過去の放送内容
2008年9月14日放送
特集
サイゼリヤ
ゲスト
サイゼリヤ 正垣泰彦 代表取締役社長
番組内容
ハンバーグステーキ399円!ミラノ風ドリア299円!
グラスワインに至っては、たったの100円!
驚きの安さで料理を提供しているのは…
イタリアンレストランチェーン"サイゼリヤ"。
全国に775店舗、その年商は828億円!
大成功のヒミツ、それは一見レストランチェーンとは関係がなさそうな、理科系戦略!
取締役12人中、なんと8人が理科系なのです!
もちろん、創業者の正垣泰彦社長も東京理科大学で理論物理学専攻のバリバリの理科系。
今日はそんな理科系社長がスタジオに登場。
サイゼリヤの科学的経営戦略を大解明しちゃいます!
理科系戦略で大成功!
東京理科大学時代、食堂のアルバイトで飲食業に興味を持った正垣青年。
料理修行の為、千葉県の洋食店「サイゼリヤ」で働くことにしました。その後、店長に料理の腕が認められ、東京理科大学4年の時、店を譲り受けることになりました!
オーナーとなった正垣青年がまず初めにやったこと…
それは"食品の消費伸び率のデータ分析"。
分析の結果、世の中ではパスタ・トマト・チーズの消費量が伸びていることが判明しました。
「これからはイタリア料理だ!」と、データからそう確信した正垣青年は、普通の洋食屋だった店をイタリア料理店として再スタート!
しかし、味には自信があったのですが、さっぱり客が来ません。
そこで、半ばやけくそでメニューを7割引にしたところ、なんと2時間待ちの大盛況!
当時について、取締役第5事業部の山本慈朗部長にお話を伺うと…
山本部長:食べ終わったお客さんが帰れない位、お客さんが狭い階段で並んでしまってね。それで2店目を出した訳です。
この激安路線がウケて、サイゼリヤは大繁盛!
とはいえ、この時点では支店が少し増えたというレベル。
しかし、この時に正垣社長は来るべきチェーン展開を想定して、福島県に広さ4万坪の専用農場の購入を計画していたのです。
当時を知る農家の鈴木敏暉さんにお話を伺うと…
鈴木さん:(正垣社長から)「うちは1000店舗やるよ!」と言われました。
私らと一緒にいた人たちは「社長はラッパ師だべ!」と言うような話まで出る位でした。
あまりにも壮大な計画に、大ボラ吹きと言われてしまった正垣社長。
現在ではチェーン展開を進め、775店舗の直営店を運営するほどまでに成長しました。
その急成長した最大のポイントは、驚きの安さ!
メニュー70品全部を食べても、26000円と超激安!
でも、なぜそんなに安くできるのでしょうか?
その真相を探るべく、メニュー開発をしている現場を直撃!
さぞや色んな新製品を開発しているのでしょうね。
ところが、出てきたのは人気の定番メニュー"ミラノ風ドリア"。
1日6万皿も出る定番メニューを今さらどうするのでしょうか?
内村さやかさん(製品企画コーディネーター):定番だからこそ改善し続けているんです!
サイゼリヤの理科系戦略(1) 定番メニューを徹底分析
定番メニュー、ミラノ風ドリアを囲む4人のスタッフ。
小川賢さん(製品企画コーディネーター):粘度を安定したものを出せば変わらない。
折橋暁さん(製造技術部課長):解凍しないで出せれば、ほぼゼロに近い。
ここで行なわれているのは、味の改善ではありません。さらに厨房での作業効率を高めることができないか、その方法を探しているのです。
この日のテーマは、ドリアにかかっているホワイトソース。
工場から店舗まで、解凍して運ぶのが効率的か、冷凍して運ぶのが効率的かを再検討中なのです。
伊藤登さん(メニュー開発部担当部長):解凍しちゃうと(袋から)出しにくい。袋から出すときに、(ソースが)100%出きれていない!ここに3%残った、それがロスなわけですよ!
たった3%のロスにもこだわる!細かい!
さらに、冷凍庫からの出し入れの回数についても…
内村さん:モノを出して、しまうというのは一緒なんで、そこに作業の重複が発生するんですね。それが1時間で5〜6分だとしたら、時給が1000円、780店舗で1日70000円、365日で2800万円!
何の計算をしていたのですか?
内村さん:(作業が)5分余計にかかるだけで年間2000万円以上違うという計算です。
なんと、1日たった5分のロスも見逃さない!
徹底的に効率化を図るサイゼリヤでは、定番メニューでも常にチェック・改善し続けているのです。
効率、効率って言っていますが、もちろん味にもサイゼリヤ流のこだわりがありました!
そこで、正垣社長を交えて行なわれる料理の試食会に潜入!
すると、社長からこんな言葉が…
正垣社長:マズイのないの?マズイの!「美味しい」ってのは誰でも言うから!どこがマズイって言って言って!
正垣社長の口ぐせは「美味しいのは当たり前」。だからこそ、マズイ要素がないかを探すのだと言う。そして…
正垣社長:実験っていうのは、一番いい状態で食べない!冷めきってから食べる!
"料理が冷めた時でも美味しくなければ意味がない"というのが社長の考え。
正垣社長:お客さんの所に出るときは最高なのは出ていかないから、それで最高な料理が食べられないと!
温かいときはもちろん、冷めても美味しいものを目指す!これがサイゼリヤ流、味へのこだわり!
各店舗で、70品ものメニューを提供しているサイゼリヤ。その厨房はさぞや大忙しかと思いきや…1人だけ!?
サイゼリヤ理科系戦略(2) 厨房は1人でまわす
いくら作業効率を考えると言ったって、1人で料理を作るのは大変なのでは?
井上孝仁さん(吉川栄店店員):いや、そんなことないです。
結構スムーズにできます。
1時間で6万円くらいは1人で出します!
70品全部食べても26000円のサイゼリヤで60000円!?
そんなに1人で作れるのでしょうか?実際に見てみると…
まずは、パスタを茹でます。
それからグリルへシュリンプフライ・ソーセージ・ピザ・ハンバーグを入れます。
焼いたり、温めたりする料理はグリルに入れるだけ!
そして、焼いている間に、まずはスープとサラダの3品が完成。
そして、グリルに入れていたシュリンプフライ、さらにはパスタも2皿完成。
続いては、グリルからピザとチキンも出てきました。
さらに、パスタ・ソーセージ・ハンバーグが完成。
たった6分の間に1人で11品もの料理を作ってしまいました!
次々に驚くほど料理が出来上がるサイゼリヤの厨房。
その最大のヒミツが…
中村貴司さん(吉川栄店店長):サイゼリヤの厨房では包丁を一切使いません!
食材はすでに全部切られているので、包丁を使う必要がないんです。
サイゼリヤのサラダはすでに野菜が切ってある!
後はドレッシングをかけるだけ!
でも、野菜を先に切っておいたら、水分が出てしまって新鮮さが無くなるのでは?
中村さん:水の比重が4度で一番重くなるので、とても新鮮な状態で保たれています。
水の比重で新鮮に保てる!?
サイゼリヤ理科系戦略(3) 摂氏4度
摂氏4度のヒミツを探るべく、福島県白河市にあるサイゼリヤの自社農場へ。
ここでは料理に使われる様々な野菜が作られています。
こちらの農場で一番こだわっているのが"温度"!
矢作光啓さん(白河高原農場):畑の横に冷蔵車を横付けしまして、収穫したらすぐ4℃の状態に冷やすようなことをしています。
なぜ摂氏4度にこだわるのか?
水が摂氏4度の場合、水の分子同士が最も強く結ばれた状態になるため、野菜に含まれた水分が漏れずに新鮮なまま!
摂氏4度より高くても低くても、分子の結びつきが弱くなってしまうため、水分がこぼれ出てしまう。
だから、サイゼリヤは摂氏4度にこだわるのです!
そのため、収穫したら大急ぎで摂氏4度に保たれたトラックに搬入。
トラック内部の温度を計ってみると、ピッタリ摂氏4度。
そして、トラックで加工工場に運んだら、機械ですぐにカット!
数種類の野菜と混ぜ合わせたら、摂氏4度に保たれた冷凍庫へ!
この後、お店に配送したら、すぐに摂氏4度の在庫室へ搬入します。
摂氏4度に保つことで、野菜を切っておいても大丈夫なのです!
さらに、野菜そのものにもヒミツが!
美味しそうな完熟トマト。実はこれも…
農家の方:専用です!
サイゼリヤの事しか考えないで作ったトマトです!
このトマト、一般のトマトとは一味違います!半分に切って、普通のトマトと比べてみると、なんと中から水分がこぼれ出さない!
元々、トマトは水分が多く液垂れしやすい。
そこで、カットしておいても液垂れしないトマトをサイゼリヤ自身で開発してしまったのです!
さらに、サイゼリヤでは世界中から数百種類の種を収集!
どの種子から育った野菜が、どのメニューに合うか、データを取って分析していたのです。
メニュー開発ひとつでも種の品種から考えるサイゼリヤの理科系戦略おそるべし!
▼スタジオにてお話を伺いました。
加藤:社長!これ理系満載じゃないですか!
正垣社長:いや、そんなことない。
摂氏4度で全部、出来たところから調理場まで4℃になってて、サラダを摘む人はジャンプを着て摘むんですよ。
進藤:厨房は1人でOKなんですね。
正垣社長:厨房でも料理作る人でも、楽じゃないと素晴らしいものはできないんですよ。
調理場の楽というのは簡単で、仕事量を少なくしてあげるというか、手を動かすのを少なくするだとか、やることを少なくしてあげる。
その少なくなったのをどこに持っていくかといえば、それは工場でやったり、工場でやってできなければ畑でやったり、とにかく元でやるの!
加藤:じゃあ、厨房の手間を全部事前に省いているということですね!
進藤:元からという話からいくと、この直輸入のワインもそうですよね。
正垣社長:それも葡萄が素晴らしいので、葡萄を植えてイタリアから持ってきています。
進藤:ちなみにこのマグナムボトルで、1060円(1.5?)!
加藤:でも、イタリアで作るとなったらその分コスト掛かりません?
正垣社長:あんまり原価考えないんですよ。
これをいくらで売ったらお客さんが喜ぶかってことが優先なの。
それで利益が出なければ、それをどうやったら行程の中で利益が出るようになるのか無駄を無くしていくだけで、初めはお客さんが喜ぶかどうかが先なの!
サイゼリヤの本社に潜入!
こちら、サイゼリヤ東京オフィス。社内を覗いてみると、正垣社長を発見!
しかし、脇には水筒と銀色の袋が…
そして、中からサンドウィッチ!
会社でお昼でしょうか?
正垣社長:外に出てる暇ないからテーブルの上で食べてるの。
家からお弁当作ってもらって持ってきてる。
Q:奥さんの手作り弁当のお味は?
正垣社長:味はいつも美味しいよ!
そして、昼食後は役員との打ち合わせ。
実は、サイゼリヤではあることをやめたんです!それは…
正垣社長:会議はないんですよ。会議はもうやめたの!
Q:どうして会議やめたんですか?
正垣社長:会議で決めたってみんなで決めるから、誰が責任持ってるか分かんなくなっちゃう。
会議をやると多数決で決めがちで、責任の所在が不明瞭になってしまいます。
だから、会議の代わりにサイゼリヤで行なわれているのは…
正垣社長:1対1の対話と、7人以内の討論!
どうして討論は7人までなのですか?
正垣社長:10分言いたい事しゃべって、7人いると70分。
すると、1時間ちょっとかかる。
それ以上やっても集中もできないし疲れちゃうでしょ。
会議やっても効果は全然ない。
効果がないものはやらない!これ理科系社長のこだわり。
そして効果をめちゃくちゃ上げているものがお店にありました。
それは"レジ"!
レジといえば、お会計のときに使うものですが、他に使い道があるのでしょうか?
中村貴司さん(吉川栄店店長):直接レジからレシートという形で給料明細が出せるということですね。
サイゼリヤではレジから給与明細が出せるのです!
しかし、何のために?
中村さん:給与明細を発行するという事がとても大変ですので、それを各店舗で各人数分だけ出せればより効率がいい。
パート、アルバイト、15000人分の給与明細書をレシートにしたから、余計な経費が一切掛からないんです!
さらに、従業員の名札のバーコードをピッとするだけで、なんとレジで従業員の出退勤が管理出来てしまうのです!
これで、労働時間の管理や給与の査定も簡単になりました!
そして、発注もレジを使って簡単に出来るようになりました!
レジが食材の発注もしてくれるのです!
まず、在庫室で在庫数を入力。
端末がレジと連動しているので、自動的にカウントされていきます。
あとは、レジで「発注数確定」のボタンを押すだけで、過去3週間分の在庫データと売上げを元に、どれくらい発注すればいいのかを自動的に計算してくれるのです!
中村さん:明日切らすんじゃないかと多めに発注しちゃったりとか、そういった事がなくなりました!
このシステムのおかげで、ムダな発注が激減しました!
全店に必ずあるレジ、そのレジに様々な作業を集中させることで、さらに店員のムダな動きを減らせたのです。
▼スタジオにてお話を伺いました。
加藤:徹底してますね!あのレジは、サイゼリヤで開発されたものですか?
正垣社長:すべてレジでできるように!
加藤:あと会議はやらない。
正垣社長:会議は決めるから、決めない方がいいです。
加藤:例えば、担当者が「社長、今まで7人でディスカッションして、この意見、僕は良いと思ったんで、これをやろうと思うんですが、いかがですか?」と聞かれたらどうしますか?
正垣社長:それは自分が決めるんですよ!
加藤:でも、最終決定権は社長にありますよね?
正垣社長:僕に決定権はない。
決定を社長がすると責任は社長じゃないですか。
社長は会社の中のことは絶対責任持たないの、外に対して責任持つだけだから。
加藤:他に思っていることは何かありますか?
正垣社長:僕はフードサービスの中ではすごく変わってる方だと思うんだけど、その変わってる1つは"宣伝をしない"ということ。
宣伝したらお客さん来るじゃない。
そうすると店が疲れちゃうんですよ。
そうするとお客さんに迷惑掛かるよね。
加藤:何店舗くらいまでいきますか?
正垣社長:これは何万店舗といくと思いますよ。
疲れないようにすればするほど!