コラム

2021年11月26日更新 text by 寺田辰朗

第5回資生堂が日本郵政、積水化学に劣らない選手層の厚さ
高島、木村、佐藤、五島。主要区間候補4人の実績と特徴は?

内容

選手層の厚さでは資生堂が参加チーム中一番かもしれない。高島由香(33)が16年リオ五輪10000m、木村友香(27)が19年世界陸上ドーハ5000m代表だった。2人に続くのが佐藤成葉(24)と五島莉乃(24)の入社2年目コンビで、2年前の日本インカレ10000mでは佐藤が優勝、五島が2位と世代トップレベルだった。日隈彩美(24)と樺沢和佳奈(22)は1500m4分10秒台のスピードランナーで、距離の短い2区に対応する。そして資生堂の強みは4区に、全日本実業団陸上5000m優勝者のジュディ・ジェプングティチ(18)を起用できること。
昨年は高島と木村の代表経験コンビが故障でチーム力が低下していたが、5区までは7位をキープした。2人が完全復活を遂げた今回は、まったく死角のないチームになっている。

●変幻自在に組めるオーダー。1区最有力候補は木村

資生堂ほど多彩なオーダーが組めるチームはない。主要区間である1・3・5区の候補に高島、木村、佐藤、五島と4人が挙がっている。
1区の最有力候補は木村だろう。昨年から距離が7.0kmから7.6kmに延び、重要度がより大きくなっている区間。木村は17年大会時に、ユニバーサルエンターテインメントの1区を区間2位相当で走っている(ユニバーサルは1位でフィニッシュしたが、5区選手のドーピング違反で失格)。タイムは22分06秒だったが、資生堂に移籍後の19年大会でもまったく同じ22分06秒で走り、そのときは区間6位だった。
その2回のときより、今の木村は強くなっている。それがプリンセス駅伝1区で現れていた。風に恵まれたとはいえ、佐藤早也伽(積水化学・27)が持っていた区間記録を38秒も更新した。

さらにレース展開でも、以前より強さを感じさせた。
「これまでの私はラスト400mの勝負だけでしたが、自分の殻を破るために3km以降自分でリズムを作って走りました」
この走りができれば、JP日本郵政グループが廣中璃梨佳(21)を起用してきたときの対応の幅が広がる。19年大会では廣中の独走を許し、34秒もの差をつけられたが、今の木村なら終盤までついていくことができるのではないか。
「(東京五輪代表だった)廣中さん、萩谷(楓・エディオン・21)さん、一山(麻緒・ワコール・24)さんは2段階くらいレベルが違いますが、臆することなく走りたい」
仮に廣中のスピードが前半から別次元であれば、プリンセス駅伝のような走りで2位争いを制する。どちらのケースでも、2年前のような大差になることは防ぐことができるはずだ。

●佐藤は1区と3区の実績。決着をつける6区の可能性も

佐藤も1区の可能性がある。昨年のクイーンズ駅伝は1区で区間7位。廣中には40秒離されたが、区間2位のヤマダホールディングス・清水真帆(26)からは11秒差で2区の日隈にタスキを渡した。
今年は3区起用の可能性もある。プリンセス駅伝では初めて10km区間の3区を任され区間2位。1区の木村でトップに立った資生堂は2区で第一生命グループに逆転されていたが、佐藤が3区の3km過ぎでトップを奪い返した。
「良い位置でタスキをもらえたので自分のペースで走ることができ、後半でペースダウンすることなく走りきれました。長い距離に対する不安もありましたが、自信になりましたね。5秒前に第一生命がいましたが、事前にコーチと入念にシミュレーションをして、一気に追いつくのではなく徐々に詰めていきまた」
エディオン・萩谷に22秒負けているので、五輪代表たちとはまだ少し差がある。佐藤が3区なら、1区の木村で好位置に付け、その位置をキープする役割か。「もし3区ならレベルはプリンセスより確実に上がります。でもトップ選手と差をつけられないような意識で夏からやってきました。他の優勝候補のエースは本当に強いので怖さはありますが、自分のベストを貫きたい」
1、3区だけでなく、後半の5、6区の可能性も佐藤にはある。5区は昨年、高島が欠場にならなければ佐藤が走る予定だった。アンカーの6区は、インカレなどで見せた勝負強さで、最後に前に出る走りが期待できる。
どの区間にも対応できる佐藤がいることで資生堂は、攻める区間と守る区間を自在に設定できる有利さを持っている。

●3区で区間賞3回の実績を持つ高島

だが3区の実績で一番の選手は高島だ。デンソー時代の14年、15年と2年連続区間賞の走りでチームの3連勝に貢献した。そして資生堂に移籍した16年も区間賞。3年連続エース区間区間賞という快挙をやってのけている。
しかし17年以降は区間3位・3位・7位。当時のチームでは確実にエースの役割を果たしていたが、タイム的には以前より落ちていた。そして昨年は左の座骨の故障で欠場した。実業団2年目の08年からの連続出場が途切れてしまったのだ。その後も9月まで、試合に出られなかった。
「故障がここまで長く続いたのは初めてです。『自分はもうダメなんだ、競技はあきらめよう』という思いもよぎりましたが、『後輩が自分の背中を見ている、簡単にあきらめる姿を見せては彼女たちのためにもならない。だから諦めない背中を見せないといけない』と思い直してやってきました」
9月の3000mは9分22秒91と試運転的な走りだったが、プリンセス駅伝5区では、同じリオ五輪代表だった上原美幸(鹿児島銀行)が持っていた区間記録を24秒も更新した。
「プリンセスは練習の一環で、自分としては5割くらい戻ったかなという感覚でのレースでした。思ったより体が動いてくれて、手応えを感じられましたし、長い間試合から遠ざかっていたので自信にもなりました」

高島が3区区間賞を取り続けていたときのタイムは34分30〜40秒。昨年の新谷仁美(積水化学・33)だけは33分20秒と別次元だが、3区の歴代2位記録は昨年の鍋島莉奈(JP日本郵政グループ・27)の34分25秒で、高島が15年に出した34分30秒は歴代3位。新谷も前回の状態には戻っていないので、2区終了時の位置次第では3区の高島で資生堂がトップに立つ展開もあり得る。最低でも3位以内で前半を終えられるだろう。
プリンセス駅伝と同様に高島が5区という可能性もある。そのときは佐藤や五島が3区で日本郵政や積水化学との差を最小限にとどめ、5区の高島で勝負をかける布陣になる。

●プリンセス駅伝で温存された五島も主要区間候補

五島も主要区間を走る力がある。
プリンセス駅伝は「温存」(岩水嘉孝監督)された。すねの故障で万全でなかったこともあるが、「代表経験コンビを復活させることと、新人を試すこと」を岩水監督が優先したためである。
実績もある。去年のクイーンズの五島は3区区間6位。「自分のマックスは出すことができましたが、区間上位の3人(新谷、鍋島、一山)とは力の差を感じました。そのレベルの人とも争える強さを身に着けたい。そう思ったきっかけのレースになりました」
今年の日本選手権5000mは自己記録に迫るタイムで7位に入賞した。五島も代表選手たちにも迫る力を身につけつつある。
昨年は高島が欠場しなければ1区の予定で、その準備もしっかりできていた。同期の佐藤と同じで、1・3・5・6区のどの区間でも任せられる。
「1区ならチームを勢いづける走りをしたい。ラストのスピードも重要なので、そこに対応できる準備をします。3区なら去年のリベンジをしたいです。少しでも上位の人に近い順位で走りたい。5区ならみんなから受けたタスキを勢いづけてアンカーに託せるようにしたい。6区ならゴールするまで全力で、皆がつないだタスキを運びたい。ラストの爆発力があるわけではないので、ロングスパートで勝ち切りたいですね」
アンカーが五島でも佐藤でも、6区の区間賞候補筆頭になるのではないか。
そして今年の資生堂は主要区間候補の4人だけではない。繰り返すが4区にはジェプングティチもいる。選手層の厚さはJP日本郵政グループや積水化学をしのぐといえるほどなのだ。

木村が「資生堂は若手が多く勢いがあるチーム。自分がチームの軸になって勢いをつけられる走りがしたい」と言えば、3度の優勝経験を持つ高島も以下のように話す。
「チームとしてはこれまで優勝できたらいいね、という感じでしたが、今年はクイーンズで優勝できるんだ、と言えるようになったことが大きい。前のチームで3連覇したときよりも、さらに強いメンバーがそろっているように思います」
宮城県開催となって11回目。12年のユニバーサルエンターテインメント、16年のJP日本郵政グループ、17年のパナソニックに続き、シード圏外(前回9位以下)からの女王チームが誕生するかもしれない。

バックナンバー

寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。