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インタビュー

蘇我伊織役 綾野剛さん

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出演が決まって、撮影が始まるまで時間があったそうですが…

お話をいただいたのがずいぶん前なので、撮影に入ったときは純粋に嬉しかったです。原作を読んでいても「このシーンやりたいな、あの川での合同訓練は本当にやるのかな」と、冷静になっていたつもりですけれどけっこう高ぶっていました。撮影初日に向井さんと同じ現場に入って「いよいよ始まるんだ、ようやく始まる、嬉しい」ということが一番でした。エンターテインメントとして純粋に面白い上に、ひりひりとした緊張感がある作品ですので、きちんとした志を持って、表層的にならずに真実を伝えていけるよう、謙虚にいい作品に出来たらと思っています。

原作を読んだ感想はいかがですか?

面白いです。画の力もあって引き込まれますし、「こんなことありえない」と思うかもしれないような事件も、本当のことしか描かれていないんです。それは原作の小森先生が足を棒にして取材されていたからこそで、自分たちも同じくらいの努力をしないと認めてもらえないと思っています。映像化したときに、ドラマにしか出来ないことを表現しないといけないので、ある意味原作はライバルです。
ナルシズムではなく、自分の抱えているものをきちんと理解して生きている人は美しいと思うんです。一號にしても蘇我にしても、自分に起こったどんなこともちゃんと自負心に変えて意思、志の高さにつながっている人たちはとても魅力的で、とてもまっとうな生き方をしていると思いました。お話をいただいたとき、役者としてとてもいい影響になるだろうし、終わったあとも影響を受けるだろうという予感を感じていて、とても力のある作品に参加させていただけること感謝しています。

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演じられる蘇我伊織とはどんな人ですか?

過去に自分の家族が犯罪被害で殺されていて、端的に言うと自分の復讐心だけで技術を磨き、人質を救うためならば狙撃も許されている組織の中でもためらいもなく「こんなヤツ死んでも構わない」という刹那的な人です。
スナイパーというのは異常な状況に身をおいていると思います。指で引き金を引く、それだけのアクションで人の命を奪えるんです。もしそこで外してしまったら犯人に気づかれて、人質を殺されてしまうかもしれない、だから失敗は許されない。そしてこの「引き金を引く」というアクションさえなければ、スコープから犯人に狙いをつける、そこまでは素人のぼくでも出来てしまうんです。これはやはり異常な状況だと思います。
一號役の向井さんはものすごく気持ちよさそうに演じているのに、こちらは常に戦闘態勢で、研ぎ澄まされていて歩き方まで考えていますし疲れます。

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アクションも多い作品ですが、事前に準備されたことはどんなことですか?

ドラマというのはチーム戦ですから、一人でやろうとすると壊れます。精神を安定させて、体力をつけて、共演者がいて初めて出来ることなのではないでしょうか。ぼくはぼくで出来ることをしようと、いつでも使える筋肉にしてきちんと体を作って入りました。
向井さんに比べたら、アクションらしいアクションはありません。ただ精神的なアクションはとても多くて、そこにきちんとリアクションできるように集中力を切らせないようにしないといけないと思っています。技術面では一つ間違えると「これは正しい形ではない」となってしまいますし、そういう点は気をつけています。しかも蘇我の腕前は「神業」と言われるほどですから、静の動きですごく速くやらないといけないですから余計に大変です。守秘義務がある部隊の話ですし、調べようがないことのほうが多いのですが、自分で調べられることは調べたり、教えてもらったりしながら自分のものにするようにしています。目だけの芝居になることも多いですし、実際に射撃場に行って遠い的に向かったとき、すさまじい集中力が必要で、神経が敏感になりますが性にあっているところもあるので向き合いやすいです。

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アサルトスーツでのシーンがメインとなりますが、着心地は?

アサルトスーツは身を守るものではありますが、拘束具でもあるのでこれを着て演じていると疲れます。もっとも現場の人たちからしたら、有事は起こらないほうがいいですから、本当は着ないほうがいいんでしょうけれど。
でも衣装の力というのはすごくて、これを着るとスイッチが入ります。蘇我はSATという存在を通さないと生きている実感を得られない人だと思うので、スコープを通して犯人を見ているときが一番「生きている」実感を持つんでしょう。

向井さんと共演されてみて、感想はいかがですか?

コミュニケーション能力の高い人で、骨太で人のことをよく考えてくれていて、とても助けられています。きちんとした思想を持っていて、それは悪い意味ではなくいたって面倒くさいんですけれど、そういう面倒くさいところは似ています。その人しか持ち得ない意思、その面倒くささが気持ちいい、熱い男だしホットな役者だと思います。
それと、同い年という点がきっかけとなっていてとても楽です。今では一緒にいても「無言」が成立する間柄となっていて、それは財産です。

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撮影はハードですが、現場の雰囲気はいかがですか?

知られていないからこそのクールとかミステリアスとかイメージはあると思いますが、そこで働く人たちはいたって普通で、年相応に結婚だってしているし、そういう生身のところがあるので存在がウソっぽくならないように、リアリティを高めていくのが大事だと思っています。
全体的に年齢層が高く、ぼくたちが一番下なくらいなので、とても重厚な雰囲気になっていますが、現場は楽しいです。SAT隊員の嵐がSATの仲間に対して「NPSに負けるな!」というセリフを聞いて「なんて男くさいんだ」と思いました。誇張ではなく、日常にはない熱さです。高校の部活ならともかく、大人になると、もうそういうのはないですよ。

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ご覧の皆さまにメッセージをお願いします。

非常に重厚な役者が揃い、非常に男くさい作品になっていますが、エンターテインメントで派手な部分もたくさんあります。その中で生きている人間たちの模様をきちんと描いている作品です。この作品を機にSATや特殊部隊のいわゆる「国」というとても大きい柱を元に戦っている姿をきちんと認識していただけたら幸いです。
全然タイプの違う部隊が、結果的に人命のために、という行き着くところは一緒です。向井さんの演じる一號の放つこぶしは、何が正義かという悲しみを持っているこぶしです。いかに向井さんが一號としていられるような環境をぼくが蘇我として作っていけるかが大事だと思っているので、彼が苦しんだときには盾にでも剣にでもなろうと思っています。また精神的バディとしてぼくに出来ることは何でもしていこうと思っています。出演者、スタッフともとにかく懸命にやっていますので、どうぞ楽しんで見てください。

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