コラム

2018年11月24日更新 text by 寺田辰朗

第6回レース前日3強指揮官たちのコメントは?
第一生命、天満屋が3強に迫る評価

内容

大会前日(24日)の監督会議を経て、オーダー表が発表された。
パナソニックは1区に前回区間賞の森田香織(23)、3区に成長株の渡邊菜々美(19)、5区にアジア大会10000m代表だった堀優花(22)という布陣。
ダイハツは1区に前回区間4位の吉本ひかり(28)、3区に日本選手権10000m2連勝の松田瑞生(23)、5区に学生時代に大活躍した大森菜月(24)。
JP日本郵政グループは1区に3000m障害でトップレベルの宇都宮恵理(25)、3区に昨年の世界陸上10000m10位の鈴木亜由子(27)、5区に日本選手権5000m2連勝の鍋島莉奈(24)。
3強の1・3・5区は、ほぼ予想されたメンバーが出場する。3強以外では天満屋と第一生命グループも、優勝争いに加わりそうだ。

パナソニック安養寺監督が2連覇に意欲

レース前日の監督会議後に記者会見が行われ、前回の8位までのチーム(クイーンズエイト)と、予選会であるプリンセス駅伝を1位通過したワコールの監督9人が、明日のレースへの意気込みを語った。
3強指揮官のコメント内容は以下の通り。

◇パナソニック・安養寺俊隆監督
「去年は繰り上がりの優勝でしたが、今年は当初の目標通り、優勝を狙えるチームができました。この駅伝の主要区間である1・3・5区の強化ができ、3本の矢がそろった。3人が実力通り走れば、区間賞に近い走りになる。秋にかけてキャプテンの内藤(早紀子・24)が調子を上げ、チーム内では四天王と言われています。インターナショナル区間の4区と、アンカーの6区に新人の2人を起用しました。優勝を狙うなら、4区と6区がポイントになります」

◇ダイハツ・林清司監督
「ケガなく走ってくれたら、前の方で走ることができるチームはできました。それを期待したい。ポイントはやはり3区と5区の、順位が大きく変わる区間です。2人とも元気なので、結果は出ると思っています。6区の竹山(楓菜・23)は長めの距離に強いですし、下りにも強い。2年前の吉本(6区で区間8位)より良い状態です」

◇日本郵政・高橋昌彦監督
「2016年、17年と上位争いができました。今年も選手たちに(優勝争いを)期待しています。去年、一昨年と十分な走りができなかった鈴木が、今年は故障なく出られるので、そこが核になるでしょう。どれくらいの差で3区に渡せるかが1つのポイントになります。鈴木と並ぶ鍋島を5区に起用しました。そこでも順位を上げたいですね」
3強の監督たちのコメントは、明日のテレビ観戦の参考になるのではないか。

第一生命はベテラン、若手とも上り調子

前回4位の第一生命グループは今季、トラックの好タイムがほとんど出ていない。
優勝争いは難しいと思われていたが、クイーンズ駅伝が近づき選手たちの足並みがそろってきた。3区の上原美幸(23)だけでなく、1区の嵯峨山佳菜未(20)、5区の田中智美(30)も練習で手応えのある走りをしている。

リオ五輪マラソン代表だった田中は、リオ五輪後のクイーンズ駅伝5区を区間3位(チームは2位)で走った後、「まるまる3カ月、走りませんでした」と休養期間に入った。
もう一度走り始めたのは、やはり東京五輪への思いが大きかったからだ。「リオ五輪が自分の走りができず、心残りがありました」
今年に入って2月にロードの10km、3月にハーフマラソン、4月にトラックの5000mを走ったが、5月に右アキレス腱の痛みが出てしまった。1カ月以上走る練習ができなかったが、それが治ると駅伝を目標にした。駅伝後にはマラソン出場も見据えてトレーニングを進めてきた。
「これまでマラソン練習を始める前にケガをしてしまうことが多かったので、スピードがある状態でマラソン練習に入ったことがありませんでした。今回は駅伝のスピードがあるなかでマラソン練習に入りたい。ケガからの立ち上げはかなり慎重に、ゆっくり始めましたね」
故障はしていても、体幹トレーニングを見直したり、走ること以外の練習で工夫を凝らしたりした。
10月には練習中の5000mを15分40秒台で走ったという。タイムを上げるため練習量を大きく落とさなかったし、5000mの終盤も「上げなくていいよ、と言われていたので抑え気味に」走った。「自己記録に近い」感触を得られたという。
「チームの目標は優勝です。私のところでトップに立ちたいですね。これまで5区の私の最高記録は32分47秒(16年)です。それよりも速いタイムで走ります」

1区の嵯峨山も3月に恥骨を疲労骨折し、「4、5、6月は何もできなかった」シーズンになってしまった。
10月20日の5000mでも16分02秒05と、昨年出した15分41秒34の自己記録とは開きがあった。
だが、故障をしている間に気持ちの整理を行った。
「嫌でも自分と向き合うことになったので、自分についてゆっくり考えました。会社に行けば皆さん私のことを心配してくれて、人の温かみに触れられました。考え方が変わったと思います」
田中と同様に練習中の5000mでは、15分40秒台で走った。自己新と言っていいくらいのタイムである。
前回も1区で区間7位。トップとは13秒差で2区につないでいる。
「去年は憧れの選手たちと走ることができて、チャレンジできただけで楽しかった。ついていくことに必死で、上位でタスキを渡すことだけを考えていました。今年は区間賞を狙って走ります」
2区の原田紋里(20)も1年前の区間5位から上積みが期待できる。昨年以上に上位の流れでエースの上原、そして優勝を狙える位置で田中にタスキが渡るはずだ。

天満屋は5区に環太平洋大出身の松下を起用

クイーンズ駅伝が近づいてくるにしたがって、3強に天満屋を加えて「4強ではないか」という声も出始めた。
1週間前(11月17日)の中国実業団記録会5000mで天満屋勢に好記録が続出。
中でも入社1年目の三宅紗蘭(19)が、一山麻緒(ワコール・21)に次いで2位に入り、15分45秒86と自己記録を大幅に更新した。武冨豊監督も5区に起用することを決断。入社1・2年目で5区に抜擢された選手が、マラソンで日本代表レベルに育つ。天満屋の育成パターンに合致した選手だった。

ところが三宅はその後、アキレス腱に痛みが出て練習ができなかった。
「痛みはもう消えていますが将来がある。無理はさせられない」(武冨豊監督)と、距離の一番短い4区への起用に変更した。
代わりに5区に抜擢されたのは、環太平洋大から入社2年目の松下菜摘(23)である。中国実業団記録会では三宅に続いてチーム内2位。15分48秒53とやはり自己新をマークした。
松下は学生時代、天満屋の五輪代表第1号の山口衛里さん(環太平洋大監督)の指導を受けた選手。山口監督が自身の恩師でもある武冨監督に卒業後を託した。

その松下に関して、武冨監督は次のように話している。
「最近好調で、10kmの自己記録は32分30秒ですが、それを出した時よりも力は上がっています。本人はマラソンをやる気ですが、まずは5000mからハーフマラソンで、山口監督の記録に追いつこうと頑張っています」
1・2区は昨年と同じ谷本観月(23)と西脇舞(25)で、直前の5000mのタイムも、シーズンを通じた成績でも、昨年より上積みが期待できる。
3区は大阪国際女子マラソン2位の前田穂南(22)が走る。
10kmのスピードでは、トラックの代表たちが揃う3区では分が悪いが、武冨監督は「5000mで15分38秒16の自己新を出した頃に、スピードを戻せている」と心配していない。トップに出るのは難しいかもしれないが、上位でタスキをつなぐスピードはついている。
3区と5区を、他チームのエースたちにそれほど離されずにつなぐことができれば、他の4区間では天満屋が一番充実している。エース区間以外では、天満屋の選手がぐんぐん追い上げるシーンが何度も見られそうだ。第2中継車の映像も要チェックだろう。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。

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