過去の放送内容
2008年8月3日放送
特集
コンクリート業界
ゲスト
森永卓郎さん(経済アナリスト)、井森美幸さん
番組内容
暑〜い夏真っ盛り!
という事で、今日のテーマは…冷たぁ〜い♪ひんやり気持ちいぃ〜コンクリート!
…って、全然夏と関係ないじゃん!
でも、コンクリートは、ビル、橋、トンネル、ダム、どこにでも使われている万能素材!
実は日本、世界第4位のセメント大好き国家!
日本のセメント・コンクリート技術はスゴいんです!
わかっているようでわかっていないコンクリートの世界!
今日のがっちりマンデーは、コンクリート業界のコッチコチの知られざる儲かりのヒミツに迫る30分です!
知られざるコンクリート業界のヒミツ その1
東京都中央区にある、業界最大手の太平洋セメント!
国内シェア36%を誇る、トップメーカー!
創業は明治14年、山口県小野田市。
ここをかわきりに、一大企業へと成長した太平洋セメント。
なんと小野田市には、「セメント町(まち)」という住所が残されているほど!
そして今回、がっちりスタッフが向かったのは、太平洋セメントの熊谷工場。
敷地面積411000平方メートル、東京ドーム9個分の超巨大工場は、1日およそ28万袋のセメントを作り出しちゃう!
番組スタッフを快く迎えてくれたのが、太平洋セメント(株)熊谷工場で働く小谷田(こやた)勝さん。
でもー、コンクリートの事をろくに勉強もせずやって来たがっちりスタッフは…
Q:太平洋セメントはコンクリートを作ってないんですか?
小谷田さん:コンクリートは作っておりません!
コンクリートは作ってない?
そういえば、そもそもセメントとコンクリートって何が違うの?
小谷田さん:コンクリートにとって、セメントは材料の一つにすぎないんです。
そうなんです、セメントはコンクリートの原料。
原料のセメントに、水と砂利と砂を混ぜて柔らかくなったのが、生コンと呼ばれているもの。
その生コンがカチンコチンに固まったものをコンクリートと呼ぶのです。
じゃあ、セメントって何から出来ているのか?
セメントの材料は、粘土、けい石、酸化鉄…
そして一番大事なのが、石灰石!
そこで!石灰石が採れる群馬県多野郡の叶山鉱山へおじゃましま〜す!
ん?一体どこに…?
Q:何をやったんですか?
A:今ちょうど「発破」が終わったところです。
今、ドカ〜ンと爆破されたのが、セメントの原料の石灰石。
幅60〜70mの崖を一回で発破!
そこから採れる石灰石は4000t!
セメント袋が一度に14万袋も作れちゃう量なのです!
発破現場はかなり危険なため、近くで見る事は不可能。
撮れた映像を見て、この道30年、秩父太平洋セメント(株)取締役鉱山部長の田中豊さんも思わず…
田中さん:俺も初めて見た!
だって普通、こんな側で見れないよ!
田中さん、どうもありがとうございました♪
年間300万tの石灰石が採掘できる叶山鉱山。
その石灰石の中には、ある物が…。
田中さん:叶山鉱山の場合は、石灰石の中に2億数千万年前〜3億年前の化石がね…
石の断面に顔を出していたのは、海中生物の化石。
そう、石灰石はもともと海だった地盤にできるもの。
だから、海に囲まれた日本には大量の石灰石が眠ってる!
そのおかげで、資源に恵まれない日本にあっても、石灰石の自給率は…なんと100%!
発破で採掘された石灰石は、細かく砕かれて運ばれます。その運搬方法が驚き!!
なんと!群馬県にある叶山鉱山から工場がある埼玉県の秩父市まで、専用地下トンネルの中をベルトコンベアで運んでた!
その距離なんと…23km!
中央線の東京駅から国分寺駅までがつながっている計算!
こりゃスゴイ!
Q:どのくらい石灰石を運ぶんですか?
秩父太平洋セメント(株)桜井和行さん:ベルト幅は90cmですけど、1時間1千トン運搬しますので、ダンプトラックで1時間当たり100台分運ぶ事になります。
ダンプカーで運搬するより、ベルトコンベアの方が経済的!
掘り出された石灰石は、太平洋セメントの原料粉砕機でさらに細かく砕かれます。
そこに、粘土、けい石、酸化鉄などを加え、流し込む先は工場の心臓部・巨大な回転窯ロータリーキルン!
見て下さい、人間がこんなにちっちゃい!
回転窯ロータリーキルンの中は、なんと1450度!
超高温で焼かれる事で化学変化が起こり、水を加えると発熱する物質に変わっていくのです!
こうしてできたのが、セメント!
試しに、セメントに砂や水を加えてかき混ぜると…
ほ〜ら!
こんなに温度が上がっちゃう!
コンクリートは乾いて固まるのではなく、この水との化学反応で固まるんですね。
さて、出来上がったセメントは2万トン貯蔵できるサイロに運ばれます。
このサイロ1つ分のセメントって、おいくら位?
小谷田さん:2万tのセメントですと約2億円…
このサイロに2億円のセメントが詰まってる!
儲かってますね〜小谷田さん♪
小谷田さん:セメントを作る流れを見て頂きますと、あれだけの高温を作る燃料費、これもかなり掛かります。
セメントメーカーと言えども、それほど潤っているわけではないと…
その割にはニヤニヤしている小谷田さん!
それもそのはず!
太平洋セメントの売上高は…年間9406億円!
がっちりいってるじゃないですか!
知られざるコンクリート業界のヒミツ その2
続いて向かったのは、千葉県佐倉市にある太平洋セメント中央研究所。
研究所なのにお店のように迎えてくれたのは、太平洋セメント(株)技術企画部の石川雄康さん。
こちらでは日夜、未来のコンクリートを研究、最先端の技術を開発しています!
という事で!
▼最先端コンクリート・ベスト3の発表!
まず第3位は…
石川さん:オートクレーブトライトウェートコンクリートです!
スタッフ:な、何て言ったんですか?
石川さん:オートクレーブトライトウェートコンクリートです!
なんだか難しそうな名前ですが、オートクレーブトは「気泡」。
ライトウェートは「軽量」という意味。
石川さん:非常に軽いというのが特長ですね。水に浮きます!
水に浮くコンクリート?
では、早速見せて頂きましょう。
まずは、普通のコンクリートを入れると…
それに対して、オートクレーブトライトウェートコンクリートは…
石川さん:中に気泡をたくさん入れているコンクリートです。
表面にも無数の穴が。
ここに空気が詰まっているから、水に浮くほど軽い!
しかも強度が高いとあって、一般住宅の外壁パネルなどに使われているのです。
続いて、最先端コンクリート・ベスト3!第2位は?
石川さん:ポーラスコンクリートです!
スタッフ:ポーラスコンクリート?これは何がスゴいんですか?
石川さん:これは水を通すコンクリートです。
水を通す?確かに、かけた水がコンクリートの中を通ってる。
これ、一体何に使ってるんですか?
石川さん:雨が降っても水溜りにならない。
ポーラスコンクリートの威力が発揮されるのは…道路!
雨の日の運転、普通のアスファルトでは水しぶきが飛んでいます。
でも、ポーラスコンクリートの道路は水溜りができないため、水しぶきがほとんどあがらない!
雨水が溜まらないから、スリップ防止効果が高い!
さらに…コンクリートが空洞になっているから、騒音を吸収する役目もあるのだとか。
そして、最先端コンクリート・ベスト3!第1位は?
太平洋セメント(株)研究開発1部 田中敏嗣さん:世界で一番硬いコンクリート「ダクタル」です!
スタッフ:世界一硬いんですか?
田中さん:おそらく…
と、なぜか自信なさそうに話すのは、ダクタル技術開発リーダーの田中さん。
でも、こちらのダクタルは正真正銘、世界最強のコンクリート!
普通のコンクリートと比べると、その強度は約10倍!
強さのヒミツは、キラキラ光る金属の繊維!
普通、コンクリートの強度を上げるためには、鉄筋を入れた鉄筋コンクリートが一般的。
でも、このダクタルは太い鉄筋を入れるのではなく、細い金属を大量に練り混ぜている。
これによって、なぜか、鉄筋コンクリート以上の強さを発揮できるのだとか。
最近では、羽田空港の拡張に使われているダクタル。
巨大な航空機や何十トンもの大型車両が行き交う滑走路は、高い強度が求められているのです。
さらにこのダクタル、意外な所に使われていました。
田中さん:赤坂サカスさんの床版にも使われています。
これは、BooBo(ブーブ)!
そう、実は赤坂サカスのイベントフロアでもダクタルを採用!
特設ステージや重い機材などが繰り返し設置されるため、普通のコンクリートでは耐え切れない!
そこで、世界一硬いダクタルが使われているのです。
そんな画期的なコンクリートは今、業界から大注目!
今後も新たな市場が広がりそうな予感です!
▼スタジオにてお話を伺いました。
加藤:水を吸い込むコンクリート、あれスゴイですよね。
森永さん:アスファルトできちんと固めちゃうと、水が川に流れ込んで洪水とかを起こすんです。
でも、ポーラスコンクリートは地下に浸透していくので、環境にもすごくいいんですよ。
加藤:それはいいですね。
進藤:これで驚いていては困るんです!
「スーパージェットセメント」という物があるのですが、これは驚くような早さで固まるセメントなんです。
ちょっと試してみましょう。
セメントは水分が飛んで乾く事で固まるのではなく、化学変化による熱で固まるので、温度がどんどん上がっていきます。
加藤:あったかくなってきた!
森永さん:もうスプーンが動かない!
進藤:一般的なコンクリートは固まるのに丸1日かかるのですが、このスーパージェットセメントは数分間で固まっちゃうんです。
森永さん:これは緊急の工事の時にすごく役に立つんです。
例えば、堤防が壊れちゃったとか。
すぐに直さないと危ないわけですから。
コンクリート業界の稼ぎ頭!
儲かり生コンクリートのヒミツ!
スタッフが向かったのは、東京都中央区の晴海小野田レミコン。
明るく迎えてくれたのは、晴海小野田レミコン(株)副工場長の諏訪一広さん。
早速見せて頂いたのが…
諏訪さん:これが今出来上がったばかりの生コンクリートです!
赤ちゃんの状態、生まれたての赤ちゃんです♪
生コンとは、セメントに砂、砂利、水を混ぜた柔らかい状態のコンクリートの事。
この生コンを型枠に流し込み、固まると床や柱などが出来るのです。
そんな生コンにとって一番大事なのは…
諏訪さん:生コンクリートは鮮度です!鮮度が命です!
生コンは時間が経つと固まってしまう「生モノ」!
のんびりやってたらダメになっちゃう!
諏訪さん:生コンクリートは「製造開始から90分以内に排出しないといけない」という規定がありまして。
そう、混ぜられた生コンは90分以内に使うのが生コン業界の掟!
しかもこの生コン、混ぜ具合や配合が結構難しい!
工事現場で作業員さんが作るのは大変!
そのため、生コン会社で大量に作ってから現場に運んだ方が効率もよく、良質な生コンクリートが使える!
建設業界にとって、生コン会社はなくてはならない存在なのです!
しかし、生コンの命はたったの90分…。
時間内に作業現場へ運ばなければ使い物になりません!
だから、遠距離の運搬は不可能!
そのため、生コン工場は全国各地に散らばっている!
その数、なんと4000以上!
そんな生コンを素早く運んでいるのが、ミキサー車。
こちらにある2台のミキサー車。
見比べてみると…そう、回転している方向が違っている!
何で回転方向が違うのか、分かります〜?
諏訪さん:奥の車がコンクリートを積み込んだ後の「正転」。
もう1台は逆に現場に着いた時の「逆転」でコンクリートを排出する。
ミキサー車の内部はこんな感じ。
正回転している時は前の方で混ぜていますが、工場現場に着くと逆回転になり、中の生コンが外に出てくる仕組みなのです。
このように、回転する方向によって、混ぜたり出したりしていたんですね。
そんな生コン、最近は使っていない工場現場が増えていると聞いて向かったのは、高層マンションの建設現場。
完成すれば49階。現在19階の部分を建設中なのだとか。
スタッフ:今どんな工事をされているところですか?
戸田建設(株)副作業所長 木村賢治さん:19階の柱と梁、建物の骨組みを作ってます。
スタッフ:ふんだんに生コンクリートが使われている?
木村さん:そうではないんですね。
生コンを使わず、どうやって柱を作っているのか?
19階の作業現場に上ってみると、確かに、生コンは使っていない様子
…と、その時!ん?何やら、コンクリートの塊が運ばれてくる!
木村さん:こういう建物では柱・梁・床全てを工場で作って、積み木のように積んでいきます。
そう、このような高層マンションの場合、現場で生コンを流し込んで柱や梁を作ったりはしません。
別の工場であらかじめ作ったものを建設現場へ運んで組み立てていたのです!
これが、プレキャスト工法!
専門の屋内工場で作られるため、天候に左右される事もない!
現場で生コンを固めるよりも、質のいいコンクリートが大量に作れちゃう!
戸田建設(株)機材部成田PC工場長 松本勝則さん:現場における時間は短くて済みます。
工場で柱や梁、天井などを作り、建設現場ではそれを合体するだけ。
作業のスピードアップにも役立っています!
現在、このプレキャスト工法を使う事で、1フロア2週間かかっていた建設期間が…なんと4日間に短縮できちゃった!
▼スタジオにてお話を伺いました。
加藤:プレキャスト工法だと、耐震はどうなのかなという感じもするんですけど…
森永さん:工場であらかじめ作っているので、理想的な条件でコンクリートが作れて強度も十分強いんですよ。
そういう意味では、プレキャスト工法は画期的な発明だったんですよね。
進藤:今後コンクリート業界はどんな風に伸びていきそうなんですか?
森永さん:研究・開発は最近花開いてきたので、色々な物がまだまだ出てくるんだと私は思うんですよ。
加藤:この業界はさらに伸びるという事ですね。
進藤:セメントの原料である石灰石に続く日本に眠る資源、次は何がきそうか教えて下さい。
森永さん:それはマンガンクラストです。
これは、日本の九州から沖縄辺りの海域にずっとはり付いているんですよ。
進藤:それは何に使えるんですか?
森永さん:マンガンは電池とかに使われますし、アルミ製の缶にも使われているんですね。
今までは、生成するなどコストを考えるとあんまり採算が合わないので…
加藤:そこを引っ張り上げるより、輸入した方が安くあがってたという事ですね。
森永さん:おそらくもうすぐ採算が合うようになってくるんです。
そうすると、海底にいっぱいありますから!
加藤:いいじゃないですか、それ!あとは掘り上げる技術とか、そういうコストをどれだけ下げられるかって事ですね。
森永さん:そうなんです。