木曜よる9時
前々回、前回のレポートに引き続き、玉森くんの稽古初日の様子をお伝えします。
さてさて、いよいよお稽古場の舞台上でのお稽古開始。
典幸先生 「本来、舞台に上がるときは下手(舞台を客席から見て左側)から上がります」
玉森くん 「はい」
典幸先生 「そして、右足から。それを自然と出来るのがベストです。直前で歩幅が合わなくて、バタバタしてしまわないように」
玉森くん 「右足から…」(とやってみる)
典幸先生 「下手からおりる場合は…」
玉森くん 「左足から降りる。上手から降りるときは右足から」
典幸先生 「そうです。緊張しなくて大丈夫ですよ」
玉森くん 「緊張してしまいます…」
と玉森くん、まずは舞台に上がる動きを自然とできるようにお稽古。
これが、“意外と難しい”らしく、「舞台が近づいてくると“イチ、ニ、右足、左足、右足…”と数えてしまうんです」と玉森くん。自分の歩幅を計算したり、右足から上らなければならないなど、決まりがあって動くことって日常生活では余りないですから…慣れるまでは大変そうでした(6月30日現在、玉森くんは自然と右足から舞台に上がっています…すばらしい!)
そして、舞台に上がり…。
典幸先生 「では、“気をつけ”の姿勢ですが、指を開かずに揃えて、女形であれば親指を中にいれてしまう人もいますが、男の役の場合は、手を自分の太ももの前、骨盤に親指をそわせます」
玉森くん 「骨盤に親指…」
典幸先生 「そうです。そして、肩に力を入れず、右足を半歩引いて、そのままで座ってください」
玉森くん 「右足を半歩引いて、座る……」(とやってみる)
典幸先生 「そうです。今の動きがベストです。失敗例は、右足を引き過ぎると、左足のかかとが上がらず、忍者のような座り方になります。半歩引いて、両方の足のかかとを上げてひざを床について座ります。また、立ち上がるときは、同じことを逆で行います」
玉森くん 「はい…半歩引いて、座る…。立ち上がって、半歩引いて?あれ?」
典幸先生 「お尻を出さない。まっすぐ、真上に吊られているような感じで」
玉森くん 「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
と、なんとか立ち上がる玉森くん。
玉森くん 「めちゃくちゃ、難しいです…」
典幸先生 「これも自然にできるようになれば、いいですね」
この立ち上がる動きですが、普段使わない筋肉を使うため、ぎこちない動きになってしまい…「難しい!悔しい!」と玉森くん。ちょっと練習しただけで出来るようになるわけではないと分かっていても、思うように体が動かないことで、玉森くんは悔しそうにしていました。底後も練習を続け…続いてはお辞儀の練習へ。
典幸先生 「まず、扇子ですが、直接前に置いても大丈夫です。丁寧にするなら、右手で腰帯から抜くと自然と側に手がきますよね。それを(反時計回りに)回しながら自分の前に持ってきてください」
玉森くん 「床をひきずっても大丈夫ですか?」
典幸先生 「はい」
玉森くん 「前に持ってきて…」
典幸先生 「そうです。手前においてください。そして、お辞儀。胸を張って、腰を入れて、床と体が平行になるように、おなかに力を入れて」
玉森くん 「はい」(やってみる)
典幸先生 「あごが引きすぎて背中が丸くなったり、顔だけ残してはいけません」
玉森くん 「はい」(やってみる)
典幸先生 「3秒ほど頭を上げる。次に顔を上げるときは、自然と体全体を伸ばして、最後に背骨をキュっと伸ばす」
玉森くん 「うっ!」
典幸先生 「着物を着ているときに、アゴか上がりすぎると、間がぬけた感じになります」
玉森くん 「う〜〜〜」(と苦い顔)
典幸先生 「肩に力が入りすぎています」
玉森くん 「はい」
この所作練習では、“腰を入れて”“背骨を伸ばす”など、普段はあまり意識しない動作が多く、とっても辛そうな玉森くん。
典幸先生 「座って、お辞儀して、立ち上がって…」
玉森くん 「は、はい」
典幸先生 「立ったときは、骨盤を少し引くイメージ。おへそを下に向けて、胸をはる」
玉森くん 「はい」
典幸先生 「そうそう。これが楽にしている姿勢です」
玉森くん 「これが、楽な姿勢ですが…(汗)」
と、さらに辛そう。着物を着ているときは、おなかを出すような姿勢で立つとキレイに見えないそうで、“骨盤を後ろに引くイメージ”だそうです。また、骨盤を後ろに引き、背骨を寄せて、肩を落とすと女形の立ち姿になるとのこと!そうすると首が長く見えて女性らしいフォルムになるとのことですが…意識しても簡単に出来ないです(汗)。玉森くんは典幸先生をお手本に、練習を続け…。
典幸先生 「ここまでで、質問あります?」
玉森くん 「分からないことだらけです…」
典幸先生 「もう1回座って、お辞儀して、立ってみましょう 」
玉森くん 「はい」(やってみる)
典幸先生 「そうそう」
玉森くん 「うっ。(立ち上がるのが)難しい……」
典幸先生 「がんばって。立ち上がった時、少しだけ足を開いて。足を閉じると女形です」
玉森くん 「はい」
典幸先生 「ここまで大丈夫?」
玉森くん 「大丈夫じゃないです(苦笑)」
典幸先生 「そうですね。動作を行うとき、これは普段の動きと違うどな、使っている筋肉が何か違うな…と感じたら、それが正解である可能性が高いです。これが約束事としてあると思っておいていただければ、大丈夫ですよ。本当は、何年も何十年もかけて身につけていくことですから」
玉森くん 「はい。がんばります」
と、玉森くんと典幸先生のやりとり。
「大丈夫じゃないです(苦笑)」という玉森くんの言葉は、“所作を完璧にマスターしたい”という玉森くんの真剣さと悔しさから出た言葉だと思います。身体に覚えこませるため、実際に動きながらお稽古は進められました。
さて、その後も“通常の歩き方”、“早歩きの場合”など、細かやかなお稽古が続けれら他のですが…それはまた後日お届けします。
という感じで、このようなお稽古が3月中旬から現在もつづけられています。ドラマのテーマのひとつでもある“歌舞伎”がどのように表現されているのか…みなさん、楽しみにしていてくださいね。