過去の放送内容

「がっちりマンデー!!」毎週日曜あさ7時30分から

がっちりマンデー!!

過去の放送内容

2008年1月20日放送

特集

技能五輪

ゲスト

森永卓郎さん(経済アナリスト)・稲垣吾郎さん

番組内容

本日のがっちりマンデー、テーマはオリンピック!
しかし、ただのオリンピックではありません!
世界中の若者たちが仕事の技を競い合う、その名も「技能五輪」!
世界中の天才職人たちが「ものづくり」世界一を競うこの大会でなら、ものすごい儲かり技を持った若者に出会えるはず!
今回は、そんな技能五輪日本代表に突撃です!

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天才板金マンの神ワザ

昨年11月、静岡県で第39回技能五輪国際大会が開催されました。世界46ヵ国から国の威信を背負った職人たちが集結し、ありとあらゆる分野で職人の技を競い合いました!
へこんだり、傷ついたりした自動車のボディを溶接やハンマーを使い、いかに元通りにするかを競う「自動車板金部門」や、レンガを使って壁や塀、床やアーチなどを使い、その美しさと強度を競う「レンガ積み部門」など、種目数は実に47種目にも及びます!
しかも、参加条件は22歳以下の若者であることだけなのです!
そして今回、日本選手団は金メダル16個、銀メダル 5個、銅メダル3個という超メダルラッシュ!そんな「ものづくり大国」日本の明日を支える金のタマゴたちを見ていきましょう!

日本代表選手のスゴい技を求めて、がっちりマンデーがお仕事現場に突撃取材!
まずは、広島県にある自動車メーカー「マツダ」の本社工場へやってきました。こちらには、「曲げ板金」というあまり聞き慣れない部門で金メダルを受賞したスゴい職人さんがいるというのですが…マツダが誇る金メダリストとは一体どんな職人さんなのでしょうか!?

早速、マツダ株式会社教育チームアドバイザーの山本宏さんにお話を伺いました。

山本さん:彼は鉄板と会話ができるんですよ。鉄板の「ココを叩いてくれ」という声が聞こえるんです。彼はそんな能力を持っています!

続いて、マツダ株式会社河邉尚道さんにお話を伺いました。

番組スタッフ:(そのスゴい職人さんは)どんな人ですか?
河邉さん:鉄板を曲げさせたら「ピタッ」と合う、ものスゴいのがおりますよ!

彼が「曲げ板金部門」金メダリスト、マツダ所属の秀島巧選手(22歳)!
彼こそが、入社わずか4年で世界を制したスーパー板金マンなのです!
曲げ板金とは、車の試作用のパーツを作る際などに金属を自由自在に曲げる技術のこと。
秀島くんは正確な角度での折り曲げや微妙な丸みのカーブなどの再現を成功させ、見事金メダルを受賞しました。

早速、秀島くんに世界一の曲げの技を見せて頂きましょう!
では、一体何をしてくれるのでしょうか?

河邉さん:秀島には、この鉄板を直径120mmの円筒に曲げてもらいます。
素人の方から見たら、あまりスゴい技には見えないかもしれませんが、彼の技は世界一ですよ!

まず、秀島くんは体重をかけて何とも原始的に鉄板を曲げ始めました!
そして、木槌を使って、鉄板の端の曲線に続いて鉄板を回しながらどんどん丸めていきます。
そして完成までのタイムは6分15秒14!
なんともシンプルな手作業で出来上がった鉄の筒ですが、実はこの筒がスゴかったのです!

スタッフが円筒の直径を計ってみると、なんとピッタリ12cm!
プラスマイナス1mmの誤差もありません。

さらに、コンパスで透明なアクリル板に直径12cmの描き、先ほどの円筒の上に載せてみると、これまた1mmの誤差もなくピッタリなのです!確認ですが、秀島くんが使っていたのは、あくまでも木槌一本だけ!己の手の平の感覚だけで、コンパスとまったく同じ完璧な真円を生み出しているのです。コレはまさに神技!では、一体どんな練習をしているのでしょうか?

秀島くん:僕は家に帰ってからのイメージトレーニングを欠かさずやっています!

ところで、ここでは木槌をトントンやっているだけで、何だか自動車作っている工場には見えませんけど…

河邉さん:実はここ、マツダの技能五輪に出場する選手が訓練するための施設なんです!

そう!実はこの工場はマツダがわざわざ「技能五輪選手を育てるためだけ」に作ったまさに技能五輪特訓の虎の穴なのです!自社から腕のいい金メダル職人が生まれれば、自動車メーカーの技術力のアピールにもなります。つまり、マツダは会社全体が総力を挙げて訓練チームをバックアップしているのです!

山本さん:技能五輪を通して、マツダの板金技術の高さをPRするのが大きな目的です!PR効果スゴいと思います!がっちりです!

紅一点の天才左官職人

続いて、新潟県にある建築会社「いりやまと」にやってきました!
この会社に建築の花形「左官」部門で銀メダルを受賞した職人さんがいるらしいのですが、一体どんな人なのでしょうか!?

こちらが左官部門の銀メダリスト、いりやまと所属、笑顔が印象的な堀美幸選手(20歳)!
堀さんは、世界のワイルドな男たちがひしめく左官部門で、並み居る強豪を押しのけて銀メダルを受賞しました!
左官は"こて"を使って、漆喰という素材を壁面にいかに素早く凹凸なく塗り固められるかが勝負のポイントとなります!

堀さんが得意とするのが、この「こて塗り技術」。早速、会社の先輩と「こて塗り勝負」をして頂きました!

今回は、畳一畳分をいかに早くムラなく塗れるかで競います。セメントや石膏と比べて、漆喰は乾燥のスピードがとても早く、均一に塗らなければ仕上がりのムラが目立ってしまいます。それほど漆喰は扱うのが難しい素材なので、こてさばきにはスピードと正確さの両方が要求されます。堀さんは、そんなムラになりやすい漆喰の性質を十分に熟知しているので、繊細でムラの無い見事なこてさばきが可能なのです。7分後、一面塗り終わり、最後の微調整をして、堀さんは9分5秒17で完成!そして遅れること3分、先輩も無事完成しました。一見、仕上がりは同じように見えますが、左官一筋42年の大ベテラン木津三郎さんに判定して頂くと…

木津さん:(先輩の作品は)見た目はキレイですけど、横から見ると、こてを縦に押さえているせいで粗さが目立ちます。

そう!先輩の壁は腕力に任せ、大きく塗ろうとしたためムラが出ています。一方、堀さんの仕上がりは均等に、そして一方向にこてをすべらしているので表面がサラサラしています。しかし、なぜ女の子がわざわざ左官屋さんになろうと思ったのでしょうか?そのヒミツは会社の近くにある堀さんの実家にありました。

番組スタッフ:お仕事は何をされていますか?

父・堀幸雄さん:左官です。
兄・堀健春さん:左官です。
祖父・堀級一さん:左官です。

そう!堀さんの実家は明治初期から5代続く左官一家なのです。実はなんとお兄さんの健春さんも6年前に日本の技能五輪の「左官」部門で銀賞を手にしている実力者なのだとか!堀さんの左官入門はカッコいい兄の姿を目にしたからだそうです。仕事に厳しいお父さんは堀さんの目標であり、憧れでもあります。

番組スタッフ:お父さんを越えたいと思いますか?
堀さん:どう頑張っても一生越えられないと思います。いつか認めてもらえれば嬉しいです。

世界に壁より高い親父越え!左官でがっちり!

▼スタジオでお話を伺いました。
加藤:これはものすごい技術ですね。パッと見、我々素人には分かりづらいですけど…

森永さん:左官の仕事って実は長期衰退傾向に今まであったんですよ。でも、例えば今は環境とかシックハウスとか色んな意識の高まりのある中で、「やっぱり漆喰の方がいいよね」というニーズが増えています。

加藤:堀さんのところは家族がみんな左官だから、自分よりも上の人間がいるから成長の伸び率も高いんでしょうね。それで銀メダル取れたんでしょうね。

森永さん:今ものすごく機械は進化しているんですが、一番厳しい精密さが要求される部分は全部手でやっているんです。例えば、真円を出すのを機械でやることは不可能ではないんです。1000個同じものを作って微調整をして、1000個目で真円になることはできるんですが、試作品だとかあるいは少量生産の部品のレベルだとそんなことはしていられません。全部ゴミになってしまうので、やはり人間の手でやらなければいけないという部分は必ず残るんですよ。

極薄かんな掛けの天才大工

建築用の木材をノコギリやノミやカンナなどを使って、いかに正確に切ったり削ったりできるかを競うのが「建築大工」部門!そんな競技に日本代表として出場したのが、「建築大工」部門銀メダリスト、住友林業ホームエンジニアリング所属、池田通憲選手(21)!

とても謙虚で恥ずかしがり屋の池田くんですが、大工の腕前はピカイチ!
例えば、1本の角材を下書きの線通りに切断するノコギリ作業なら、ご覧の通りどんどん切っていきます。
ほとんど下書きが見えない状態になっても1mmの狂いもなくカットしていきます。

縦に木目の入っている木材を斜めに切るのは垂直に切るよりもはるかに難しい技なのです。
そんな池田くんが、ノコギリよりも得意としている技術、それが「かんな掛け」です。
かんな掛けは木材の表面を平らにして、木本来の美しさを生み出す大工にとって難易度の高い匠の技!
しかも、池田くんの技術は世界トップレベルで、なんと1000分の10mmの薄さまで削れるといいます。実際に池田くんにかんな掛けをしてもらうと、木の繊維までもが透けて見える薄さに!

住友林業建築技術専門校建築大工歴16年の遠藤公紀さんにお話を伺いました。

番組スタッフ:この位まで薄く削るのは難しいですか?
遠藤さん:私もここまで薄くは削れないんで…

先生の遠藤さんでも出来ない池田くんの超薄削り!ちなみにティッシュペーパーの薄さは0.053mmですが、池田くんが削った皮を計ってみるとなんと0.012mm!つまり4枚重ねてもまだティッシュ1枚にも相当しないほどの薄さなのです。池田くんの最愛の友は他の何よりもなじむという「雪月」というかんな。池田くんが何やら手で触っていますが…

番組スタッフ:手で触って何かわかるんですか?
池田くん:少し刃が出ているんで、左右の刃の出がちゃんと均等かどうかを調べています。

かんなを薄くかけるポイントは、いかに刃の飛び出しを微調整できるかに懸かっています。刃の調整は鋼の部分を叩いて刃を出し、木の台を叩いて刃を戻します。

一見アバウトに見える作業ですが、池田くんの刃の飛び出しは毎日毎日およそ0.01mmに調整させているのです。そんな池田くんの将来の夢は…

池田くん:早く仕事を覚えて、一通り自分で家を造れるようになることですかね。

奈良屋が生んだ天才タイル職人

次は岩手県のタイル張り専門会社株式会社奈良屋へやって来ました。早速、技能五輪の日本代表選手の居場所へ連れていってもらうことに!小野寺社長の後をついていくと…

小野寺社長:ここがタイルの専門学校です。タイルの技能士を育てるのです。

なんと奈良屋さんは社内に「奈良屋学校」というタイル張り専門の学校を作ってしまいました!
ここでは若手職人がみな共同生活を送り、寝食を共にしながらタイル張りの勉強をしています。
そんな奈良屋さんは、実は技能五輪の常連チームとして知られています。
なんと12年連続でタイル張り部門に県代表として出場し、しかも世界大会には3人の選手を送り込んだほどの有力チームなのです!

そんな奈良屋が生んだ日本一のタイル張り職人は、「タイル張り」部門日本代表、奈良屋所属、高橋虜太選手 (22歳)!
ヨーロッパではかなりの人気を誇るタイル張りの世界。今回、日本代表として欧州のタイル職人と互角に戦い、高橋くんは日本のスゴさを見せつけました!その匠の技に魅了され、会場は黒山の人だかりになりました。

株式会社奈良屋工務課長の佐々木正志さんにお話を伺いました。

番組スタッフ:高橋くんのどんなところがスコイんですか?
佐々木さん:スピードと正確性ですね。この2つを兼ね備えているのはなかなかいません。

ここで高橋くんに「TBS」という文字をタイルで作ってもらうことにしました!図面にはタイルの大きさとデザインしか描いてありません。曲線の目地幅などを瞬時に計算しながらの作業になります。高橋くんのスピードUP法は、図面を完璧に頭に叩き込むこと!感覚でカットしたタイルを計測器を使うことなく手際よく張り付けていきます。

タイル張り競技はスピードが命なので、壁とタイルをつなぐ接着剤が乾かないように、素早くタイルを張り付けていきます。

仕上がりの良し悪しを決めるのが目地幅!決められた2mmに均一に保つことが審査の必須条件なのです!なんと高橋くんの作品はどこを計っても2mmピッタリ!そんな高橋くんは今業界から大注目を浴びています。

佐々木さん:ゼネコンさんからは「世界大会に出た職人をうちの会社によこせ」「俺の現場によこせ」など名指しで指名があるのです。鹿島建設さんや清水建設さんからオファーがありました。

タイル張り日本代表の高橋くんのおかげで宣伝効果はバッチリ!受注量も大幅UPを見込んでいます!タイルでがっちり!

▼スタジオでお話を伺いました。
稲垣さん:手先の器用さだけではなくて、フィーリングであったり、頭脳明晰でなければいけないし、色んな要素を兼ね備えていますよね。

森永さん:中小企業にとっては会社の名誉であるだけではなくて、奈良屋さんのように大手ゼネコンから発注がくるので、技能五輪で上位に食い込めば仕事が増えるので実利的な部分でも参加する意味は大きいですよね。

加藤:いつか自分が家を建てるときは、あの子にタイル張ってもらって、あの子に家造ってもらいたいって思いますもんね。

森永さん:木造建築は長持ちしないと考えている人が多いと思うんですが、もう法隆寺は 1000年以上建っています。良い木造建築は長持ちするし、健康にも良く、地震にも強いので本当にいいことだらけなんですよ。

進藤:では、この全47種目の中で今後絶対注目というのはどれでしょうか?

森永さん:それは「溶接」なんです!溶接というのは産業界にとってとても重要な技術なんです。これが日本は今までトップレベルを走ってきたのですが、今回の技能五輪では日本と韓国とカナダが全部完璧だったので同点優勝でした。これは日本の溶接技術も安穏としていられないということなんです!溶接でしっかりものづくりをしないと日本のものづくり大国は維持出来ません!

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