過去の放送内容
2016年5月8日放送

特集
あの会社が…いつの間に!「しれっと新ビジネス始めました!」仁丹が仁丹じゃないツブを!?食器のノリタケが謎の巨大歯車を!?
ゲスト
森永卓郎さん、前園真聖さん
番組内容
今回のがっちりマンデーは「しれっと新ビジネス、始めました」!
老舗企業がずっと同じことをやっていると思いきや、実は儲かっているのは、全然別のビジネスってことが結構ある!
ということで、いつのまにか主力事業が変わっちゃった「しれっと新ビジネス」に潜入!その儲かりの秘密に迫ります!
◎森下仁丹の新ビジネス「シームレスカプセル」
まずやって来たのは、大阪は枚方市にある、森下仁丹。
出迎えてくださったのは、開発部の田川さん。
念のために聞きますけど、御社の商品って?
田川さん:もちろん、この仁丹です!

明治38年に誕生。
口に入れるとス〜っとして、気分がリフレッシュされる。
スタッフ:1番の主力商品は仁丹ですよね?
田川さん:実際今は、そこの比率は下がっています。
スタッフ:会社の売上げのどのくらいの割合なんですか?
田川さん:実は3%くらいになっているんですよ。
後発のライバル商品に追い抜かれるどころか、仁丹の売上げはもはや風前のともしびに…。
で今、森下仁丹をしれっと支えている、新ビジネスがあるらしい!
それが…

田川さん:シームレスカプセルになります!
シームレスカプセル?
スタッフ:普通のカプセルじゃないんですか?
田川さん:当社のカプセルはつなぎ目がないんですよ!
仁丹ばかりに頼っていられないと総力を結集して生み出された、森下仁丹のしれっと新ビジネス!

普通カプセルというと、中に薬剤などを入れるので、どうしてもつなぎ目ができてしまう。
ところがこのカプセル、全くつなぎ目が見えない!っていうかない!
ゼラチンのような球体で、中に何かが入っている!
田川さん:こうやってつなぎ目がないと、油であったり水に溶けるものであったり、色んなものをカプセル化することができます。
これまでのカプセルにはつなぎ目があるため、粉状ならいいけど、液体だとそこから漏れてしまうこともあった。

しかし、シームレスカプセルなら、どんな素材でも包み込むことができるというわけ。
そして森下仁丹が独自に開発したこの技術は、あらゆる分野への応用が可能になっているんだとか。
その1つが「ビフィーナ」

胃酸に弱く、摂取しても死んでしまうと言われていたビフィズス菌。
それをカプセル化することで、生きたまま腸に届けてくれるというサプリメントなのです。
このビフィーナの年間売上げは、30億円!
いまや、森下仁丹の主力ビジネスにまでなっている。
しかし、つなぎ目もなしにどうやって中に入れてるんでしょ?
田川さん:これが我々のシームレスカプセルを作っている機械になります。

青い球体がゆっくりと落ちていく管には透明な油が入っています。
で、受け皿へどんどんたまっていく。
管の中をよく見てみると、ノズルの先から青い液体が勢いよくポトンポトン出てて、落ちる途中に丸くなっていく。
これがカプセルになるってわけですか?
田川さん:油と水が接触することで、界面張力という張力が生まれて、丸くなろうという力が発生するんです。これによって、カプセルを包むようになっています。
葉っぱの上を滑った水が、ポトンと落ちるときに真ん丸な水滴になるのが界面張力。

これにヒントを得て、液体状のシームレスカプセルの素材がノズルから排出されるのと同時に、中身の素材を包み込んでしまう。
界面張力で丸くなった表面の部分が固まることで、どこにもつなぎ目のない丸いカプセルができるってわけ。

さらに、森下仁丹ではこんな研究も…。
田川さん:今、開発しているのがレアメタルを回収するカプセル!
レアメタルといえば、希少金属!
田川さん:実はこの中にレアメタルを食べる微生物が入っているんですよ!

微生物が入ったこのカプセルには、微生物が出ることができない程の小さな穴がたくさん空いてる。

このカプセルを金やプラチナなどを含んだ工場排水が流れていくエリアに置くと、微細なレアメタルや水が穴を通りカプセル内に流れ込む。
微生物はカプセルから出られないのでお腹も空く。
何が起こるかというと、カプセルの中に入ってきたレアメタルを微生物が食べちゃう。
それをカプセルごと回収!

この研究を実用化すれば、工場排水などに含まれる金やプラチナなどを簡単に回収できるので、世界的にも注目が集まっているんだとか!
仁丹から生まれた包む技術で様々な進化を遂げている、シームレスカプセル!
その関連売上げは、およそ70億円とシームレスだけにつなぎ目なく伸びそうだ!
▼スタジオでお聞きしました。
加藤:世の中的には仁丹のイメージが強いから、こういうことをやっているって知らなかった。例えばスポーツ選手で、試合前にカプセルを飲んでおいて、前半終わったぐらいから溶け出して栄養分がとれたら元気が出て、後半また頑張れる!
前園さん:ずっと走っていられるかもしれないですね!
森永さん:シームレスカプセルは無限の可能性を持っている!今までレアメタルを回収しようと思ったらプラントを建てないといけなかったのが、あのカプセルがあれば何の設備投資もなしに入れてしまえばいい!
◎食器のノリタケの新ビジネス「砥石」
続いて向かったのは愛知県名古屋市にある、ノリタケカンパニーリミテド。
ノリタケといえば、日本が世界に誇る陶磁器メーカー。
結婚式の引き出物で、「ティーセットやお皿を頂いたわ!」なんて方が多いのでは?
ノリタケって、食器以外も扱っているんでしょうか?広報の岩田さん!
岩田さん:砥石を工業用に生産しています。
老舗のノリタケが食器や装飾品以外にしれっと始めてた新ビジネス、それが砥石!
砥石といっても、包丁を研いだりするわけじゃない。
巨大な円盤状のコレ。

岩田さん:ノリタケで作っている最大の砥石です。これは船舶のエンジン部品を削るものになるんです。
スタッフ:ちなみにこれ1個おいくらですか?
岩田さん:だいたい数百万円!
巨大砥石がグルグル回って部品などを磨いたり、アスファルト道路の切断に使われたりする。
さらに注射針の先端を削ったりと、ありとあらゆるものを削る・磨くときに欠かせない「工業用砥石」。
そのトップメーカーが、ノリタケなのです!
しかも…
スタッフ:砥石って儲かるんですか?
岩田さん:儲かるんです!
スタッフ:売上げで言うと割合はどんなものですか?
岩田さん:だいたい食器が1割で、研削研磨の分野が売上げの5割くらいを占めています。
なんと売上げは食器の5倍、およそ500億円!
業界シェア3割っていうから、確かにこっちのほうが本業かも…。

で、この砥石製造、ノリタケさんはいつ頃からしれっと始めたんですか?
岩田さん:実は創立して数年から作り始めています。
ってことは、ノリタケの創立が1904年なので、工業用砥石のビジネスも100年以上も前から!
それにしても、なぜ食器メーカーが砥石を作ろうと?
岩田さん:時代背景として戦争が始まるという時代になっていきますので、どうしても軍需産業用で砥石という需要が増えていったんです。
元々ノリタケは製造した洋食器をアメリカへ輸出していました。
しかし太平洋戦争が始まると、これが完全にストップ。
その一方、国から戦闘機や戦車のパーツを磨くための砥石の生産工場に指定されます。
これで砥石づくりが本格化したんだとか。
でもなぜ食器メーカーのノリタケに、砥石づくりの白羽の矢が?
岩田さん:食器というのは石を砕いたものに結合剤を混ぜて焼いたものなんですけども、そこに砥材を加えたものが砥石になるんです。
そう、砥石を作るには食器と同じ材料に、「砥材」と呼ばれる硬い石の粒を加えるだけでいい!

そこで技術力のある、食器メーカーノリタケに砥石の発注があったというわけ。
実際に砥石の製造工場を覗いてみると…
まずは原材料の砥材にお皿作りにも使う結合剤と工業用のノリを加える。

それをミキサーでグルグルと混ぜていく。
プレスした後、水分を飛ばすため乾燥させ、これを1000度を超える高温で焼いたら出来上がり!
ところで、砥石造りってどの辺りが難しいんでしょ、岩田さん?
岩田さん:やはり砥材の大きさ。
そう、工業用の砥石は「どんなもの」を「どのように」削るかによって全部種類が違う。
ノリタケは用途に応じて、1年間に数万種類の砥石を作っているんだとか!
例えばアスファルトを削る「溝入れ用グルーピングブレード」の場合は、砥材に1ミリほどの人造ダイヤモンドを使用!

注射針の先端を磨くという繊細な作業用の、「研削砥石」には、炭化ケイ素と呼ばれる砥材を使い、その粒わずか0.005ミリほど。

ノリタケでは砥材(とざい)の量・大きさ・種類を細かく調整!
この配合のレシピは、最大の企業秘密なんですって!
そんなノリタケは食器づくりの技術を活かした砥石でがっちり!
◎業態をコロコロ変えてがっちりな会社「ディライト」
続いてやってきたのは、奈良県奈良市にあるディライトって会社。
何してる会社なのかさっぱり分からない…。
出迎えてくださったのは、創業社長の孫で3代目の出口哲也社長。
スタッフ:こちらはどういう会社ですか?
出口社長:今はブライダルを中心にやっている会社です。
ディライトは、奈良県を中心に4ヵ所の結婚式場を運営し、昨年度およそ40億を売り上げているイケイケの会社で、社長曰く、とにかく新ビジネスに手を出しまくってきた歴史があるらしい!
出口社長:元々は繊維業をやっていた会社なんです。
創業は、戦後まもない1950年。主に肌着を製造する繊維メーカーでした。
社員3人で始めた会社もおよそ60人にまで膨れ上がり、結構儲かってた!
ところが17年後の1967年、突然ホテル業にチェンジ!
一からの出発だったのですが、京都・奈良で3つのホテルを経営するまでに!
そこからまたまた17年後、今度は2代目の社長が婦人服などを扱う輸入雑貨業にチェンジ。
奈良や神戸で8店舗を構えるまでに成長!
それなのに、またまたまた20年後。
現在のメイン事業であるブライダル業にチェンジしちゃった!
せっかく儲かっているのに、なぜそんなにコロコロ変えちゃうの!?
出口社長:会社には15年とか20年の賞味期限がある。
そう、どんなに商売が順調でも一定の期間が経ったら、必ず別のビジネスにチェンジする、というのが初代からの習わしらしい!

出口家が心に決めた「会社の賞味期限」は15年から20年。
期限が近づいたら、次なにしようかなー?って考える!
出口社長:社長になって新しいことをしないといけないというのを使命感として持っている!
新しいビジネスが全部上手くいくって、何か本当はウラがあるんでしょ?
出口社長:元々、僕は坊々なんです。家も裕福だし!
と余裕の3代目!
でもこの余裕にこそ、新ビジネス成功の秘訣があった!
出口社長:本業が元気なうちに違う事業に挑戦して、そこで成功させていくっていうのが基本だと思っていますね!
本業がうまくいってる時に考えるから、お金も時間も掛けられる。
スタッフ:準備期間で「これはマズイぞ」となったら?
出口社長:止めます、止めます!イメージしているものがあって、そこまでたどり着かないレベルや質であれば、もちろんストップさせる勇気も必要なのかなと思います。
試しにやってみてダメなら考え直すという思い切りの良さ。
万全の準備をしている余裕と、代々続く好奇心のDNAがビジネスを変えても成功する秘訣。
そして…
出口社長:5年後、10年後、15年後と先を見てる!
つまり新ビジネスを考えるときには、「20年後の奈良で何が儲かるか?」がキーポイントってことらしい。
でも今行っているブライダル事業が2004年からってことは、そろそろ次の準備を始めないと?
出口社長:そうですね!2021年までに写真スタジオを50店舗出そうと思っています。
ディライトが次に目をつけているのは「写真スタジオ」!

早くも3店舗目をオープンさせたそうですが、それにしてもなぜ写真スタジオなのか?
出口社長:奈良で2組に1組は弊社の結婚式を挙げているんです。で、結婚されて子供ができて写真スタジオで撮影する。
しかもここの所、外国人観光客も増えていることもあり、彼らを取り込む戦略も練っているんだとか。
出口社長:1円でもマイナスになったらヤバいと思うんですけど、1円でも利益を出せば事業を継続できるので。
そんなディライトは、業態をコロコロ変えてがっちり!
▼スタジオでお聞きしました。
加藤:成功体験だけを元にずっとやっていると、時代とのズレが出てくる?
森永さん:きちんと10年先、20年先を見据えていないと会社は長生きできない。会社の寿命が30年だとすると、20年はまだ全然元気。余裕があるときに次に取り組むのがコツ。
加藤:利益が上がっている時に、その利益で他をやってみる?
森永さん:追いつめられてやるよりも、しれっとやっていることに今の大成功がある!