去年の年末の「視点」で、
このお二人と2018年下半期公開の
映画を振り返りました。
半年に一度の「映画の振り返り」も、
今回でご一緒するのは三回目です。
お二人が選ぶ作品は、
普段、私が自ら選んで観ない作品も
多いこともあって、毎回刺激を受けますし、
観る映画の幅が広がる、楽しいお仕事です。
去年の日本映画界は、
映画専門学校「ENBUゼミナール」制作の
『カメラを止めるな』が
異例の大ヒットとなったことや、
是枝裕和監督の『万引き家族』が
カンヌ国際映画祭コンペティション部門で
最高賞「パルムドール」を受賞したことが
大きな話題となりました。
ただ、私の中では、去年は
韓国映画が熱かったという印象でした。
これもお二人の影響かもしれません。
1980年5月の光州事件を
世界に伝えたドイツ人記者と、
彼を事件の現場まで送り届けた
タクシー運転手の実話をベースに描いた
『タクシー運転手~約束は海を越えて~』、
1987年1月、全斗煥大統領による
軍事政権下の韓国で
民主化闘争の実話を描いた
『1987、ある闘いの真実』、
イ・ミョンバクとパク・クネ政権の
約9年間にわたる言論弾圧の実態を
告発したドキュメンタリー『共犯者たち』など、
韓国の歴史や実話が
もととなっている作品に衝撃を受けました。
『1987、ある闘いの真実』
物語は、1987年1月14日、
軍事政権の圧政にあえぐ国民による
反政権デモへの取り調べが
激化していた韓国で、
ソウル大学の学生パク・ジョンチョルが
警察の尋問中に死亡したことをきっかけに
事態は韓国全土を巻き込む
民主化闘争へと発展していきます。
実話ということもあり、その迫力に、
うっと声が出そうなシーンもありましたが、
警察が隠蔽した青年の死の真実を求めて、
大学生たちが命がけでデモを行うシーンでは、
刑務所看守の姪で、
これまで民主化闘争には関心がなかった
少女がある青年と出会い、
恋心を抱くと同時に
闘争に巻き込まれていく様子が
ドラマ仕立てによく描かれていました。
チャン・ジュナン監督は、
1987年、高校生だったそうです。
当時、窓の外で行われているデモを横目に、
部屋の中にまで漂ってくる催涙弾で
涙を流しながら
受験勉強をしていたといいます。
当時の自分が、
何もできなかったことに対する悔いが、
この映画を生んだのかもしれません。
2019年も素敵な映画を
たくさん観たいと思います。