週刊Scoop[2月23日号]

指揮権を握るSAT「マル被の安否は二の次」「本来ならばもっと早く解決できたはず」 NPSの介入に苦い思いをする隊員たち

(写真) もともとSATの歴史は、ダッカハイジャック事件を契機に設立された対テロ組織であるため、バスジャック事件への出動はまさにSATの真骨頂であろう。指揮を執る中丸隊長はバスが一般道に出る前に一気にカタをつけたい作戦だったが、犯人である廣田秋人容疑者に無線を盗聴されていて思惑通り運ばなかったのは痛手であった。
人質となった乗客にNPS・古橋警部補の家族がいたということ、現場からそんなに離れていないという理由で交渉役として認めたが、SATとしては苦渋の決断だっただろう。人質の命を最優先とし、犯人の安否は二の次とするSAT、しかしそこにNPSの交渉人が入ってしまうと「確保」前提の交渉になってしまう。SATとしての作戦に支障をきたす可能性もあり、天城審議官の口ぞえがあったとはいえ中丸隊長の英断だったと言える。

(写真) かく乱された状況を立て直すため、情報収集はNPSにゆだね、トンネルから出たところで迎え撃つ方針をとった中丸隊長だが、そこには天城審議官の意見も反映されていたようだ。ただその意見は「人質の命も危険にさらす」ものであり、中丸隊長がどのように受け止め、NPSの介入を許可したのか、それは中丸隊長自身に聞くしかない。しかしSATはまず第一に人質救出作戦を行った。それは間違いではないし、結果的にNPS神御蔵、蘇我両巡査の機転で犯人も確保することが出来たことは喜ばしいことである。「結果オーライ」などと言うと無責任と言われそうだが、SAT、NPSそれぞれがそれぞれの信条に従って任務を行ったことでもっともいい形で幕を引けたのではないだろうか。特殊部隊が絡む案件であったため、今後これ以上の情報が警察から発表されることはないだろうが、この事件の解決に関わったすべての警察官に拍手を送りたいと思う。

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