コラム

2018年11月25日更新 text by 寺田辰朗

第7回各チームのレースプランが表れた区間配置
エースの意地がぶつかり合う3区、大逆転が起こりうる5区に注目

内容

大会前日の11月24日に区間エントリーが決定した。
3強のパナソニック、第一生命、JP日本郵政グループはほぼ、予定通りに主力選手が主要区間に起用された。
プリンセス駅伝優勝のワコールと積水化学は1区と3区にエースを配し、前半でトップに立つ戦略。
資生堂も3区が超強力だ。天満屋や京セラも1〜3区で好位置につけたい布陣。
ヤマダ電機と豊田自動織機は4区がポイントとなるか。各チームの区間配置の狙いとともに、区間毎の見どころを紹介していく。

序盤で前に行きたいパナソニックとワコール

1・2区で少しでも前に出たいのはどのチームも同じだが、1区に前回区間賞の森田香織(23)を起用したパナソニックと、エースの一山麻緒(21)を持ってきたワコールは、なんとしても序盤でリードしたい。
一山は入社1年目の一昨年は区間賞を取った選手。前回も先頭に立って積極的なレースを見せたが、逃げ切れずにトップから10秒差の区間6位に終わった。その反省で今回は自重するのか、同じように積極的に行くのか。後者だとしたら昨年よりも、状態の良さに手応えを感じていることになる。
森田は前回残り400mでスパートしたが、今回は「アルバカーキ(直前合宿)でラスト400m以外のイメージも作ってきました」と言う。「レースが始まってみないとタイミングはわかりませんが、どんな場面で行くことになっても、思い切りが必要です」
昨年は区間賞を、そこまで強く狙っていたわけではない。それに対して今年は、はっきりと区間賞を狙って行く。
それができれば、今シーズンのトラックで突き抜けられなかった状態から、ステップアップができると考えている。

パナソニックは2区にキャプテンの内藤早紀子(24)を起用してきた。
前回区間賞トリオの1人で2区を走った渡邊菜々美(19)は3区に回ったが、内藤もチーム内では「四天王と呼ばれている」(安養寺俊隆監督)くらい好調の選手だ。
万が一1区で区間賞を取れなくても、パナソニックは1・2区セットでトップに立つ戦力だ。
豊田自動織機も1区に復調した元アジア大会代表の萩原歩美(26)、2区に山本菜緒(22)と、「調子の良い順に1区から並べた」(長谷川重夫監督)布陣に。元々、中距離選手を2区の距離に対応させるノウハウを持つチーム。豊田自動織機が序盤を突っ走る可能性もある。

積水化学もプリンセス駅伝1区区間賞の佐藤早也伽(24)を起用。地元の宮城県出身ということも背中を押すだろう。プリンセス駅伝は1区区間7位に終わったが、ユニバーサルエンターテインメントの鷲見梓沙(22)も15年世界陸上5000m代表だ。
1・2区セットで見た時、ダイハツと第一生命グループ、天満屋も上位に食い込んでくるはずだ。
JP日本郵政グループは序盤に不確定要素がある。1区が宇都宮恵理(25)で2区が新人の樽本知夏(19)。「大舞台での経験はない」と高橋昌彦監督も認める2人である。
しかし宇都宮は、不調とはいえリオ五輪代表だった関根花観(22)との比較で1区に抜擢された。調子は上がっている。また、3区に鈴木亜由子(27)がいることで安心感も持てるだろう。日本郵政は選手も含めて「どうなっても納得できる」(鈴木)と決めた区間配置だ。宇都宮にプレッシャーがかからない体制はとれている。
ちなみに樽本の母親は、ワコールが1992年大会に優勝したときに3区を走った福山つぐみさん。
日本郵政が勝てば、親子二代のクイーンズ駅伝優勝選手が誕生する。

3区で日本郵政とダイハツ、第一生命、京セラ、資生堂がどこまで上がるか

3区は各チームのエースが競演する。
一番の注目は「V奪回を目指す」と言う日本郵政・鈴木亜由子の走りだろう。直前に故障があった過去2年とは異なり、相当に良い状態でクイーンズ駅伝に臨むことができる。
「例年と比べて良い状態なので、思い切って走ろうかな、と思っています。区間記録はレースの流れや気象コンディションにもよるのであまり意識していませんが、明日は気温が割と高めになると思うので、自分にとっては追い風ですね。今年は3区を任せてもらいたい思いでやってきました。みんなに安心してもらいたいので、ベストを尽くします」
高橋監督もポイントとなる区間を問われて「鈴木が核になる」と答えていた。
「1・2区は区間賞を期待できるわけではありませんが、差を大きく開けられないで鈴木に渡せば、鈴木が行くと思いますよ」

ダイハツも同様の展開に持ち込みたいはずだ。ダイハツの5区は期待の大森菜月(24)だが、日本郵政の鍋島莉奈(24)に比べれば実績で劣る。10000mで日本選手権に2連勝している3区の松田瑞生(23)で、少しでも前に出ておきたい。
松田自身は直前のアルバカーキ合宿で、追い込んだ練習ができなかったと感じている。
前日会見でも「全体的にレベルアップしたチームなので、全員駅伝で全力でゴールに向かいたい。最後まであきらめずに全力を尽くします」と、自身の走りに関しては具体的な目標を話さなかった。
だが松田は、コラム[第3回]で紹介したように、今シーズンの流れで言えばここまで理想的に来ている。フォアザチームの頑張りが、爆発的な走りとなる可能性は十分ある。
パナソニックと第一生命は5区にも代表実績を持つ選手を残している。3区でトップに立つことが絶対的な役目ではないとはいえ、パナソニックは1・2区でリードする可能性がある。前回の2区で見せたように、渡邊は単独走でも1人でペースを維持できる選手。昨年に続いて独走態勢を固める役目を担うかもしれない。

第一生命はリオ五輪と昨年の世界陸上10000m代表だった上原美幸が、4年連続でエース区間を任された。9月中旬にベルリン・マラソンに出場し、10月に軽い故障などもあった。万全ではないが、持っている能力の高さでどこまで前に迫ることができるか。
資生堂と京セラはエースの力が突出しているチーム。
資生堂は14〜16年まで3年連続3区区間賞の高島由香(30)で、34分30秒の区間記録保持者でもある。京セラはアジア大会5000m代表の山ノ内みなみ(25)で、コラム[第5回]で紹介したように、最初から速いペースで入ることを課題としている。

昨年8人抜きの快走を演じた九電工の加藤岬(27)、14年アジア大会5000m代表だった積水化学の松崎璃子(25)、日本選手権10000m7位のヤマダ電機・筒井咲帆(22)も、2区終了時点のタイム差次第では先頭争いに加わることができる。
天満屋は前田穂南(22)のスピードが3区で通用するか懸念されていたが、武冨豊監督も前田自身も手応えがある様子だった。前田は「インターバルなど、速いメニューの時も楽に体を動かせるようになっています」とスピード面での成長を実感している。
3区で前田が踏ん張れば、4区の三宅紗蘭でトップに立つ可能性がある。アキレス腱痛が出て距離が短い区間に回ったが、三宅は11月17日に5000mを15分45秒86と自己記録を大幅に更新した。負担が少ない区間に回ったことで、力を発揮することもあるだろう。
豊田自動織機のヘレン・エカラレ(19)は、昨年、高校タイトルを総なめにしたスーパールーキーだ。「駅伝が好きな子で、仙台の高校(仙台育英高)出身なので意欲的です」と長谷川監督。4区のトップ選手が安全運転をしようものなら、30〜40秒を逆転してもおかしくない。

5区で勝負できるパナソニックと日本郵政、第一生命

5区に勝負できる選手を置いているチームの双璧は、パナソニック(堀)と日本郵政(鍋島)だろう。堀が10000m、鍋島が5000mでアジア大会に出場した。
堀は区間賞を取った昨年の3区がそうだったように、独走に強いタイプ。独走が好きなタイプと言ってもいい。対する鍋島は区間賞を取った一昨年の5区がそうだったように、競り合いに強いタイプだ。
パナソニックは昨年の区間賞トリオのうち2人を1・3区に起用し、できればトップで堀にタスキを渡したい。そうすれば堀が、だめ押しの走りをする。4・6区の新人が安心して走ることができる配置ともいえる。

日本郵政は1・2区で後れても3区の鈴木で先頭争いに加わり、5区の鍋島が決着をつける。仮に5区で決定的な差をつけられなくても、6区に関根がいる。不調とはいえ、五輪代表だった選手の勝負強さが発揮できる。
第一生命は2年前に5区を走った田中智美(30)で、コラム[第6回]で紹介したように、秋になって調子を上げている。2年前は9秒先に中継所を出た鍋島に2km手前で追いつき、2人で争って先頭に立った。
だが7km過ぎで鍋島に離され、6区への中継では17秒差をつけられた。
もしも今回も同じように鍋島と競り合えば、リターンマッチとなる。30歳になったが新しいトレーニング法も導入し、5000mでは練習中に自己記録に近いタイムを出した。初の宮城県開催となった11年大会に第一生命が優勝したときのアンカーで、リオ五輪代表を決めた16年名古屋ウィメンズマラソンでも、ラスト勝負で競り勝った。勝負強さは実証済みの選手である。
ダイハツは5区の大森がどんな走りをするかで、順位が大きく変わってきそうだ。昨年4区を走っているが区間9位。
実業団駅伝で大きな役割を期待されて走るのは今回が初めてだ。
コラム[第3回]で紹介したように、学生時代に大活躍した選手で、ラスト勝負には自信を持っている。

アンカーの竹山楓菜(23)も林清司監督が期待する新人。
ダイハツは実業団での実績は少ない2人が、今回の駅伝で化ける可能性に懸けた形だ。
京セラ5区の堀口あずき(20)、ヤマダ電機5区の石井寿美(23)、天満屋の松下菜摘(23)らは、1人で押して行く走りができる。
堀口は昨年のクイーンズ駅伝、今年のプリンセス駅伝と、5区で区間3位以内を続けている。石井は10000mで31分台を出した2年前の勢いが戻れば、ヤマダ電機が一気に浮上してくる可能性がある。天満屋は松下が粘れば6区に15年北京世界陸上10000m代表だった小原を残している。10月に故障があった小原だが、世界陸上の標準記録を破ったときは短い期間で立て直した。

3強のパナソニック、ダイハツ、日本郵政、そして3区に代表経験選手を起用した第一生命や京セラ、ワコールが、エースの力で流れを引き寄せる可能性が高い。
その一方で天満屋や、4区に前回6区区間賞の竹地志帆(28)を配置したヤマダ電機、同じく4区に強力な外国人選手がいる豊田自動織機が、主要区間以外でトップに立つ可能性もあるだろう。
女子駅伝日本一決定戦はどんな展開になり、平成最後の戦いは、どんなドラマで幕が閉じるのだろうか。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。

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