BAKUMATSU

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SPECIAL

アニメ最終回記念アフターインタビュー第1弾
三木眞一郎×濱健人
(坂本龍馬役、土佐弁指導)
二人三脚で作りあげた
“龍馬の土佐弁”

「BAKUMATSUクライシス」も
ついに最終回を迎えました!
そこで今回から3回にわたって本作の
こだわりを伝えるインタビューを公開。
第1弾は坂本龍馬役の三木眞一郎さんと、
土佐弁の方言指導を行った濱健人さんによる対談を、
音響監督の藤野貞義さん、
プロデューサーの和田薫さんの言葉を交えてお届けします。
2人の方言、そして演技に対する熱意を堪能あれ。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 三木さんはゲームとアニメで坂本龍馬を担当されていましたが、演技に変化はありましたか?

三木:特にないです。彼が作品内の人物に対して接するという点では同じだし、台本にある以上のことは台詞で喋れませんし。彼の声として僕がやることは同じですから。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— アニメで高杉たちと接するのも、ゲームで主人公と恋愛するのも同じ坂本龍馬というキャラクターだからということですか。

三木:そうですね。そういえば、どういう経緯で濱君が指導してくれることになったの?

濱:実は僕も詳しい理由は聞けていません(笑)。事務所から「今度始まる『BAKUMATSU』にレギュラーで入って。方言指導もお願いします」と言われたので「はい」と。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 濱さんは新撰組隊士やスサノオ兵などを毎回のように演じながら、「BAKUMATSUクライシス」8話では中岡慎太郎として土佐弁で喋られていました。

濱:はい。僕は今でこそこうして標準語を使っていますが、芝居でも土佐弁のほうがナチュラルに感情表現できるし、生まれてからずっと使っていたので土佐弁のほうが馴染み深いんです。「土佐弁に関わりたい」とはずっと思っているので、今回もそれが叶ってありがたかったです。

三木:僕も「まんさい」というイベントに呼ばれて高知県には2回くらい行ったことあって、そこで地元の方と話していたおかげで土佐弁が耳に残っています。それに自分が行ったことがある場所は無条件に愛着が湧くから、今回は嬉しかったです。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 藤野さんに伺います。三木さんには演技面でどんな指導をされましたか?

藤野:今回の坂本龍馬に関してだけではなく、昔から知っているけど三木さんは驚くほど上手い。だから指導という点では、どんな気持ちで喋るかを確認したくらいで何も言うことはありませんでした。でも今回の土佐弁は大変だったと思う。それは三木さんも、指導した濱君もね。例えば脚本家が土佐弁の単語を台詞にポンと入れた場合、それがおかしく聞こえないように台本を作り変えなければならないんです。

—— 「BAKUMATSUクライシス」10話で出てきた「よばあたれ」という単語などは、たしかに多くの人には聞き慣れない言葉です。

藤野:そうした言葉を残しながら他の部分を調整するといった翻訳を濱君はしてくれたし、もちろん台詞全体のイントネーションをどうするかも考えてくれた。だから方言に関しては2人にお任せでした。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 方言のきつさの具合を決めるのは難しそうですね。きつくすると視聴者の多くには伝わらないし、かと言って土佐弁っぽさは感じさせないといけませんし。

濱:僕はまだ20代なので、高知でバリバリに土佐弁を使っている上の世代の方に比べたら方言が若い。だから先ほど話にあった土佐弁らしい単語がポンっと入っている場合も、その単語を使いたい意図はわかるけど、若い方言の中でそこだけ老けて聞こえてしまう。その辺のすり合わせはしていたんですけど、その若い方言でも伝わらない人の方が多いし、今回は方言指導の難しさはずっと感じていました。個人的には最大公約数というか、土佐弁に明るくない方が聞いても「こういうことを言いたいのかな」と汲み取れるくらいの方言を目指したつもりです。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

藤野:地元の人は、龍馬の土佐弁をどういう風に聞いていたんだろうね。

濱:誤解を恐れずに言うと、「BAKUMATSU」の坂本龍馬が話すのは“なんちゃって土佐弁”だから「これは土佐弁じゃない」と仰るかもしれません。ただアクセントやニュアンスは土佐弁の成分を多めに出させてもらえたので、地元の方も「いろいろ考えてやっているんだな」と意図を感じてもらえたら幸いです。

藤野:“なんちゃって”だけど、三木さんはその翻訳を現場で知ってすぐに対応していたんだからすごいよね。

三木:今回はスタジオに行くまで、事前にあまり準備できることがありませんでした。もちろん気持ちの流れやブレスの位置くらいは確認していますけど。だから早めに現場に入って濱君から台本の直しを教えてもらって、口伝えで言葉を聞いて覚えて。大変だったけど、上手くいった今振り返ったら楽しかったです。

—— 三木さんは龍馬の声をされる中で、特に印象的だったシーンはありますか?

三木:どこか選ぶとなると難しい……。マイク前にいるときの気持ちはどのシーンも一緒なんですよ。指導していただいたように方言を出さなきゃいけないし、その上で感情表現なんかの当たり前のこともしなくてはいけない。もちろん相手の台詞を受けて心が動いたときの台詞は、方言として自然に出てこないといけない。だから「BAKUMATSU」では自分がマイク前にいないというか、少し“上”の方にいるみたいな感覚で。そういう不思議な感じは久しぶりでした。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 第三者視点ということですか?

三木:面倒な話ですけど、それとは少し違って。自分が何人かいる中で、上手い具合の塩梅になるというか。

濱:仰っていること、すごくわかります。

—— 龍馬役であるだけでなく、方言で喋るからこその感覚があったんですね。それでは苦労したシーンは?

三木:台詞が多い回です。この作品は、テストをしてラステス(※ラストテスト)をして本番という流れで収録しましたけど、時間が経つごとに方言が自分の中から逃げていくので、無理を言ってテストしてすぐ本番にしていただきました。方言は教わってすぐのほうが鮮度がいいんですよ。

濱:あと長台詞も大変でしたよね。4行とかあるだけでも考えなきゃいけないことが多いのにそれ以上なんて……僕だったら「あー!」ってなってます。

三木:でも鬼だと思うよ。ロビーで指導を受けているときに「すみませーん、テストいきまーす」とか言われても「いけないよ!」ってなる(笑)。

濱:場合によっては語尾やアクセントだけでなく、それ以外の部分でもむちゃくちゃ台詞が変わることもありますしね。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

—— 濱さんは「BAKUMATSU」の収録を通じて印象的だったことはありますか?

濱:他の共演者の方に「三木さんのあの噛み砕き方はすごいよね。完全に土佐弁だもん」という言葉をいただいたことです。「ちゃんと土佐弁として聞こえてるんだ」と自分のチョイスにほっとしたのもあるし、毎回三木さんが台本とにらめっこしながらキャラクターと芝居に向き合っている姿を見て驚かされていたので「さすがだな」って。

三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

三木:それは……やっぱりやらなきゃいけないじゃん。スタジオで一番年長だから「ごめんなさい」ばかり言ってるわけにもいかない。後輩たちに「(方言もあるし)しょうがないよね」じゃなく「すげえな」と思ってもらうのが先輩ってものだろうし。そういうプレッシャーもあったけど、こういう経験はなかなかできないから、50歳から51歳になる節目にこの作品に会えてよかった。

—— 先輩としての挟持ですね。

三木:年齢に関連して言うと、「BAKUMATSU」声優陣のバランスはちょうどよかったかもしれない。ゲーム時点でどういう意図でキャスティングされていたかはわからないけど、アニメで集まったときにバランスが取れていて。

藤野:それは自分も感じた。

三木:高杉晋作役の中村悠一君と桂小五郎役の江口拓也君の年齢差もそうだし、龍馬のポジションもそう。血気盛んな主役を若い2人が演じて、そこから少し離れた龍馬を歳上の僕がやって。そうした役とのリンクがあってよかったんじゃないかな。同世代ばかりだと、どうしても役者として戦おうとしちゃうと思うので。

—— なるほど。ちなみに龍馬は方言を使いましたが、他のキャラクターも同様に方言で話すというプランはあったのでしょうか?

和田:アニメの企画当初はそういう話もありました。その名残りが第1期1話の高杉の台詞「ぶるとっぴんで逃げるぞ」です(※「ぶるとっぴん」は「急いで」という意味の長州弁)。あれは渡辺正樹監督の「作品の出だしで長州の言葉を入れよう」というこだわりがあって残りました。

藤野:そうした単語を入れるくらいはできるけど、全部を方言でやると視聴者にとってはわけがわからない作品になるよね。京都や山口、高知なんかの言葉が入り乱れるより、まずドラマを魅力あるものにしなければいけない。

和田:余談ですが、当初はアニメのタイトルの候補として「BAKUMATSUダダンダー」というのもありました。「だだんだー」という意味の長州弁で「むちゃくちゃな」という意味です。やることなすこと無茶な高杉のイメージにも合っていていいかなと。もちろん、ボツになりましたが……(笑)。

—— 意外なことも知れたところで、最後に何かあればどうぞ。

和田:「BAKUMATSUクライシス」11、12話に濱さんは出演されていないんですが、方言指導で入っていただいたのでエンディングのクレジットに入れておきました。小さな恩返しですが。

濱:恐縮です!

藤野:本当はもっと前から入ってなきゃいけないけどね(笑)



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三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁
三木眞一郎×濱健人 龍馬の土佐弁

インタビュー・文:はるのおと 撮影:長谷川智紀



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