| 凜 | 「部室ロッカーの私物は全部片付けた?」 | |
| ゆら | 「……凜さん」 | |
| 凜 | 「次会うときは多分敵同士。でも貴重な体験だった」 | |
| ゆら | 「ええと、はい。こちらこそお世話になりました。それでは……」 | |
| 凜 | 「待ちなさい」 | |
| ゆら | 「え?」 | |
| 凜 | 「あなたに言っておきたいことがあるの」 | |
| ゆら | 「……なんでしょうか」 | |
| 凜 | 「兵士は4種類に分けられる」 | |
| ゆら | 「?」 | |
| 凜 | 「賢明な働き者、賢明な怠け者、愚かな働き者、愚かな怠け者。この中に軍隊に不要なタイプの人間がいるの。どれだかわかる?」 | |
| ゆら | 「愚かな怠け者ですか?」 | |
| 凜 | 「いいえ。答えは『愚かな働き者』。こうした人物は誤った判断を忠実かつ徹底して遂行する。結果、組織全体が深刻な危機に立たされる。わかるわね? あなたの事よ」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| 凜 | 「ついでだから始めましょう。『よい子のためのサバゲー講座 第10回:サバゲーの組織論』、餞別代わりに聞いていきなさい」 | |
| ゆら | 「……はい」 | |
| 凜 | 「あなたがバカにしていた『衛生兵』だけど、どうしてあなたを指名したかわかる?」 | |
| ゆら | 「わかりません」 | |
| 凜 | 「それは、わたしがあなたをいちばん信頼していたから」 | |
| ゆら | 「……?」 | |
| 凜 | 「前線の兵士が安心して戦えるのは、それを後ろで支援してくれる信頼できる味方後方がいるからなの。衛生兵はもちろん、観測手や斥候、輸送と兵站に当たる全ての人員。彼らは英雄にはなれない。でも彼ら無しでは英雄は存在できない」 | |
| ゆら | 「確かにそうです」 | |
| 凜 | 「だから明星でもトップクラスの能力を持ったあなたを任じた。そうした特技兵は最良の人材を当てなければならないからよ。でもあなたはその意味を理解できなかった。それどころかチームを支えるべきあなたはチームを破壊しようとした」 | |
| ゆら | 「でも! わたしがアタッカーだったら絶対……」 | |
| 凜 | 「勲章がもらえるような英雄になったでしょうね。わたしたちメンバーの死屍累々の山の上で」 | |
| ゆら | 「そんな……」 | |
| 凜 | 「勘違いしてるみたいだけど、わたしたち明星は弱いの。1対1で戦ったらそのらはもちろん、あのケンカっ早い金髪の子にも勝てない」 | |
| ゆら | 「そんなこと無いですっ。凜さんたちは……」 | |
| 凜 | 「いいえ。弱いからわたしたちは組織として結束する。個を殺し、ただのパーツとして頑強に結束してるからわたしたちは勝てる。だから個を殺せなかったあなたとは結束できない。だからわたしたちはあなたを必要としない」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| 凜 | 「わたしたちは遊んでるんじゃないの。戦っているの。自分たち以外の世界の全てと」 | |
| ゆら | 「わたしだって遊びでやっているわけじゃないです」 | |
| 凜 | 「冗談言わないで。サバゲーをする人は2種類に分類できる。遊びでやってるそのらたちみたいな人と、真剣な勝負事として望んでいるわたしたち。あなたにはやっぱりC³部が似合ってるのかもしれない」 | |
| ゆら | 「それが不満で、本当に勝ちたくてわたしはC³部を飛び出して来たんです! なのにどうしてですか!? どうしてわたしは要らない存在なんですか!?」 | |
| 凜 | 「それはあなたはあなた以外の全てと戦っているからよ。あなたはわたしを含めた明星女学園サバゲー部のメンバーとも戦っている。なら、あなたの居場所は少なくともここではないはずよ」 | |
| ゆら | 「……」 | |
| 凜 | 「話がずれたみたいね。でも、サバゲーはそれを通して自分の内面と対峙できる場所なんだって事は理解できて?」 | |
| ゆら | 「……はい」 | |
| 凜 | 「ではこれでおしまいにしましょう。また来週」 |