安達としまむら

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劇伴作家
インタビュー

劇伴作家インタビュー

作曲家 櫻井美希 田渕夏海 中村巴奈重

—— 「安達としまむら」の作曲オファーが来たとき、原作を初めて読まれたときのお気持ちを伺えますか?

櫻井:私は女子校出身なので、しまむらに恋心を抱いてしまう安達の気持ちは、少し共感できる部分もあるというか(笑)。
青春特有のフワフワした空気の中で不意に心がグラグラしてしまうことってあるよね、と納得しながら読み進めていたのを覚えています。
そういった女子高生の繊細な心の動きを音楽でどう表現できるのか、ソワソワしつつとても楽しみな気持ちでした。

田渕:登場人物みんなつかみ所がなく日常の時間の流れがゆっくり感じられて、とても暖かい気持ちになりました。
安達としまむらの独特の距離感が切ないけれど美しくて、作品の世界観が出来上がっているなぁと感じたので、音楽のイメージも湧きやすかったです。

中村:ゆったりとした日常の中で少しずつ変化していく二人の関係に、キュンとしながらもほっこりした気持ちになりました。
今まで原作があるアニメもいくつか関わらせていただきましたが、この作品は特に音楽によっても世界観が大きく左右されてしまうように感じたので、この雰囲気に寄り添える音楽はどんなものなのだろう、難しいな、とドキドキワクワクしたのを覚えています。

—— 実際に作曲作業に入る前、曲のオーダーやイメージはどのように届くのでしょうか

櫻井:例えば「日常」の曲1つをとっても、その明るさの程度や、どういう場面で流す想定のものなのか、などを細かくオーダー頂けたので、かなり具体的にシーンをイメージしながら作ることができました。
あとは「サティ」や「3拍子系の曲」という全体のキーとなるリクエストも頂いていたので、様々な楽曲がありつつも情緒を統一することが出来たのではないかなと思っています。

田渕:最初に作品全体の音楽イメージをお伝えいただいた上で、各曲の詳しい用途やイメージを共有させていただくことが多いです。
今作は全体としてエリック・サティのような音数の少ない抽象的な美しさの音楽とオーダーをいただいたので、そのイメージから外れない範囲で自由に作らせていただきました。

中村:はじめのお打ち合わせで、サティやドビュッシーのような、少しクラシカルな表現を使った劇伴を作っていきたいとお話をいただきました。
その大きなイメージの中で、それぞれ「このシーンにはこういったニュアンス」というキーワードをいただき作っています。例えば「しっとりとした雰囲気」「照れを含んだ可愛らしい感じ」など。それらのキーワードと、台本を頼りに書き進めていきました。

—— 「安達としまむら」の作曲作業はいかがでしたか?

櫻井:サティ、というワードを頂いて、安達やしまむらの少し内向的な一人語りとか青春特有の気怠さとか、地に足が付いてないようなフワフワした日常・恋心とか、そういった温度感みたいなものを出せたら良いのかな、と自分なりに解釈をしました。
モノローグが多い作品なので、その裏で流れていても邪魔にならないように、でもメロディは印象に残るように…など、いい塩梅を探すのが大変だった記憶があります。
とは言いつつ、サティを始めとするフランスの作曲家のピアノ曲はとても好きでよく弾いていたので、楽しみながら作ることができました。
逆に、コミカル曲やヤシロ用の曲などは、ちょっと異空間といいますか、他の楽曲とはコントラストが感じられるように音色選びなども工夫しています。

田渕:制作前に音楽イメージのキーワードをはっきりいただけていたのでとても作業しやすかったです。
元々フランス系の作曲家は好きだったので楽しみながら作曲することができました。
ビジュアルイメージを見せていただいたときに映像の綺麗な作品になりそうだなと感じたので、この物憂げで美しい世界観に寄り添える音楽にしたいと思ったのを覚えています。

中村:1話冒頭でも流れる曲は、一番最初に作り始めた曲なのですが、これが一番悩み時間がかかりました。
実は今の曲以外にも5、6曲ほど作り、その中で選んでいただいたのが今の曲です。こちらの曲が決まってからは目指す雰囲気も想像しやすかったので、イメージが湧きやすかったです。

—— 「安達としまむら」劇伴のここを聴いてくれ!という推しポイントがありましたらお伺いさせて頂けますか?

櫻井:全体を通してピアノ曲が多いのですが、その音色は様々です。もちろん生のピアノも多く録音していますが、シンセサイザーのやや脚色されたピアノの音もあったりと、どういうシーンを想定しているかによって使い分けられています。
是非サントラではその音の違いにも着目して頂けたら嬉しいです!

田渕:作品の暖かい世界観が伝わればいいなと思い、アコースティックサウンドの曲が多くなっています。また今作は心情曲がとても多いため、2人のいろんな感情の変化や空気感を繊細に表現できていれば嬉しいなと思っています。

中村:いくつかの曲は、音色の違いなどひとつのMナンバーにつき、少し雰囲気を変えた2つのパターンの曲を作りました。安達目線の場合、しまむら目線の場合など、シーンによってこっそり使い分けられていることがあるので、ぜひそこにも注目していただけたら嬉しいです。

—— 原作/アニメファンの方々に向けて何かございましたらひとことお願いします。

櫻井:私も毎週アニメを楽しく観させて頂いています。
作品に寄り添っていると皆様に感じて頂けていたらとても嬉しいです。
最終回までぜひ音楽もあわせてお楽しみください!

田渕:アニメをご覧になった後も、サントラを聴いて安達としまむらの世界に浸っていただけるととても光栄です!

中村:「安達としまむら」の世界観を大切に、と心がけてひとつひとつ作ったので、原作やアニメファンの方々に、違和感なく楽しんでいただけていたらとても嬉しいなと願っているのですが、楽しんでいただけていますでしょうか…?
まだまだ続くお話、私も一視聴者として楽しみたいと思います。

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