過去の放送内容
2019年10月27日放送
特集
関東No.1イケてる私鉄「東急」登場!
なぜ沿線の街がおしゃれなの?渋谷ってどうなるの?
ゲスト
東急株式会社取締役会長 野本弘文さん
番組内容
今回のテーマは「東急」
渋谷を中心に、東京・神奈川に全8路線を運行!
1日300万人を輸送する儲かり鉄道会社!
その売上げは、およそ1兆1千億円!と関東私鉄7社の中でも、堂々のトップ!
でも…鉄道路線の全長となると、なぜか第5位。わずか104.9キロと短いんです!
一体なぜ、短い路線なのに、儲かるのでしょうか?
そこには、皆さんが目にしているのに
実は気づいていない!?東急の儲かり戦略があったんです!
路線が短いのに儲かる秘密は…「乗り入れ」!?
関東私鉄7社の中で、売上ナンバーワンの「東急」
持ってる路線の長さだと5番目なのに、なぜ、そんなに儲けられるのでしょうか!?
広報の加藤さんに話を伺いました。
加藤さん:「乗り入れ」をうまく活用して利便性を高めているからです。
「乗り入れ」とは、鉄道会社が他社と線路をつなげて、お互いの路線で列車を走らせること。
これが特に凄いのが「東急」!
一体どれくらいなのか、東横線・渋谷駅のホームで待っていると…
加藤さん:あちらは「みなとみらい線」の車両になります。
入ってきたのは、東急ではなく、Mのマークの「みなとみらい線」
さらに!その隣には…
これまた、東急ではなく「西武鉄道」の車両が!
さらに、そのあとやってきたのが…
またまた東急ではなく「東武鉄道」の車両!
なんとこの東横線、「東急」の他に、「東京メトロ」「東武」「西武」「横浜高速鉄道」と、4つの鉄道会社が乗り入れてるんです!
そして、この「乗り入れ」が増えれば増えるほど、なぜ儲かるのかというと…
会社ごとにバラバラだった路線が、線路をつなげることで、お互いのお客さんが、どんどん行き来できるから!
加藤さん:2012年度が乗り入れの前になるんですが、そこと比較して、2018年度は、1日9万4千人、輸送人員が増えておりますので、それだけの効果があったのかなと思います。
こうして、どんどん「乗り入れ」を増やすことで、「関東私鉄NO.1」の地位を確かにしている東急ですが、この「乗り入れ」が増えると、現場はやっぱり大変!
一体、どのへんが大変なのでしょうか…。
渋谷駅に、これから東京メトロ副都心線に乗り入れる列車が入ってきましたが…
目の前で運転士が交代!
一体、なぜ交代するんでしょうか?
元住吉電車区主任運転手の柏原拓也さんに話を伺いました。
柏原さん:会社が違いますので交代します。
そう「乗り入れ」の場合、列車はどんどん入ってくるのですが、運転士さんは乗り入れられない!
各路線を、各社の運転士さんが、それぞれ運転しなければいけないんです。
そして交代するだけでなく、ある作業が…
何をしているんでしょうか?
その秘密を探るべく、車両のメンテナスを行う東急の検車区へ…
運転士さんは何をしていたのでしょうか?
元住吉検車区首席助役の長谷川賢昭さんに話を伺いました。
長谷川さん:ここの運転台は他社もみんな使うので、東急線区間は各社によって鍵が違います。
この鍵を使うことによって各社の車両線区の認識をしています。
そう。電車を動かすシステムは、各社の区間ごとによって、違うんです!
例えば…前後の車両間隔を管理する安全装置など…
そのため、東武東上線を走る場合は、東武鉄道の鍵をさして「東武鉄道」仕様に!
副都心線を走る場合は、東京メトロの鍵を使い、「東京メトロ」仕様に切り替えるんです。
長谷川さん:運転士さんの交代時間をスムーズにするために鍵だけにしました。
1つの電車を5つの路線に走らせるため、車両の下の部分には、乗り入れ5社分の装置が備え付けられ、整備士の皆さんは、日々その管理に目を光らせているらしい。
もちろん、大変なのは機械だけではありません。
5つの会社の電車を運転する運転士さんには、こんな苦労が…
柏原さん:5社の車両を運転させてもらってます。各社ごとに、車両の色々な特性、癖があるんで。例えば列車の加速がいい悪いもありますし、機器点検も物は一緒なんですけど、付いてる場所が違いますのでその場所をちゃんと覚えなきゃいけないということになります。
そう!自社の車両それぞれの癖だけでなく、乗り入れ4社の車両、すべて癖を把握しなければいけないんです。
柏原さん:毎日、日々努力をして勉強している次第でございます。
なるほど、ご苦労様です!
さて、乗り入れる、となると、もうひとつ大変なのが、電車のスケジュール、いわゆる「ダイヤ」の管理。
今回、場所は絶対に明かさないという条件で、「東急電鉄の心臓部」という、「運輸司令所」に潜入しました。
職員さん:都立大学4号踏切道。発光信号の瞬間動作がありました。現在照合しております。
職員さん:52運行Fライナー特急森林公園行き。自由が丘3分30秒の遅れで発車です。
ここでは東急のほぼ全路線、プラス、乗り入れてくる他社の電車、1日およそ4000本の列車のダイヤをすべて管理しているんです!運転司令所司令の斎藤浩さんに話を伺いました。
斎藤さん:これが列車ダイヤですね。
こちらが列車のスケジュールが書かれたダイヤグラムという運行表。
縦が駅名、横が時間軸になっており、そこに描かれている「スジ」と呼ばれる斜線が運行する電車を表しているんです。
斎藤さん:本社の運転計画課から送られてきます。
運転計画課とは、通称「スジ屋」と呼ばれるダイヤ作り専門の部署。
「乗り入れ」が多い東急の運行ダイヤは、鉄道各社と協議しながら作るんだとか。
不測の事態で変更を余儀なくされることも。
例えば、10時45分、「渋谷駅」折り返しの副都心線の電車に遅れが発生した場合…
斎藤さん:渋谷折り返しの列車が登りで遅れた場合に、当然、下りも遅れてしまうので、そうしますと、後ろの列車もだんだん遅れてしまいますので、711運行の列車、急行の59運行のあとに運転させ、ダイヤを回復させています。
パソコン上でダイヤを変更したら、運転順序が変わる、711東京メトロ車両と59東急車両の乗務員に列車無線で変更ダイヤを伝達。
そして…
斎藤さん:遅れの情報です。途中駅混雑で約2分遅れてます。
「乗り入れ」相手の東京メトロには、ホットライン電話で通知するんです。
斎藤さん:ここまでやらないとうまくいかないんです。
と、このように、儲かるけど、いろいろ大変な「乗り入れ」ですが、実は2022年に、新たに「もう1社」、増えることが決まっているんです!
それが…
「相模鉄道」!
一体どんな「乗り入れ」が始まるのかというと…
相鉄線「西谷駅」から、「新横浜駅(仮称)」を通り、東急線「日吉」駅をつないで、相鉄線と、東横線が直通運転で結ばれるというもの。
新幹線が通る新横浜駅にも行けるので、これは便利!
この新しい「乗り入れ」も期待できそうということで…
東急はますます、がっちり!!
▼スタジオでお話を伺いました。
野本会長:自社の線路は自社の責任をもって運行しなければならないんです。
加藤さん:契約結ぶのも相当、大変じゃないんですか?
野本会長:大変ですね。でもお客さんにとって何が便利かというところです。その結果として多くのお客さんが利用いただき回数が多くなれば、ちょっと割安にしたとしても結果としてはプラスになるのかなと思います。
東急のルーツは「街づくり」!渋谷が生まれ変わる!
東急、といえば鉄道の会社…。
しかし実はそれだけではない大きなビジネスが!
それは…「街づくり」。
加藤さん:鉄道はまちづくりのための1つの手段でした。
そう、東急はもともと、今からおよそ100年前に、新一万円札の顔にも選ばれた、あの渋沢栄一が設立した「田園都市株式会社」がはじまり。
この「田園都市株式会社」、目的は、都心の街の近くに緑豊かな「田園都市」を作り、そこを鉄道で結んで、それぞれ元気な街を作る!というもの。鉄道は、街づくりの一環だったんです。
こうして東急沿線に出来上がったのが、「田園調布」「二子玉川」「たまプラーザ」といった人気の街の数々。
そんな「人気のまち」を作るのに、東急がやっているのが、とにかく「街を快適に、便利に」すること。
そして、今、特に力を入れている街が…
「渋谷」!
渋谷といえば、東横線、田園都市線の出発点で、東急百貨店や、東急ハンズもある東急のおひざもと。
渋谷ヒカリエや渋谷ストリームをはじめ、渋谷駅周辺は今、東急グループの建物がどんどん増えているんです!
実はこの、ビルの作り方にも、「街を快適に、便利にする」東急の作戦が隠されているんです!
そのヒントがあるというのでやってきたのは、東横線渋谷駅。
教えてくれるのは渋谷のまちづくり担当、秋元隆治さん。
秋元さんによると、渋谷の街には、ある「弱点」があるらしい…
秋元さん:実は渋谷はその名の通り、谷型の地形になっていて、谷底に渋谷駅がある。元々、渋谷川が流れている川の流れでできた地形で、その川の流れのまさに真ん中、谷底に渋谷駅があります。
そう、地形的に谷底にある渋谷駅からは、坂道を登ることになる周りにはなかなか足が伸びない。
これじゃダメだ!ということで東急が考えたのが、「駅で上まであげちゃう作戦」!
秋元さん:渋谷駅周辺に作るビルに地下と地上を結ぶルートを作ったんです。
それがこちら!
エスカレーターを使った縦の移動空間「アーバン・コア」
これさえあれば、地下3階にある渋谷駅から一気に地上2階まで上がれるんです!
さらにそこから…
渋谷のヒカリエを通って、宮益坂までを抜けていく、平坦な渡り廊下通路まで作ってしまいました!
おかげで…
利用者:5分ぐらいは違う。
利用者:通り抜ける道になっているので、今では、これがないと困りますね。
ヒカリエの先、宮益坂上から青山・表参道方面で働く人が、スムーズに渋谷駅から移動できるようになり、人の流れができてるというわけ。
スタッフ:なんで人の流れを作ることが大事なんですか?
秋元さん:駅から街に人が出やすいと、街にどんどんお客様に出て頂いて、街の中をたくさん巡り歩いて回遊性が高まります。回遊性が高まることで、町全体の賑わいが増して、町全体が儲かるんです。
なるほど!
人の流れができれば、そこにビジネスが生まれ、街全体が儲かるというわけですね!
そして、もうひとつ、渋谷を便利にする計画が…
秋元さん:11月1日の「渋谷スクランブルスクエア」の東棟のオープンで渋谷の人の流れはさらに変わります。
実は今まで、渋谷の人の流れを大きく妨げていたのが、渋谷駅のすぐ横を通る、国道246号線。
これを乗り越えるために出来上がったのが「スクランブルスクエア」周辺のアーバン・コア。
ここを通れば、今度は、地上2階の渡り廊下通路を通って、246を越え、その先のこれまた東急の新しいビル、渋谷ストリームにまでたどり着けます!
これにより今度は、恵比寿・代官山方面にも、人の流れができるという計画。
なるほど!
さらにさらに、渋谷スクランブルスクエアには、他のビルにはない、ある特徴が!?
それが…
新屋さん:360度見渡せる展望施設になります。
地上230メートルから、渋谷の街が一望できる「SHIBUYASKY」
360度パノラマビューが楽しめる展望施設なのですが、渋谷駅の真上に使ったのには、「人の流れ」を意識したある狙いが…渋谷スクランブルスクエアSHIBUYASKYの支配人、新屋潤さんに話を伺いました。
新屋さん:楽しんでもらえるスポットを作ることで、駅から人を呼び込んで渋谷のまちに人を送り込む、ポンプのような役割になればと思っております。
そう!渋谷駅で降りる人たちを駅の真上にある展望施設に吸いあげ、屋上から360度、渋谷の街を眺めてもらうことで、より多くの人の流れを生み出そうという狙いなんだそうです!
これは渋谷の街がますます…がっちり!!
▼スタジオでお話を伺いました。
野本会長:渋谷は水がきますから水をいったん溜める貯留槽を下に作ってまして。目に見えないところで工事をやってるのでなかなか完成しないんです。
加藤さん:トータルの完成はいつになるんですか?
野本会長:あと7、8年かかりますね。
渋谷だけじゃない!東急の「街づくり戦略」とは?
そんな東急のまちづくりですが、渋谷駅から24駅先…
のどかな南町田グランベリーパーク駅では、また別の工夫が。
南町田グランベリーパーク総支配人の青木太郎さんに話を伺いました。
青木さん:都心の中での動きとは違うような、住まう方々が喜ぶ「人の流れ」を意識しています。
もともとこちらの旧・南町田駅は、駅前に大きなモールがあり、道の反対側には、夜になると暗い公園がありました。
そこで東急では、この真ん中の道路をなくし、公園とモールをひっつけ、モールも公園も、24時間、通り抜けできるようにしたんです!
その結果…
モールの外側、公園の外側からの人の流れができ、街全体が元気になるということなんです!
さて、人の流れをスムーズにしていくことにこだわる、東急のまちづくりビジネスですが、なかにはあえて、「人が流れない!?」ようにしている街も!
それは「住宅街」。
やってきたのは…
東急でも屈指のベッドタウン「たまプラーザ」
かつて東急が開発した駅から、車で10分の住宅地。
「人が流れない」ようにしているとは、どういうことなんでしょうか?
多摩田園都市のまちづくりに携わってきた臼井さんに話を伺いました。
臼井さん:クルドサックと言うんですけども、フランス語で袋小路という意味です。あえて、行き止まり道路を作ることで不必要な車が入ってこないように仕掛けをしてます。
たまプラーザの住宅地には、クルドサックと呼ばれるこの行き止まりが、7カ所設置されています。
おかげでここには、住民以外の車が入らないようになることで、静かで安全な住宅環境が確保できるんです。
さらに行き止まりがあっても、住民はスムーズに移動できるように、こんな工夫も…
臼井さん:「歩道橋」を作って、安全に目的地に行ける工夫をしています。
車は行き止まりですが…
歩行者のための抜け道や歩道橋は、ちゃんと用意されているです。
さらに…
臼井さん:ボンエルフという背の高い樹液桝を左右交互に作ることで、車のスピードを落とさせるような工夫をしています。
道路をわざとジグザグにすることで、車の速度を落とす工夫が。
この細かいこだわりが、東急沿線の住みたいまちの数々を生んでいるんですね。