コラム

2021年11月21日更新 text by 寺田辰朗

第1回東京五輪代表が次々に登場するクイーンズ駅伝
日本郵政、積水化学、資生堂、ワコールらが華やかでハイレベルの優勝争い

内容

女子駅伝日本一を決める季節がやって来た。クイーンズ駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝)が11月28日、宮城県松島町をスタートし仙台市弘進ゴムアスリートパーク仙台にフィニッシュする6区間42.195kmで行われる。各区間の距離とコース図はこちらのページ
優勝争いは2連勝中のJP日本郵政グループを中心に、前回2位の積水化学、同4位のワコール、プリンセス駅伝(全日本実業団対抗女子駅伝予選会)1位の資生堂などで争われそうだ。
今年の特徴は東京五輪代表が多数走ること。五輪イヤーに相応しく、ハイレベルで華やかな戦いが宮城路を舞台に繰り広げられる。

●前回は日本郵政と積水化学の東京五輪代表4人全員が区間賞の快挙
ともに東京五輪代表2人を擁する前回優勝のJP日本郵政グループと、前回2位の積水化学が今年も激突する。
クイーンズ駅伝にエントリーされた東京五輪代表選手は以下の8人。

内容

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JP日本郵政グループ:廣中璃梨佳(5000m&10000m)&鈴木亜由子(マラソン)
積水化学:卜部蘭(1500m)&新谷仁美(10000m)
ワコール:一山麻緒(マラソン)&安藤友香(10000m)
天満屋:前田穂南(マラソン)
エディオン:萩谷楓(5000m)
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1年前に代表に決まっていたのは鈴木だけだったが、日本郵政と積水化学の五輪代表4人全員が前回のクイーンズ駅伝で区間賞の快走を見せていた。
1区では日本郵政の廣中が2位・ヤマダホールディングスに31秒の大差をつけた。2区では積水化学の卜部が2位に上がり、日本郵政に10秒差と迫った。そして3区では積水化学の新谷が区間記録を1分05秒も更新する圧倒的な走りで、日本郵政を逆転してトップに立った。それを日本郵政の5区の鈴木が、積水化学との1分5秒差を逆転してトップに立った。
クイーンズ駅伝40回の歴史を振り返っても、翌年の五輪代表が3人以上区間賞を取ったことはない。前回のクイーンズ駅伝は画期的なレースだったのだ。

今年も五輪代表選手の走りが勝敗に大きく影響する。日本郵政は前回3区区間2位の鍋島莉奈(27)を故障でエントリーできなかったので、廣中と鈴木で1区と3区を分担すると予想される。積水化学がこの1年間で多くの選手が自己新を出していることを考えると、廣中が1区なら前回以上に2位以下を引き離す必要がある。鈴木が1区で廣中が3区なら、3区でそれなりの貯金を作りたい。
積水化学はやはり新谷の走りが重要になる。今シーズンの試合では、絶好調だった昨年10〜12月の走りを再現できていないが、前回の区間記録からマイナス30秒でも区間2位を圧倒できる(ただし廣中が同じ区間だと勝敗はわからない)。新谷の走り次第でレース展開が大きく違ってくる。
しかし改めて言うまでもなく、駅伝は総合力の勝負である。五輪代表以外の選手の走りも勝敗を左右する。

クイーンズ駅伝での実績と新戦力では、日本郵政が勝る。前回6区区間賞の大西ひかり(21)は持久型のランナーで、2年前の優勝時には5区区間4位でトップを堅実にキープした。菅田雅香(20)は2年連続2区を走っているスピードランナーで、2年前には区間2位で走っている。
さらに三原梓(18)と小坂井智絵(18)という強力新人が加入した。6月のU20日本選手権5000mで小坂井が2位、三原が3位に入っている。2人とも5000mの自己記録は15分40秒台前半で、主要区間(1、3、5区)以外なら区間賞争いも望めるレベルだ。
それに対して積水化学は、この1年間で自己新記録を出している選手が多い。前回1区区間3位の佐藤早也伽(27)は昨年のクイーンズ駅伝以降、10000m、3000m、5000mと自己記録を更新。来年の世界陸上オレゴンにはマラソンでの出場を目指しているが、5000mでも15分08秒72と参加標準記録を突破した。
前キャプテンの森智香子(29)が1500mと5000mで自己新、特に1500mの4分14秒97は評価が高い。2年目の木村梨七(19)も5000mで15分35秒61と自己記録を大きく更新。この2人のうちどちらかに1区を任せられるようだと、新谷や佐藤を前回とは別の区間へ起用するオーダーも可能になる。
日本郵政と積水化学は前回の成功パターンにこだわらず、新たな区間配置で優勝を狙う可能性があるといえそうだ。

●主要区間候補の多い資生堂と、東京五輪代表コンビを生かしたいワコール

プリンセス駅伝をコース新記録で1位通過した資生堂にも、日本郵政や積水化学に劣らない選手層の厚さがある。
東京五輪代表こそ輩出できなかったが、2人の日本代表経験者がプリンセス駅伝で復活の走りを見せた。19年世界陸上ドーハ5000m代表だった木村友香(27)が1区(7.0km)で区間記録を38秒、16年リオ五輪10000m代表だった高島由香(33)が5区(10.4km)で区間記録を24秒も更新した。木村と高島が1、3区なら、4区の全日本実業団5000m優勝のJ・ジェプングティチ(18)でトップに立つ展開が期待できる。

入社2年目の佐藤成葉(24)もプリンセス駅伝3区区間2位と、自身初の10km区間で結果を出した。プリンセス駅伝では「温存」(岩水嘉孝監督)したが、同じく2年目の五島莉乃(24)は日本選手権5000m7位の選手。2年前の日本インカレ10000m1、2位の2人のうち、1人は主要区間以外に回ることができる。主要区間候補選手の多さは資生堂が一番かもしれない。
佐藤がプリンセス駅伝と同じ3区なら、4区のジェプングティチで追い上げ5区の高島で逆転する。3区が高島なら前述のように4区でトップに立ち、5、6区の2年目コンビで逃げ切る。資生堂も区間配置は何パターンも考えられる。
前回4位のワコールは、今季の選手層の厚さでは日本郵政、積水化学、資生堂の3チームに及ばないが、東京五輪代表コンビの一山麻緒(24)と安藤友香(27)を生かすことができれば勝機が生まれる。
前回は1区・安藤が区間12位で、廣中に1分24秒差をつけられた。3区の一山が区間3位でチームを4位に浮上させたものの、優勝争いの背中は見えなかった。
安藤の奮起が不可欠だが、今季の安藤は2月の全日本実業団ハーフマラソンに優勝し、5月の日本選手権10000mでも31分18秒18の自己新で2位。17年世界陸上マラソンで代表歴があるが、トラックでも五輪代表入りを果たした。今の安藤なら昨年の二の舞は演じないはずだ。

一山は東京五輪マラソンで8位。日本勢で唯一人入賞し、日本女子マラソンの牙城を守った。トラックでも昨年12月の日本選手権10000mを31分11秒56で走り、新谷に次いで2位に入っている。佐藤や安藤に先着したスピードランナーである。
ワコールが優勝争いに加わるには、福岡大から入社した井手彩乃(22)の走りが重要になりそうだ。日本インカレ1500mで3年時に6位、4年時に7位と連続入賞はしているが、自己記録は4分25秒10だった選手。その選手が入社3か月目の日本選手権1500mで3位に入ったのである。自己記録も4分13秒49と大幅に更新した。5000mでも7月に15分44秒41をマークしている。
安藤と一山の間をつなぐ2区で井手が快走すれば、3区終了時にワコールが日本郵政や積水化学に先行する可能性もある。前回5区区間3位の谷口真菜(22)、前回6区区間2位の福士加代子(39)に、今季は20年シーズンほどの記録が出ていないが、2人が復調していれば優勝争いに加わることができる。

●今年は区間配置の予想が難しい駅伝に

クイーンズ駅伝は故障者がいる場合を除けば、区間配置の予想がしやすい駅伝だが、今年はそう言い切れない大会になりそうだ。それが東京五輪代表選手たちの出場区間も左右するので、なおさら気になるところだ。
JP日本郵政グループは廣中が2年連続1区で区間賞を取っているが、東京五輪10000m7位入賞など、今季のトラックの実績は頭1つ抜けている。3区起用も十分あり得る。
昨年は松田瑞生(ダイハツ・26)や萩谷楓(エディオン・21)、萩原歩美(豊田自動織機・29)、鷲見梓沙(ユニバーサルエンターテインメント・25)ら、エースを1区に起用してきたチームもあった。チーム内の事情だった可能性もあるが、廣中との差を最小限にとどめる意味があったかもしれない。
他チームの指揮官たちが今年は“廣中3区”と読めば、1区の出遅れを昨年ほど気にしなくてよくなるため、エースは定石通り3区に起用するだろう。しかし各チームのエースが3区と予想できれば、日本郵政はその裏をかいて廣中を1区に起用することもできる。
積水化学の区間配置も他チームの選手起用に影響しそうだ。昨年の積水化学は1区・佐藤、2区・卜部、3区・新谷の前半型オーダーで、4区までトップを走った。今年も2区の卜部は確定的だが、佐藤や他の選手の成長で、2区以外は変更があるかもしれないという。
昨年は日本郵政が5区で逆転優勝したが、積水化学のオーダーをどう読むかで、ライバルチームが前半でリードを奪う作戦に出るか、後半逆転を狙うプランで臨むかが決まってくる。

ちなみに過去のクイーンズ駅伝では(他の駅伝でも)、前半でトップに立ったチームが優勝するケースが多い。宮城県開催となった11年大会以降の10大会で、優勝チームが何区でトップに立って逃げ切ったかを調べてみた。
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11年1区・第一生命グループ
12年1区・ユニバーサルエンターテインメント
13年4区・デンソー
14年3区・デンソー
15年2区・デンソー
16年5区・JP日本郵政グループ
17年1区・パナソニック
18年1区・パナソニック
19年1区・JP日本郵政グループ
20年5区・JP日本郵政グループ
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前半でトップに立ったチームが7回優勝し、後半逆転したチームの優勝が3回ある。今年はどちらのケースになるか、日本郵政や積水化学の選手起用を予想することで、レース展開も同時に予想できる。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。