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「IS<インフィニット・ストラトス> × 緋弾のアリア」 原作者コラボ対談公開!

先日TVアニメが好評のうちに最終回を迎えた『IS<インフィニット・ストラトス>』(以下、『IS』)と、『緋弾のアリア』はどちらもMF文庫Jからリリースされているライトノベルが原作。原作者である弓弦イズルさん(『IS』原作)と赤松中学さん(『緋弾のアリア』原作)は旧知の間柄ということもあり、今回特別対談を行ないました。

作家として見たお互いの作品、そして原作者から見たアニメ版とは?
前後編でたっぷりお届けするので、最後までお見逃しなく!(取材・構成:中里キリ) 

──まずは『緋弾のアリア』放送開始、そして『IS』BD・DVDリリース開始おめでとうございます!

弓弦イズル&赤松中学:ありがとうございます!

──アニメ化されて変わったことや、周囲の反応はありますか?

弓弦:今までは友達に「原作の小説くれ!」って言われてたのが、「BD・DVDくれ!」に要求がレベルアップしました(笑)。 あとは今放送されているアニメをよく見るようになりましたね。今までも幾つか録画してる作品はあったんですが、あまり見ていなくて。

赤松:私も『あにゃまる探偵キルミンずぅ』しか毎回ちゃんと見てなかったのが、色々と見るようになりましたね

弓弦:この前自分の家で、赤松先生と録りだめたアニメを一緒に見たんですよ。『ミルキィホームズ』と『緋弾のアリア』、設定かぶってね? とか言いながら(笑)。

赤松:絶対ネットで赤松パクったなぷぎゃーとか言われると思うんですが、だいぶ前から『緋弾のアリア』は書いてますからねっ!

──(笑)。お2人はかなり仲がいい感じですが、知り合ったきっかけや関係を教えてください。

赤松:先日はお宅にお邪魔しておでんをごちそうになったり、すごくいい豆の珈琲を飲ませてもらったりしましたね。

弓弦:普段自分はインスタントコーヒーなんですけどね(笑)。赤松先生とは授賞式で出会いまして。お前が最近ならしてる弓弦か、とタバコを投げつけられたんですよ。私は人見知りなので、リア充寄りの赤松先生が話しかけてくれたおかげです。

赤松:(タバコ投げは)してませんよ!(笑)。私は授賞式にはISに乗って弓弦先生と戦いに行ってきました!

弓弦:IS適合者だったんだ(笑)。

赤松:もちろんですよ! 私は心が乙女であればISに乗れるって信じてるので。心に乙女回路を積んでるので大丈夫です!

弓弦:(笑)。でも作家であれば、女性の心情もある程度理解できなければと思います。

赤松:ちょっとした動作や仕草で心情を表現できるかとか、そういうことですよね?

弓弦:地の文で“ツンデレ”とか書いてしまったら負けだと思うんですよ。説明の放棄なので。

赤松:……私は多分書いてないと思います!(笑)。でもね弓弦さん、これからはそれを書く作家が増えるかもしれません。で、我々が『なぜ“ツンデレ”と一言で書かないんだ、古い作家だ』と言われるようになるかもしれない。そうしたら私は、堂々と書きますよ! たとえば“背後霊的一人称”、三人称の文章の中に一人称的文章が突然現れる、とかあるじゃないですか。それは昔ならやってはいけない作法だったけど、それが面白いって時代が来た。だから私は日日日さん(『蟲と眼球』『狂乱家族日記』『アンダカの怪造学』などの著者)の作品とかをフォームができるまで何百回と読み込んだりしました。ご本人には昔の作品の話はやめてくれって言われるんですけど(笑)。

弓弦:やっぱり時代としては、読者があまり深い部分を読み込んだりせずに、わかりやすい物が求められるようになってきてる。反面、僕が元いたPCゲーム業界では、ぱっと見の奇をてらったような物を書きたがる若い子が増えてきた気がします。あとは古い作品・名作に対するストックが少ないような。

赤松:見てきた作品に関する世代の差は感じますね。でも物書きは総じて物知りで、過去の作品や歴史上の名作に関する知識を持ってないといけない。法律家が法律を知ってないといけないのと同じです。さらに筋トレを続けないと徐々に筋肉が衰えていくように、常に新しいものも蓄えていかないと駄目ですね。新鮮な技術の仕入れと、蓄えた古い知識を組み合わせて切り売りしてるんです(笑)。

弓弦:以前漫才のオール巨人師匠が「プロになりたければ24時間漫才のことを考えろ」と話してたんです。一日8時間しか考えてない奴と24時間考えてる奴の差は、プロになってから現れると。

赤松:付け加えるなら、プロの作家の世界はその24時間考えてる人間同士の戦いですからね。そういう24時間考えてるプロ同士で話すのはとっても楽しいですよ。

──お互いの作品の印象について聞かせてください。

赤松:これだけ和気あいあいと話せるのも、2人が相当違う系統の作家だからだと思います。私は、自分と似たタイプの作家さんより、異なるタイプの作家さんにいろんな刺激を受けたい。これは性格や能力だけじゃなくて、ライトノベルの中の小ジャンルのどこにいるかも関わってくると思うんですが。

弓弦:裾野が広がって、色々なネタやトンデモが成立するようになってきてますね。

──表層だけ見ると、両作品は美少女とバトルといったモチーフは似ていると感じる人もいるかもしれません。

赤松:色が全然違うんですよ。中に入らないとわからない違いがあると思うんですね。

弓弦:個人的に一番作品として差異があるのは、主人公に葛藤があるかないかだと思います。キンジには葛藤があって、一夏は天然ですね。

赤松:私はヒロインの配置・布陣が大きく違うと感じますね。複数のヒロインの攻撃や守備のポイントの置きどころが、やっぱり作家によって違うんですよ。見ている人はこのキャラがいいよ、いやいやこっちがいいよ! と盛り上がってくれますが、そういう動きをどう起こすか、どんなターゲットを狙っていくか、そこの戦略が違う。

弓弦:『緋弾のアリア』は高校生向けですよね。

赤松:担当編集さんに、中高生向けに書いてくれ! って洗脳されましてね(笑)。

弓弦:『IS』もその世代を考えてはいたんですが、初期のアンケートだと読者年代層が意外と高めだったんです。

赤松:元々MF文庫Jの読者にあまりいなかったその層を、『IS』が連れてきてくれたのかなと思います。

──『緋弾のアリア』はヒロインを各個撃破するラノベの文法、『IS』はヒロインに囲まれた主人公というギャルゲーの文法に感じるのですが。

弓弦:プロットとかお話の作り方では、『緋弾のアリア』の方がライトノベル、小説の手法に沿ってると思います。自分は手法的にはゲームからの流用なので、邪道ではあるかもしれませんね。

赤松:それが主人公の性格にも影響を与えている気がしますね。キンジだったら『IS』の世界でも丁寧に各個撃破すると思いますよ(笑)。

──同時進行するヒロインが増えると、主人公により“鈍感さ”が必要になる?

赤松:出た、最近我々が一番聞きたくない言葉“鈍感”(笑)。

弓弦:一夏が鈍感なことについては、実はちゃんと理由があるので楽しみにしてください(笑)。そのあたりを解決するキンジのヒステリアモードは、あたら懐かしい(新しい&懐かしい)なと思いました。

赤松:主人公が変身するパターンって、最近あまり見ないじゃないですか。

弓弦:主人公がああいう感じで饒舌な作品も少なくなってますね。

赤松:文化って流転すると思うんですよ。一回廃れて、みんなが忘れた頃にもう一回帰ってきたり。その流れを読むのも私たちの仕事ですねー、難しいですけど。

弓弦:ゲームの世界でもそういう流れを読む能力は求められますね。僕は卑怯なので、どの周期が来ても対応できるように、そのあたりを押さえてキャラクターを配置してます。

赤松:その周期のサイクルはだんだん短くなっている気がします。

弓弦:どんどん早く、短くなってますね。だから今PCゲームを原作にアニメを作るのは大変だと思います。

赤松:私は1サイクル3ヶ月だと思いますね。アニメの1クールに周期が近づいていってる。……そういえば、アニメの話をしなくちゃいけませんね!(笑)

──そうですね、後編ではアニメ『緋弾のアリア』と『IS』について掘り下げて伺っていきたいと思います!

<後編に続く>

※こちらは前編の記事になります。
後編は「緋弾のアリア」TVアニメ公式サイト(http://www.tbs.co.jp/anime/aria/)をご覧下さい。