厳しい世界で、上杉は加賀に対して「気にしてない」といいながらも「このヤロー」って思っているよね。でも、いろんな事件を解決していく加賀を見ていると、「個人として」認めていくんでしょうね。

上杉は禁煙しようとしているみたいなんだけど、自分自身はやめないと思う。
最近は禁煙・嫌煙ブームみたいになっているし、身体に悪いなんてことは百も承知だけど、世の中の皆が判で押したみたいにいい子ばかりになってたら、まるで制服を着ているように区別がつかなくなってしまうよね?
俺は、酒はあまり飲まないし、タバコくらいは吸っていてもいいんじゃないかって思っています。だって、いい子になっちゃったら、俺っぽくないだろ?自分に限らず、どこかでダメな部分がある方が魅力的だし、いろんな人がいた方が、世の中面白いよね。

(写真) ―― 共演者の皆さんとは、現場でどんな雰囲気ですか?
ほとんど過去に一緒にやったことがある人ばかりだから、気心知れててやりやすいですね。みんな芸達者で、若いヤツも含めて予想もつかない切り返しをされたりして面白いです。
この「新参者」は、見ごたえのある「大人のドラマ」ですね。クイズ番組やバラエティが好きな人もいれば、若い子の出ているドラマがいいという人もいる。そんな中で、こういうドラマを楽しみにしてくれてる視聴者がたくさんいるから、応えてやらなきゃいけない。しかも、そういう人たちって目が肥えてるから、こっちもしっかり作らなきゃいけないですね。

俺は役作りなんてしないで現場に行って、監督や周りの仲間たちとやりあいながら芝居を作っていくから、こういうミステリーものの場合、最後まで犯人を知りたくないんです。テレビを見てくれてる人は、初めてその話に触れるわけだし、演じている方が先読みしすぎて、こなれた雰囲気を出してるとつまらないじゃないですか。だから俺は、セリフも覚えずに現場に行ってます(笑)。

―― ドラマ「新参者」の見どころはどこでしょうか?
「鬼平」の舞台にもなったような、お江戸の歴史ある町を舞台に、しぶい刑事ものをやるなんて、原作者・東野さんの目のつけどころに脱帽しましたね。登場人物の底辺までしっかり描かれていて、演じているほうも自然と役に入り込んでいけています。
毎回いろいろな登場人物が出てきて、人形町を舞台にした謎を、加賀が紐解いていく。でも、その謎っていうのはリアルなものが多いです。これはもちろんドラマだけど、自分に起こってもおかしくないような出来事で、見ている人たちは、身につまされるんじゃないでしょうか。そういう出来事を見ると、あばいていいのか、という「人として」の葛藤が自然と生まれてきます。だって、それぞれの家で起こっているような事件だったりするから、上手に解決してやらないと、ただの弱いものいじめみたいに見えてしまうからね。
下の立場から、上の権力に対して向かっていったりするのは楽ですよ。「なにくそ!」って思って、負けたくないですよね?でも、「警察」という上の立場から「町の住人」のところに入っていくのは難しい。そこを、加賀がうまいこと解決していく訳だから、見ていて少しのハラハラ感と、見終わったときにいい気分を味わってもらえれば嬉しいですね。


役者っていうのは、例えば作品が出来あがったときとか、とても達成感を感じるけれど、やっぱり「いい作品」に当たったときは、その気持ちは余計大きい。だって、いい作品、売れてる作品に出演していたら自慢したくなりますから。
いい作品を産み落とすのが難しい時代になってきていると思うけど、やってる方が感動してなかったら、伝わらない。撮影現場で、監督から「OK」をもらうのって実は大変なことで、誰か一人だけが良かったり、ダメだったりじゃいけない。言葉を変えると、NGを出させてしまった周りも連帯責任なんです。だから、俺がセリフを間違えてNGになってしまっても「NG出させたお前が悪い」ってことになる(笑)。なんでもそうだけど、あまり多くのものを背負っちゃいけない。きつくならないようにラフにやっていくのが、長続きする秘訣だと思います。
そういう工程を経て、「よく出来あがったな!」って皆で喜べる作品が「いい作品」だと思うし、この「新参者」は、間違いなくそういうドラマですね。

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