過去の議事録

2010年4月26日(月)開催 第81回TBSラジオ&コミュニケーションズ番組審議会より
「久米 宏 ラジオなんですけど」 3月27日放送分について

出席者(敬称略)

委員長山野 勝 
副委員長田中珍彦 
委員宮台真司  萩原健太 野地秩嘉 谷川真理 栗原 学

局側出席者

 加藤 社長

 入江 取締役

 水野 番組審議会事務局長

 中村 プロデューサー

委員の主な発言

◇この日のテーマは「朝食」でしたが、岩村さんの本からの現状説明や、手紙やメールでの「我が家の朝食」の実例がたくさん紹介され、日本の家庭の食事の現状がよく分かりました。

◇幼稚園の子どもたちのお弁当事情は大変興味がありました。今お母さんたちは子どもが全部食べきれる量しか入れない、しかも好きなものしか入れないという話や、そうしないと自分にストレスがたまってしまうという話は、現状がこうなっているというテーマを投げかけてくれて、大変分かりやすい番組になっていたと思います。

◇ゲストコーナーは、徳川19代目の徳川家広さんという翻訳家の方の話でした。「バブルの興亡」という本を出版された直後だったので、経済状況と今後の見通しという話の向きになったのは企画意図としては分かるのですが、徳川家の中の話をもっと聞きたかったというのが正直な感想です。徳川家の中で徳川の歴史はどうやって言い伝えられてきているのか、一般人とは違う家庭の状況とか、もう少しその辺の話を聞くことが出来たら、さらに面白かっただろうと思いました。

◇この番組は、聴取者から寄せられる声の質が高いというか、内容のあるものがいっぱいあって、これがこの番組の力であり、久米さんの力だと思いました。

◇安定感のある素敵な番組だと思いました。久米さんが近頃の若い者に対して小言を言うおじいさんみたいな立ち位置を取っていて、これはこれで面白いと感じました。親ですら子どもに対して小言を言わない、うるさいことを言う近所のおじさん、おばさんもいなくなった、こういう時代に、AMラジオの果たす役割のひとつとして、この方向性はありではないか、と素直に聞けましたし、とても面白かったです。

◇アシスタントの堀井さんのちょっととぼけた受け方が、この番組をさらに良くしているのではないでしょうか。パートナーシップみたいなものの感触がつかめて、非常にいいコンビネーションだと思います。

◇久米さんはインタビュアーとしてもすぐれているように思われていますが、実は相手が言いたいことを聞き出すことがすごく下手なのではないでしょうか。今回のゲストの徳川さんと話しているところも、久米さんが喋っているという印象しかないのです。

◇今のインタビュー下手とも関係するのですが、久米さんは内輪を作るのが上手な人です。インタビュアーも、内輪というかインナーサークルの意味論というか、雰囲気にかかわる部分でしか何かを引き出してもらえない部分があります。別の言い方をすれば、内輪乗りのグループ感に関係する範囲でしか共鳴し合ったりシンクロしたりしないように、うまくコントロールされている。これは非常にいいと思います。「ラジオなんですけど」というタイトルに相応しい、まさにラジオならではのコミュニケーションで、おそらくテレビでそういうことをするのは極めて難しいと思います。

◇久米さんの話術とキャラクターというものが2時間ぶっ通しで、これが非常にフラットな感じで終わっていたように思いました。余りにも平らに引っかかるところもなく聞いてしまったというのが全体の感想でした。久米さんの性格からいって、もう少し踏み込みたかったのではないかと思われるところが何ヶ所かありました。全部ニュートラルに出して、聞き手側でチョイスしてそれをヒントにして、というのがこの番組の方向なのかと思いながらも、そこまで来たらもう一歩踏み込んでもらいたいと思いながら聞きました。久米さんの話の中にそういうものが出たとしても、それは反面教師的なヒントになり得るかもしれないので、もう少し入ってもらっていいのではないかと思いました。

◇久米さんがノリノリで喋ってみんなが巻き込まれたときには、いろいろな話題が比較的人畜無害になるという印象はあります。そういう印象から全体的にフラットな感じを受けるのかもしれません。「ああ面白かった」と終われるところが、久米さんの持ち味だと思うので、私はそこは批判的ではないのです。久米さんの芸を楽しむというところを抜いては、久米さんの番組はありえないとつくづく思います。そういう久米さんの芸がよりふんだんに味わえればいいのではないでしょうか。

(TBSラジオ番組審議会事務局)