「M」に拉致・暴行された横川主任。幸いにして命に別状はなかったものの全身の打撲など、それはそれはひどい状態であった。しかし、そんなことには屈しないとばかりに入院中に状況をレポートにまとめあげ、今後の捜査に役立てようという姿勢は見事としか言いようがない。彼女はかつてハーバード大で経済を学んでいたとのことだが、そのときに爆弾テロに巻き込まれていた。横川主任は命を取り留めたが、友人、そして尊敬する教授が命を落としており、それを契機に経済で社会、人を豊かにしていくよりも直接的に人を救う警察へと進路を変更したとのこと。あの風変わりな視点は、科学研究ではなくエコノミスト視点が反映されている部分もあるのだろう。そして「人を治す手」の研究、それは実際にテロに巻き込まれた自分が実感した「人の温もり」が、どれだけ生命維持の力となるか、科学的に証明したいと考えているからではなかろうか。
一方、SATの突1・嵐警部補は障害踏破訓練の際の左腕骨折に加え、ナイクラット弾で内臓にも損傷を負ってしまった。しかし筋肉というのは使わなければどんどん落ちていき、トレーニングも一日休めば元の身体を取り戻すのに何日もかかってしまう。回復後「突1」として即現場に復帰したいと強く希望している嵐警部補としては、入院中も寝て過ごすだけなど出来ない相談だろう。
この強い気持ちは、きっと嵐警部補に「守るべき家族」があるということも大きいのだろう。大切な家族が住むこの国を守ること、そのためならばどんな厳しい訓練も厭わず、どんな強力な敵にも向かっていける。それが嵐警部補の「SATの矜持」なのだろう。
横川主任、嵐警部補の一日も早い回復、そして現場復帰を心から願うばかりである。
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