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2009年5月23日(土)よる7時56分スタート(初回100分SP)

インタビュー

Vol.01 木村拓哉 (九十九龍介 役)

“ミステリー” や “サスペンス” はお好きですか?

“ホラー” はちょっと苦手ですが、“ミステリー” や “サスペンス” は、見るのも演じるのも好きですね。こういったジャンルの作品において 「演じる側」 というのは、視聴者の方に向かってイタズラ心を込めて真剣にワナを作るという作業になるので、自分が仕掛けたワナに誤って引っかからない限り (笑)、相当楽しいと思います。特に今回は、台本が相当面白いんですよ。普段、あまり本を読まない僕でも、文章の世界観だけで充分楽しめましたから。だから、それに肉付けをして三次元にしたときつまらなくなっちゃうと自分もがっかりなんで、プレッシャーも感じています。

総理、財閥の御曹司、レーサー、検察官… これまでさまざまな役を演じてこられた木村さんですが、今回の脳科学者という設定についてはどう感じていらっしゃいますか?

脳科学者という役の設定よりも、まず舞台となる科警研という部署を扱うということ自体が 「新しいな」 と思いましたね。そこで働く人物を演じることになった僕ですら、未だに警察の中にそういう組織が実在していて、実務していて、それがどういうふうに捜査に影響して… っていうのがなかなか匂ってこないですから… (笑)。それに加えて脳を扱うとなると、どんな作品になっちゃうんだろうって思いましたね。“脳” の世界もまだまだわからないことだらけのジャンルのようですし、ある意味どちらも開拓しがいのあるテーマかなというふうには思います。

九十九という脳科学者を演じるにあたって、工夫されている点などがあれば教えてください。

これは僕だけの力では全然表現できないことなので、監督や共演者と相談しながら取り組んでいます。例えば、九十九の他人との距離感。オンエアを見ていただくとわかると思うんですけれど、ハンパじゃないですから!気付いたら 「どこを見ればいいんですか?」 っていうぐらい至近距離に相手の顔があって、鼻と鼻の間に太陽… なんていう構図を要求してきますからね、福澤監督は (笑)。それから、九十九はポケットの中に生き物を入れているんですよ。常にじゃないんですけれど、普通の人とはちょっと違ったところを表現するため、そういう描写を取り入れてみたりとか…。

ポケットの中に、生き物…。相当変わった人物ですね (笑)。

今まで経験させてもらった役の中では、かなり変人度が高いほうだと思います。 近くにいたら !? …… 「月イチでなら、一緒にメシ食いに行ってもいいかな」 ってぐらい、ちょっと苦手なタイプかもしれない (笑)。でも、そういう風変わりな人を演じるチャンスってなかなかないじゃないですか。だから、今回は見てくれる人にとってなんかちょっと気になる人になりたいです。 この間、スポーツ紙には 「変人」 と大きく書かれましたけど (笑)、今回に関しては褒め言葉として受け取っています。

ちなみに、「ポケットの中に生き物」 というのは、どこから出てきたアイデアなんでしょうか?

ジャイさんとチームを組むときはいつも、どこか煙草を吸いながらラフな打ち合わせをするんですよ。今回も、それこそ衣装にしろ髪型にしろ、「この部分、どうする?」 みたいな感じでいろいろとアイデアを出し合ったんですね。作品の大まかな流れは決まってきたけれど、そこに組み込むパーツが全然足りていなかった時、その “ダベリ” の中で、九十九の 「ちょっと変」 っていう部分をどういうふうに表現したら面白いかなぁという話になって…。
そんな時、これは本当にたまたまなんですが、バラエティー番組のゲストで火野正平さんが来られて、何の前触れもなくポケットからヒキガエルを出されたんですよ。それを見たときに、「あ、これストレートに変だぞ」 って (笑)。楽屋でお話させていただいても、出演されている作品を拝見しても、本当に魅力的で色気も感じる火野さんのような素敵な方が “ポケットからカエルを出した” という、いい意味でも悪い意味でも衝撃を受けた出来事をジャイさんにふと話してみたら、ジャイさんが無言でこっちに OK の拳をむけてくださって。それが脚本の蒔田さんに伝わり、それを受け取った蒔田さんがこういった形で設定を付け加えてくださったんじゃないかなと。
… とにかく変わった人物です、九十九は (笑)。

ファッションセンスも… ?

あぁ、微妙ですよね。そのあたりに関しても、本当にいろんなアイデアがあがったんですよ。例えば 「ケミカルジーンズを履いてみたら」 とか、「こんなのもアリなんじゃねーの」 っていうキーワードはたくさん出てきたんですけどね… (笑)。
自分を含め大抵の方は、外出するとき、なにかを着て靴を履き、鏡を見て “今日の自分” の姿を確認した上で表に出て行くと思うんですけれど、男性だったら 「チャック開いてないかな」 とかチェックをしますよね。… 九十九には、そういう感覚が一切無い感じです (笑)。人にどう見られるかなんて、彼は一切気にしていないんだと思います。
九十九は、起きたまま洋服を着て外に出るので、スリーピースのスーツの下に、パジャマをインしているんですよ (笑)。衣装合わせで初めてこの格好に身を包んだ時は、「本当にこれでいいのかなぁ」 ってすごい違和感がありましたけど、今では一切気にならない。そのスタイルで撮影を重ねるうちに慣れてきちゃったんですよね (苦笑)。

そんな九十九龍介の魅力とは !?

彼は、自分の知りたいと思うことに対して、異常なまでに貪欲なんですよ。その部分が魅力的かな。「なにもかも知りたい」 という欲求が、彼のエネルギー源になって脳みそに指令を与えているんだと思いますね。僕も脚本を目にしてドキっとしたんですけれど、実は人間って脳みその 5% しか使いこなせていないかもしれないんですって。きっと九十九が知りたいところって、その残りのパーセンテージの部分だと思うんですよ。僕はその事実を知った時、その残りのパーセンテージがとても魅力的に感じられて。九十九のその貪欲なまでに知りたいという欲求が、いろんな人やケースと向き合うことになり、結局は事件解決に役立っていく…。警察ですら手の及ばない事件を解決していくのに、彼を突き動かしているのは 「善か悪か」 とかそういうことではないんですよね (笑)。

このドラマには、個性的な役者の方々が多数ご出演されます。現場の雰囲気はいかがですか?

いや、もう初日からすごい濃くて楽しいですよ。個性が本当に溢れているというか…。なんだか毎回、「チケットのいらない遊園地」 に出かけて行く感じですね (笑)。
ほんと半端じゃないですよ、控え室なんて。「ちょっとすいません、雨が降ってきたので “雨待ち” させてください」 ってスタッフに言われて戻った部屋の中に、香川 (照之) さんがいて、(市川) 海老蔵がいて、その斜め前に (水嶋) ヒロがいて…。かと思ったら、“何を言い出すんだ君は” っていうような (綾瀬) はるかちゃんがいたりもしてね。

スタッフについては、いかがですか?

『華麗なる一族』 や 『GOOD LUCK !! 』 などで、過去色々お世話になった方もたくさんいらっしゃるんですけれど、今回 「はじめまして」 っていうスタッフの方も何人かいたりしますね。で、やっぱり 「はじめまして」 っていうのってすごく大きいじゃないですか。だから、その人たちのこともすごく気になっていたんですが、接してみたらとても素敵な人たちだったので嬉しかったです。
そういう人たちと一緒に仕事ができるなんて、すごいラッキーだなぁと思いますね、僕は。

この作品は、視聴者の方が自分の脳について非常に興味を持つような内容になっていると思うのですが、ご自身では右脳と左脳、どちらをより駆使していらっしゃると感じますか?

… 右脳だと思います。こう、いろいろ辻褄を合わせてなにかをプランニングしたりとかっていうのがわりと苦手なタイプだと思いますし、その場その場で生きてるっていう感覚が強いから。
でも、台本を開いてセリフと対峙しているときは左だと思うんですよ、すごく。それこそ九十九になるっていう作業には多分、相当左脳を使ってますね。で、実際に撮影の現場に入って、動いたり喋ったり見たり驚いたりっていう時には、左から右にスイッチングしてるんじゃないかなぁって。
でも、右とか左とかプログラミング的なことだけではなくて、動物的な部分… 例えば人を好きになるとか、そういう部分もすごく魅力的な人間の本能だと思うし、そういう部分は大切にしながらも演じていきたいなと思いますね。

では最後に、土曜8時という枠に挑戦されることについてお聞かせください。

土曜日の8時といったら、僕らの世代からすると 『8時だョ!全員集合』 の時間なわけですから、その時間に自分が関わる作品が放映されるというのはとても嬉しいですね。自分も子供の頃、この曜日のこの時間には絶対テレビの前にスタンバって、「これからなにが起きるんだろう」 っていつもワクワクしていたんですよ。それぐらい、土曜の8時というのはかつての僕にとって楽しみな時間だったんです。過去の自分と対峙することはできないけれど、この 『MR.BRAIN』 という作品は、あの頃の自分の興味を引くようなものにしたいと思っています。

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