過去の放送内容
2008年6月1日放送
特集
駄菓子(儲)ビジネス
ゲスト
池上彰さん(ジャーナリスト)、井上和香さん
夏になると食べたくなるあの駄菓子の (儲)のヒミツ!
大阪府東大阪市にある中寅菓子店は、創業1935年、昔ながらの駄菓子屋さん。
子供たちの一番人気は、一個10円の当たり付きガム。
でも、これがなかなか当たらない…。
ついつい当たるまで買っちゃいますよね〜。
そして、これから暑くなるシーズン。
夏場の駄菓子屋さんを支える稼ぎが頭は…やっぱりアイス!
1955年発売の"ホームランバー"。
「ホームラン」が出るともう1本、その場でゲットできちゃう!
子供たちの間で人気を呼び、大ヒット!
こちらは、ゴムのチューブに入った"たまごアイス"。
子どもの頃、「おっぱいキャンディー」っていう呼び方されませんでした?
そんな駄菓子アイスの中でロングセラーを続けているのが…"チューペット"!!
ポリエチレンの容器からそのまま押し出して、しゃぶるように食べちゃう超人気アイス!
これを作っているのは、大阪府八尾市にある前田産業。
こちらの工場では、1日90万本のチューペットが生産可能。
今、夏に向けてフル稼働中なんです!
売れ筋は、"やわらかシャーベットミルク入りミックス"。
青リンゴ、イチゴ、ホワイトの3種類で1本35円。
ただし、青リンゴやイチゴは無果汁。
フルーツ味のシロップに脱脂粉乳でミルク感を出していたんです。
最近は、子どもの健康に気を遣うパパやママが急増!
そんな中発売されたのが…"プレミアムチューペット"!
こちらは国産果汁100%で、砂糖も一切使っていない健康志向!
でもお値段は…1本45円。
チューペットが発売されたのは1975年。
その頃は、まだ1本の棒状タイプでした。
でもこれだと先端を切らなければならず、ほとんどの子どもたちは歯で食いちぎって開けていました。そこで…
前田産業(株)飛野光昭さん:私どもは業界に先駆けて、中折れタイプを開発しました。
業界初の中折れタイプは、子どもでも簡単に折って食べられるとあって大ヒット!
そんなチューペット、パッケージに気になる点が…。
パッケージの裏を見てみると、「清涼飲料水」!?
アイスじゃないの?
通常、アイスなら「氷菓」と表示されるはず…。
なぜ「清涼飲料水」なのか?
そこには過去の税金問題が絡んでいました。
チューペットはもともと、「チューチュー」と呼ばれるポリエチレン容器に入ったジュース。
つまり、清涼飲料水として売られていました。
ところが1950年に、それまで課税対象じゃなかった清涼飲料水に新たに「物品税」がかかるとの噂が!
1本5円、10円の商品に税金がかかっちゃやってられない!
駄菓子屋さんは猛反発!
そこで苦肉の策として考え出したのが…
「凍らせてアイスとして売る!」。
当時、アイスなどの氷菓は課税対象ではなかったため、どこの駄菓子屋も凍らせてアイスとして販売したんです。
結局、清涼飲料水に物品税はかからない事になりましたが、「凍らせてアイスにする」!
この方法だけが残ったといわけ。
だから、チューペットは今でも「清涼飲料水」として販売されているのです。
飛野さん:今年の夏は、チューペットでがっちり!
▼粉末ドリンクでがっちり!
続いての夏の駄菓子は…粉末ソーダ!
ホントは飲み物のはずなのに、みんなソーダの粉を直接なめたりしてましたよねぇ?
そんな粉末ソーダを作っているのは、粉末飲料業界のトップメーカー、岐阜県関市にある松山製菓。
迎えてくれたのは、松山製菓(株)代表取締役社長の伊原正則さん。
早速、粉末ドリンク工場へ。
伊原社長:今、年間で7〜800万個くらいは出てるんじゃないかと思います。
7〜800万個を販売!?
そんなに売れているとは、正直意外…。
でも作り方は想像通り、簡単!
香料や甘味料、クエン酸など8種類の原料を混ぜるだけ!
ところでこの粉末ドリンク、社長はどうやって飲んでました?
伊原社長:僕らの子どもの頃は、指をなめて袋にいれてましたよね。
あとは、袋を破って直接公園の水道の水を入れて、何回も飲んでましたね。
Q:コップに入れると失敗しますか?
伊原社長:薄くてまずい物になっちゃうんですよね。
そこで社長が、粉末ドリンクの正しい作り方を教えてくれました。
まず、コップの中に粉を入れて、冷た〜い水を注いで…
え?これだけ?
そう、粉末ドリンクが薄くてイマイチだったのは、水を入れすぎていたから。
ちゃんと袋にも"120cc"って書いてある!
粉末ソーダは、この水の量でおいしくなるように作られていた。
でも少ない…!
そんな松山製菓が、今年の夏オススメする駄菓子は?
伊原社長:最近新しいのを作ったんですよ。
「なまいきビール」って言うんですけどね。
今度はビール?一体どんな物なのか?
おぉ〜♪ホントにビールそっくり!
伊原社長:松山製菓は粉末ドリンクでがっちりです!
一風変わった駄菓子でがっちり!
次に向かったのは、大阪府東大阪市にあるジャック製菓。
迎えてくれたのは、ジャック製菓(株)三代目社長の中野幹さん。
一見気弱そうに見える中野社長。
でも、こう見えて駄菓子業界の異端児と呼ばれているんです!
そんな中野社長の一風変わった商品とは?
中野社長:「うんちくんグミ」です。う
んちくんの形をしています。アホでしょ。
食べ物にうんちと名づけるという、業界…いや社会の常識を破った中野社長!
…で、売れてるんですか?
中野社長:地方の方では最初は抵抗があったみたいです。
定着してきましたけどね。
この「うんちくんグミ」、知る人ぞ知るジャック製菓のヒット商品!
続いて…
中野社長:これ、どうでしょうか?
「ツッコミプレート」。個人的に気に入っているんです。
ツッコミプレート!?
中を開けるといきなり「誘拐注意」と、なんともシュールな標識シールが…。
一応、その下には青リンゴ味のミンツが入っています。
どうやら、社長の力が一番入っているのはお菓子ではなく、おまけのシールのよう。
中野社長:例えばコレなんかお気に入りですね。
パーキングエリアでお酒を出していると。コレはないやろ!
中野社長:もう一つお気に入りがこれですね。
悪いやっちゃな〜言うやつですわ。
中野社長:考え出すと止まらないんですよ。
そう、このシールのデザイン、すべて社長のアイデア!
シールだけじゃなく、駄菓子のパッケージも!
ジャック製菓の商品は、ぜ〜んぶ社長自ら描いていたんです!
マンガ好きの三代目中野社長、道楽商売のように見えますが、しっかり儲けのツボは押さえていました!
ジャック製菓の一風変わった商品、これほとんど…クジがついてる〜!
そうなんです!「当たりクジ付きの駄菓子は売れる」!
この駄菓子業界の儲かりのポイントを、中野社長はしっかり押さえていたのです!
中野社長:金券の当たりが出てくるんですけども、子どもも当たりものが嬉しいみたいです。
ジャック製菓は、駄菓子でがっちりです!
▼スタジオでお話を伺いました。
進藤:スタジオに「なまいきビール」をご用意しました。
加藤:うまそうですね!(飲んでみると)…全然ビールじゃない!
甘っ!でも、これは子どもが喜びますね。
池上さん:夏ならではですね。
▼10円駄菓子で年商151億円!駄菓子キングのヒミツ!
インスタントラーメンを小さく砕いた、ちょっと変わった駄菓子と言えば…
1959年に発売した"ベビースターラーメン"。
この超ロングセラー商品を作っているのが…売上高151億円!駄菓子のトップメーカー、三重県津市にあるおやつカンパニー!
もともとおやつカンパニーは、駄菓子メーカーではなく即席麺のメーカーで、従業員20人の小さな会社でした。
そんな即席麺メーカーが、どうして10円や20円の駄菓子を作るようになったのか?
ある日のこと、創業者の松田由雄社長が工場を歩いていると、中華麺の製造途中にこぼれてくる"麺のかけら"を発見。そして、
「このまま捨てちゃ、もったいない!」
と思った松田社長。その麺のかけらに味を付けて油で揚げてみると、
「う、うまいっ!これは売れるっ!」
と、早速商品開発をスタート!
そう、これが"ベビースターラーメン"誕生のきっかけ。
作り方は本格的なインスタントラーメンの製造そのもの。
茹で上がった麺に味付けして油で揚げます。
その揚がった麺をわざわざ小さく砕いたのです。
バリバリに売れたラーメンなんて売れるはずがない…と思いきや、駄菓子屋の子どもたちは大喜び!
見た事もないラーメンのかけらの駄菓子、しかも10円。
あっという間に駄菓子の定番として全国に広まりました。
1袋10円の駄菓子から、なぜおやつカンパニーは、年商151億円もの大企業に成長する事ができたのか?
伺ったのは、(株)おやつカンパニー営業本部の林信彦さん。
どうやって駄菓子の儲かり企業になったのですか?
林さん:まず時代の流れに合わせて、コンビニでも売れる商品を作ろうと。
そう、1980年におやつカンパニーはコンビニ業界に進出!
そこで、ベビースターラーメンのサイズを拡大!
スナック菓子として発売したんです!
サイズを大きくした分、売り上げも大きくなるというわけ。
さらにベビースターは、もともと1つしかなかった種類を増大!
発売から50年の間に、3000種類ものベビースターラーメンを発売!
新潟カニラーメンの味や、練馬の下仁田ねぎを練り込んだもの、沖縄そばの味など、およそ1年間でなんと250種類以上もの新商品を発売!
ところで、ベビースターの弱点は、食べた後ポロポロこぼれちゃう事。
その弱点を改良し新開発したのが、1999年発売の"ベビースターラーメン丸"!
ベビースター本来の食感や味を変える事なく、特殊な水飴で固めてあるのだとか。
これならポロポロとこぼさず食べられるとあって、超大ヒット商品となったのです!
そんなおやつカンパニーは、1袋10円の駄菓子を売っていた小さな会社から、見事大企業へと成長できたのです!
オフィスで大人気!駄菓子屋戦略でがっちり!
続いて向かったのは、お菓子のトップメーカー、江崎グリコ!
グリコみたいな大企業でも駄菓子を作ってる?
いえいえ、実は、グリコは駄菓子ではなく、駄菓子屋さんのノウハウを取り入れているのだとか。
一体そのノウハウとは?
江崎グリコ(株)吉村貴宏さん:これなんですけども…
と言って、吉村さんが取り出したのは、引き出し収納?
よく見ると、中にはグリコのお菓子でいっぱい。
箱の上には100円の投入口。
このお菓子箱みたいな物で、どうやってグリコさんはがっちりいっているんでしょうか?
吉村さん:お菓子の箱を企業様に設置させて頂いて、1個買ったらここに100円を入れて頂きます。
非常に駄菓子屋さん的な要素が盛り込まれています。
箱の中のお菓子はどれも100円で買えるものばかり。
このカエルの口にお金を入れて、自分の好きなお菓子を取って食べられる。
その名も"オフィスグリコ"!
昔、子どもの頃に10円玉を握りしめて駄菓子屋に行った感覚。
あれを会社の中で狙った新ビジネス!
実際、オフィスグリコを利用している会社をのぞいてみると…
100円握りしめたサラリーマンが会社でお菓子を買っていました!
Q:週に何回くらい利用されますか?
利用者:毎日1回は買いますね!
夕方にお腹が空いてくるんですけど、そうすると(オフィスグリコから)あるやつを選んじゃうんですよ。
どうやら帰宅する頃に、お菓子箱のピークがやってくるみたいです。
また男性が買いにきました。次の人も男性。ん?この人も…。
女性社員に聞いてみると、
Q:男性と女性で、どちらの利用が多いですか?
女性社員:断然、男性が多いですね!
そう、オフィスグリコの利用者は7割以上が男性!
吉村さん:男性は、例えば「今日は残業があるからお菓子を買って会社に行こう」とは誰も思っていません。
近くにあれば食べるんですよね。
忙しいサラリーマンの心理をうまくついた、グリコの駄菓子屋戦略!
でも、このお菓子箱、お金をいれないでちょろまかす!…なんて悪い人もいるのでは?
吉村さん:回収率は大体95%くらいなんですけど、入れ忘れが多くてほとんど悪意というのはない。
そう、社内においてあるお菓子箱なので、同僚の目を気にするのか、ごまかす人は少ないのだとか。
急成長を遂げているグリコの駄菓子屋戦略!
オフィスグリコの設置数は、全国で10万台を突破!
今後も設置台数はまだまだ伸びていく予感!
吉村さん:グリコは置き菓子でがっちりです!
▼スタジオでお話を伺いました。
池上さん:男ってわざわざお菓子を買いに行かないんですけど、そこにあるとつい手が出ちゃうんですね。
加藤:子どもが食べているお菓子を「1個ちょうだい」と言ってしまう時がありますもん。
駄菓子屋感覚がオフィスグリコにはあるという事ですよね。
100円の入れ口をカエルの顔じゃなくて、おばちゃんの顔にしたらもっと駄菓子屋感覚になりますよね(笑)
進藤:ベビースターラーメンもずいぶん進化していますね。
池上さん:あれもアイデアですよね。
加藤:これこれ!僕らの時代はこれですよ〜!
池上さん:これを見ると歴史がわかりますよね。
最初のパッケージに大きく「そのまま食べてくださいね」と書いてあるでしょ。
この頃は、そのまま食べるという事をわからない人が多かったから、わざわざ大きく書いてあるわけでしょ。
今、駄菓子屋の戦略が見えてきますよね。
次々に商品を出していれば、その中からたまに大ヒットする商品がある。
そうしたらそれに特化すればいいわけですよね。
ものすごい大量に色々なものを出しているでしょ。
その中からヒット作が残っているという事ですよね。
進藤:駄菓子のように当たりクジを付ければヒットする、そんな商品があったら教えて下さい。
池上さん:これからの季節、"当たり付きTシャツ"なんてどうですか?
Tシャツですと、何枚も同じようなものがあってもいいですよね。
「もう1枚もらえます」というと喜ぶし、それをもらうためには、またそのお店に行かなければいけない。
そのお店に引き換えに行けば、「せっかく来たんだから…」ってまた何か買ってしまうでしょ。
お客にもう一度来てもらえる。
加藤:もう1個もらっても嬉しい物って事ですよね?
池上さん:そうですね。