過去の放送内容
2005年8月21日放送

特集
日本の伝統技術
ゲスト
森永卓郎さん(UFJ総合研究所客員主席研究員、独協大学特任教授)・眞鍋かをりさん
世界の大ヒット商品を支える日本の伝統技術 その1
若者が愛用するハイテク製品は田んぼのど真ん中で!
古くから日本に受け継がれる、職人芸や伝統品。
それが今、最先端の商品や最新テクノロジーとして、大注目を浴びている!!
世界中の若者たちに大流行、あの大ヒット商品は新潟のおじさんが作っていた!
日本伝統の味、醤油から生まれた脅威のテクノロジー、NASAも大注目!!
謎の光る物体とは!?
高松古墳にも使われたある材料を使い、カセットテープやクレジットカードで世界制覇!
日本古来の伝統工芸、漆塗り。
いまやあんなものやこんなモノまで!!
京都の西陣織もとんでもないことになっちゃってます!!
最先端技術の中に生きる日本伝統の技、古いからってバカにしてると儲かりませんぞ!
というわけでやってきたのは、新潟県燕市。
米どころとあって、何処も彼処も田んぼだらけ!
その田んぼのど真ん中にあるこちらの工場。小林研業さん。
小林一夫社長、61歳。

世界中の若者が愛用するハイテク製品を作っているんだとか。
それはなんとiPod!

iPodと言えば、世界で、1000万台売れている超小型音楽プレイヤー。
小林社長の持つ伝統技術がなければ、これほど売れなかったと言われているんですが。
その小林社長、このiPodの裏面の部分を磨いたのです!!
このピカピカの面が好きという理由で、iPodを買った方もたくさんいるんだとか!
実は、小林研業は磨き屋さん。
磨き屋とはバフと呼ばれる専用の磨き道具でステンレスやアルミといった金属製の部品などをピカピカに磨く技術を持つ方たちのこと。
ここ新潟県燕市はスプーンやフォーク、お皿など洋食器の加工や磨き技術で90年の歴史のある町なんです。
中でもこの小林研業は従業員4人ながら、磨きのプロ中のプロ!
そのスゴイ技術を見せてもらいました。
こちらがiPodに使われている磨かれる前のステンレス。

それを小林社長が絶妙な力加減で磨いていくと

みごとにピカピカ!
現在人件費のかからない海外に仕事の発注が増え、だんだん廃れて来ている磨きの技術。
燕市では磨き屋シンジケートという職人集団を結成。
地域の業者が一体となり、より一層、磨きの技術の力をいれています。
その磨きの評判を聞いたアップル社が仕事を依頼し、見事に大成功したのでした!
現在社長はマグネシウムの磨きに力をいれ、大手家電メーカーの部品、ロボットのパーツ、人工関節、医療機器なども手掛けています。
世界でiPodが愛される理由、それは田んぼの中心にいる頑固職人の伝統技術にありました。
世界の大ヒット商品を支える日本の伝統技術 その2
しょうゆ作りから驚異の光る物質!
9百年近い歴史を持つ、日本が世界に誇る調味料しょうゆ。
長年受け継がれてきた、醸造技術から世界を驚かすテクノロジーが生み出されていた!
しょうゆ作りから驚異の技術を生み出したのはキッコーマン株式会社!
あのアメリカのNASAも大注目しているという!!
さっそく、千葉県野田市にあるキッコーマンの研究所を直撃!
実は、光る物質を作ることに成功したんです。光る物質とは!?

この光る物質の正体は、発光酵素ルシフェラーゼ。
あの蛍の光の元となる酵素なんです。
でも何でしょうゆ会社がそんなものを作ったのか?
しょうゆは微生物の働きによってできる発酵調味料。
そのためしょうゆの醸造会社は大豆を発酵させるために必要な酵素などの研究を長年行ってきました。その研究の過程で、キッコーマンはホタルからしか採れなかった、発光酵素ルシフェラーゼの開発に成功。ルシフェラーゼは、微生物を始め、すべての生物の細胞に含まれるATPという物質に反応して光を発します。
そのためルシフェラーゼを使えば、従来、2〜3日かかっていた、雑菌などを調べる検査が1分もかからずにできるようになったのです!
このルシフェラーゼの検査法は世界中から引っ張りだこ!
NASAの火星・生物探査プロジェクトでは地球から生物を持ち込んだら意味がないと、探査機などに微生物がついていないかを検査する手段としてルシフェラーゼが試験的に導入されているのです。
また、結婚披露宴などのイベントにも使われるなど、ルシフェラーゼの活躍は無限大。

世界の大ヒット商品を支える日本の伝統技術 その3
江戸時代からの老舗がエレクトロニクスを支える!
とあるオフィスビルの一角にあるこちらの会社、伝統技術で、年商250億円の戸田工業株式会社。
さっそくお話を伺おうと思ったら、なんと会社顧問、常務取締役、そして社長の重役3人衆が登場。

酸化鉄つまり鉄さびをエレクトロニクスに活用しているのが、戸田工業株式会社なんです。
酸化鉄は元々、山などから採れる、鉄さび。
古くは、ラスコーの壁画や、エジプトの壁画など、絵を描くための顔料として使用されてきたもの。
日本では高松塚古墳の壁画や源氏物語の挿絵に使われました。
そして酸化鉄で最も有名なのが、江戸時代の陶工、柿右衛門の「赤絵のワザ」柿右衛門は酸化鉄を塗る量や焼き上げの時間などで、さまざまな赤色を表現したのです。
その柿右衛門の技術に注目したのが、江戸時代から、顔料を売っていたと言う、戸田工業。
酸化鉄を大量につくる業化に成功した戸田工業は、酸化鉄が磁気をもつ素材であることを発見!
戸田の酸化鉄は世界になくてはならないものとなったのです。

テレホンカードや切符、クレジットカードなども磁気コードも戸田の酸化鉄を使用!
また、カセットテープなどのテープ類が世界に使われるようになったのも戸田のおかげ、コピー機で使うトナーも戸田の酸化鉄です!
古来から伝わる伝統の素材を受け継ぎ現代の技術にいかしているのが、戸田工業!
世界の大ヒット商品を支える日本の伝統技術 その4
逆転の発想で漆を生まれ変わらせる!
古くから良き伝統いきづく京都。
そんな京都に伝統技術を生まれ変わらせたいという、老舗、佐藤喜代松商店。
創業100年、独特の温もりを現在に伝える漆の製造・販売メーカー。
こちらは、三代目社長の佐藤豊さん。

佐藤さんが新たに開発した漆その名も「MR-III 雅」は、従来の漆と全く違うんです。
自動織機洗い機に入れても表面が剥がれません!
太陽にさらされても変色しない。
また手がかぶれにくいという特徴まで。
漆文化を復活させることは出来ないものか、と佐藤さんは伝統的な漆の作り方を一から見直しました。これまでは加熱処理していたものを熱を加えないことでより質の高いものになることを発見。
逆転の発想で新しい漆の開発に成功したのです。
そんな佐藤さんが考えた新たな商品が、漆塗りのアタッシュケース、漆塗りの携帯電話。

耐水性に優れているため靴やミュールにも漆を使うことが可能になったのです。
さらに社長は自動車にまで漆を塗ってしまったのです。
新しい漆の高級感と耐久性を知ってもらうため、2年前に新車を買い、漆で塗装。
雨が降ろうが雪が降ろうが毎日乗っているんだとか。
一台塗るのに100万円程度かかるとのことです。
漆を心から愛してやまない佐藤さん。
漆の素晴らしさを多くの人に知ってもらい、この新しい漆がさまざまなものに使われることを夢見ています。
世界の大ヒット商品を支える日本の伝統技術 その5
西陣織と最新の技術との融合に挑戦!
続いてやってきたのは、京都府美山町。
こちらのかやぶき屋根の家にも伝統技術で夢見るすごい人物がいるという。

帯の田村屋 田村成一社長。
伝統を受け継ぐのは1200年の歴史を誇る「西陣織」

この伝統的な織物もこのところ元気がないという。
「西陣織」の売り上げは激減。現在は30年前の10分の1にまで落ち込んでいます。
このままの状態では西陣織は廃れてしまう、次の世代へ京都の伝統技術を伝えていきたい。
田村社長は西陣織と最新の技術との融合に挑戦したのです。
それは、西陣織と光ファイバー。
光を放っている模様一つ一つに光ファイバーが織り込まれているのです。
京都の伝統技術「西陣織」を後世に伝えていきたい!そんな田村社長の熱い思いがこの光の一つ一つにちりばめられています。

引き続き、スタジオでゲストに質問しました。
Q:これからブレイクしそうな伝統技術はなんですか?
A:それは墨です。墨は今、リビングに飾るオブジェとしてもとても人気で、脱臭効果があり、タケノコの洗顔料や歯磨き粉などさまざまなものに活用されているのです。