2012年ありがとうございました
2013年1月25日
あけましておめでとうございます。
昨年は、私どもの制作する番組に暖かいご支援を頂きましてありがとうございました。
この年末年始は特に数多くの番組を制作する機会を頂きまして・・・
「バース・デイ」「サワコの朝」のレギュラーは勿論、
12月26日に「プロ野球戦力外通告」
12月27日に「サスケ ライジング」
1月2日に「あの時あいつに神が降りた!」の特番を放送しました。
なかでも「プロ野球戦力外通告」は、今回で9回目の放送となりました。
もともと「プロ野球戦力外通告」は、1999年に始まったスポーツドキュメンタリー「ZONE」という番組の一企画としてスタートし、その後、2004年からは特番として毎年放送してきました。
もし今年・2013年に放送があったら、10回目となります。
この番組は、我々スタッフも取材・制作にあたり通常以上に、真摯な姿勢が求められる番組です。
人生のつらく大変な時に、我々の取材を受けてくださる選手とその家族の方々。
取材をするディレクターは、客観的に取材をしなければならないのですが、長く取材をしているうちに、ディレクター自身がその選手の家族や仲間のような心情になっていきます。
そんな相反する気持ちを自分の中でコントロールしながら、そして、人生のチャレンジをしている選手に少しでも負担をかけないように・・・
と、言いながらも、すでに取材を受けていただいている段階で、ある種の迷惑はかけてしまっているわけです。だから、それ以上の迷惑はかけないように・・・、そして、編集・構成する時も、選手の方が取材を受けたことを後悔しないように、と願いながら、作っていきますね。
取材した選手の方は、それぞれの人生の決断を下していきます。
中でも、今回、オリックスに新天地が決まった松本選手。本当に頑張って欲しいです。
番組を見た人からもたくさん、“松本選手、がんばってくれると良いね”なんて声が寄せられました。オリックスのキャンプにも取材にいけたらいきたいな、と考えています。
先日、元プロ野球選手が、高校野球の指導者になる道が、これまでより大幅に緩和されたという報道がありました。元プロ野球選手が高校の野球部の監督などになるには、これまでは、「中学・高校での2年の教諭暦」という、非常に困難な条件がありました。
教員免許を持っている人ならまだしも、持っていない人は、まず、教員免許をとらなければなりません(当たり前ですが)。高校卒でプロに入った人は、大学に入り直すなどのことが必要になりますし、大学卒の人も教員免許に必要な単位は取り直さなければなりません。
「バース・デイ」でも、ダイエーから戦力外通告を受けた大越基選手が、教員免許を取るために、まず・・勉強して大学に入り、
単位をとり、大学を卒業し、
高校教諭になり、
2年たって野球部の監督になって、
さらに・・甲子園に出場するまでを描いた放送がありますが(過程を書いているだけで、大変だ)、大越さんの頑張りには本当に頭が下がります。
誰にでもできることではありません。
こうした現実が、元プロ野球選手の再就職の選択の少なさに大きな影響となっていたことは否定できないと思います。
しかし今後は、ある決められた座学による研修を受ければ、指導者になる資格を与えられる、というもので、元プロ野球選手の指導を受けられることでアマの選手にとっても幸せなことだし、元プロ野球選手の第2の人生の選択に、高校野球の指導者という道がもっと現実的に増えていくことになるでしょう。
先述した大越選手は、戦力外通告を受けた時も非常に厳しい状況でした。
2003年に大越選手は、戦力外通告を受けたのですが、その年の日本シリーズにダイエーの選手として試合にも出場していました。その年、ダイエーは日本一になるのですが、その歓喜の輪に
大越選手はいたのです。しかし、その数日後に戦力外通告を受けました。
戦力外を受けた選手のチャンスの場となる合同トライアウトは、2001年から始まったのですが、同時に各球団のテストも存在していたので、あまり意味がありませんでした。
当時クビになった選手は、個人個人で、各球団が独自に行うテストを受けて、新しいチームを探すのが普通だったのです。しかし、大越選手は、日本シリーズの後にクビになったので、多くの球団がすでにテストを終えていました。
結局、大越選手は、数少ない選択肢の中から、ロッテなどのテストは受けましたが、合格には至りませんでした。
当時、番組では、大越選手の戦いを伝えると同時に、日本シリーズに出たことで、かえって、戦力外通告を受けた後の選択肢が少なくなってしまっていることの現実を伝えました。
そして、翌2004年、プロ野球再編問題に伴う、選手会と球団側の話し合いの中で、合同トライアウトの実施前には、球団は独自の入団テストを行わないことを申し合わせたのです。
この戦力外通告という番組は、ある種の不幸を背負わされた選手が、家族と共に頑張っていく姿を取材した番組です。同時に、少しでも、プロ野球という世界の現実を描いていきたいと思っています。私たちは、現実を伝えるだけです。
制度を変えろとか、これがおかしい、とかは、我々の立場ではいえません。
ただ、選手の姿を通して現実を伝えていければなと思っています。
現在のプロ野球でいえば、育成制度という現実があります。
育成制度は、プロ野球選手になる機会を増やしました。
巨人の山口投手に代表されるように、育成から這い上がっての成功は、ある種のシンデレラ・ストーリーであり、ファンにも訴えます。
一方で、契約金もなく選手を獲得することのできる育成選手制度には、批判もあります。
今後も、育成制度で入団して、数年で戦力外通告を受ける選手は増えていくと思います。
そんな彼らの戦いの現実を描いていく機会も今後あると思います。
我々が制作する番組の反響が大きくなればなるほど、真摯な気持ちで取り組まなければならないと強く思いますね。
「バース・デイ」のこのHPがフェイスブックに載るようになりました。
宜しくお願い致します。
さて次回は、恒例の、2012年 私の 映画ベストテンを 発表しようかと思っています。

菊野浩樹 プロフィール
1968年 5月14日 生まれ1992年 TBS 入社
「アッコにおまかせ!」「ザ・フレッシュ」「筋肉番付」「ZONE」「世界陸上」「K1ダイナマイト」などを担当。
「バース・デイ」をはじめ、「プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男たち」「ラ イバル伝説…光と影」「プロ野球選手の妻たち」「SASUKE RISING」など、数々のス ポーツ特番やドキュメンタリー番組を手がける。
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