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撮影レポート 生瀬勝久 篇

2017.09.12

1990年に初演されて以来、7年ごとに再演を重ねてきた劇団☆新感線の代表作『髑髏城の七人』。初演から27年が経った今年、2017年には東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京にて、“花・鳥・風・月”とシーズンごとにキャストはもちろん、大胆に脚本・演出を変化させながら上演を続けています。その第3弾となる“Season風”で<狸穴二郎衛門>役を演じるのは生瀬勝久さんです。

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生瀬さんが支度を終えてフロアに出てきた途端、「似合う!」「めっちゃかっこいい!」「お侍さんがそのまま現代にタイムスリップしてきたみたいだね!」などなど、スタッフが口々に感想を言っていると、その様子を見ていた演出のいのうえひでのりさんも一緒になって「いつかの大河ドラマにいたかのような雰囲気もあるなあ」とニコニコ。

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高い位置でワイルドにくくった髪に、口髭、顎髭が印象的な“Season風”の狸穴。衣裳には“三つ葉葵”ならぬ“四つ葉”になっている家紋が入っていて、背中にも特別大きくデザインされています。袴の横縞は色合いからいっていかにも“タヌキのしっぽ”風。

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アートディレクターの河野真一さんが「早速、“種子島”を持ってみようか」と小道具の鉄砲(通称・種子島)を生瀬さんに手渡します。生瀬さんは身体の前でそれを両手で抱えるようにして、ポーズ。バストショットから、撮影開始です。カメラマンの野波浩さんからは「種子島をもっと顔に近づけて」「ゆっくり、ニヤッとしてもらえますか」「今度は苦虫を噛み潰したような顔で」など、具体的な指示が続きます。生瀬さんはそんな注文通りに、鉄砲を持つ位置を変えたり、腹黒そうな笑顔を見せたり、眉間に皺を寄せた渋い表情になったり。モニターに次々と映されていくそんな生瀬さんの姿をチェックしていた河野さんは「はいはい!」と満足そうに頷いています。

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全身を撮る撮影では、鉄砲を持ち、少し足を広げたポーズからスタート。鉄砲の持ち方を相談されたアクション監督の川原正嗣さんは、自然な持ち方を生瀬さんに指導。すると、実はこういう火縄銃のようなものは撃てなくなる場合があるので、銃口を下げることは厳禁だったという話題になり、「ということは、下に向けられないのか……。じゃ、横に向けるか?」などと悩み出す河野さん。野波さんと一緒に、腰に差した刀の向きと鉄砲の向きのバランスに気を配りながらポーズを検討していると、その会話が耳に入った生瀬さん、言われる前にスッと自ら鉄砲を肩に担ぎます。「あ、もうやってくれてる」と、対応の素早さに野波さんも嬉しそう。

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撮影後半は、真正面から吹いてくる風に向かって撃つように鉄砲を構えるポーズ、風に向かって叫ぶようなポーズなど、サーキュレーターを使った撮影に。河野さんから「スーパーサイヤ人みたいに、髪の毛をもっとぶわっと後ろに流したい」とリクエストされた宮内さん。早速、スプレーと櫛を用意して生瀬さんの結った髪を後ろ方向に流して固めにセットします。

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さらに小道具の笠をかぶったり、懐手にした左手を胸元から出して顎髭をいじってみたりと、少し動きのあるポーズが続きます。ちょっとした仕草でも生瀬さんの場合は、手の動かし方のバリエーションが多く、みるみる味のある表情になっていくのもさすがの貫録。どうやら手応えがあったらしく、野波さんが「どう?」と様子を窺うと「バッチリ!」と河野さん。スタジオ中に拍手が響き、無事に撮影終了です。

意外にも劇団☆新感線にはこれが初参加となる生瀬さんに、『髑髏城の七人』Season風出演への想いや意気込みなどを語っていただきました。


——劇団☆新感線の本公演には初参加ですが、いのうえ演出作品ということでは『鉈切り丸』以来ということになりますね。今回、初めて新感線に、しかも『髑髏城の七人』という作品に出ることが決まった時はどんな感想を抱かれましたか。
いや、「声をかけていただいて、ありがとうございます」というくらいのもので、それほど特別な想いというのはなかったですよ(笑)。作品は観たことがなかったので、オファーを受けてから1997年版のDVDを拝見しました。「ああ、面白いお話だな」と思いましたね。僕の場合、基本的にどういう作品かとか、何かを観たり聞いたりしてから仕事を決めるということはしないので。

——そうなんですか。作品で選んでいるわけではない、と。
そうそう。作品で僕は仕事を受けないので。基本的にオファーが来たら、スケジュールさえ合えば出るというスタンスなんです。だって、オファーしてくださる人は「この作品のこの役を生瀬にやってもらいたい」という気持ちがあって声をかけてくださっているわけですからね。だったらそれにお応えするのが役者の本分だと思うんです。だけど実際にDVDで拝見してみたら、狸穴二郎衛門がとても魅力的な役で。「ああ、これは楽しいお仕事になるな」と確信しましたね。

——しかも今回は、この1本だけではなく既に“Season花”と“Season鳥”があって、それに続く第3弾としての“Season風”、さらにはこの後にも続くという企画だと聞いた時はいかがでしたか。
新感線は、特にライバルだったというわけではないのですが、ちょうど同世代に劇団をやっていたという、同じ時代を駆け抜けてきた人たちですからね。そういう団体がこうやって、1年間同じ演目で、大きな劇場にずっとお客様を入れ続けるような劇団になったということは、やっぱり感慨深いものがあります。

——生瀬さんが所属されていた劇団は、新感線と同じく関西発で、同期みたいなものでしたから。
まさにそうですね。そう考えると、自分たちもそうなっていたのかもしれない、とかね。結局、僕は途中で自分の劇団を出てしまいましたけど。それがこうして、このタイミングで新感線に出るというのも縁ですね。本当に近くにいた存在だったのに、これまでなかなか出る機会がなかったので。でもこの年齢になって、ようやくご一緒できるというのはうれしいですよ。もちろん、個人的にはいろんな方と舞台でご一緒したりしているんですけどね。(橋本)じゅんも、うちの劇団に出てもらったことがありますし。逆に、若い時でなくてこうやってある程度いろんなことを経験した年齢でご一緒できて良かったのかもしれない、と思ったりもします。

——いのうえ演出を受けられるのは『鉈切り丸』以来ということになりますが。前回、いのうえ演出を受けてみていかがでしたか。
とてもシステマチックなんだなと思いました。いのうえさんはご自分の好きなことというのがしっかりわかっていらっしゃる方ですから、それに乗るのが一番早いので。最初にきちんと、いのうえさんのマニュアルを理解するということがとても大事。で、そのマニュアルの中でどう遊べるのかってことなんですよね。いろいろな人から、いのうえさんの演出に関するうわさは聞いていたんです。「歩数まで決められるよ」とか。それを“苦”と思うのか“楽”と思うのかっていうのは、気持ちの持ち方なんですよ。僕はそれがとても楽だった、『鉈切り丸』の時には。結構、自由にさせていただきましたしね。ま、その感じで今回も稽古させていただければ、あれからいのうえさんが変わっていなければ、きっとまた楽しい稽古になるだろうなって思います。

——実は『鉈切り丸』でも共演されていた山内圭哉さんから「『鉈切り丸』の時は、いのうえさんと生瀬さんの相性がめちゃめちゃ良かった」という話をうかがいました。
そうですか。『鉈切り丸』というお芝居はとてもヘビーなお話で、その中で僕は頼朝という、とっても天然でハジける役だったものですから。ただでさえ、笑いに関しては低いところから始まっているような立ち位置だったので、僕としてはとてもやりやすかったんですよ。お葬式とか笑っちゃいけないところで、面白いことをすれば誰だってクスクスってなりますからね。

——今回の“Season風”は、カンパニーの顔ぶれとしてはいかがですか。
じゅんのことはよくわかっていますけど、松山ケンイチくんも向井理くんも、田中麗奈さんとも、舞台ではご一緒したことがないんですよね。映像ではご一緒したことありますけど、でもそれほどからんだこともなかったので、みなさん舞台ではどういうお芝居をされるのか、新鮮だし楽しみです。とりあえずみんなで協力し合って、面白い舞台にしたいなと思います。

——稽古、本番に向けて何か準備をされたりはしていますか。
やってますよ、いろいろ。だけど一番大事なことは、健康でいるということだと思うので、まずは人間ドックに行きました。長丁場、ちゃんと走り抜けられるかどうかを、人間ドックで全部調べて。すると、再検査が必要と言われて・・・。

——ええ? 心配じゃないですか!
そうでしょ。でも再検査をして、血液検査をして、大丈夫だということになったので、とりあえずは大丈夫です(笑)。

——(笑)。では最後にお客様へ向けて、ぜひ生瀬さんからお誘いメッセージをいただければと思います。
自分に関してはやはり“Season花”と“Season鳥”との違いを出せればなと思っているんですよね。同じストーリーではありますが、役者が変わればこれだけお芝居というのは変わるというところを、ぜひ楽しんでいただきたい。もちろん勝ち負けではないですけれど、僕の世界というのは唯一無二だと思っているので、そのお芝居をぜひ楽しんでいただければうれしく思います。僕は僕なりの考え方で狸穴二郎衛門という役を演じますので、きっと前二作を観た方もまた楽しんでいただけるはず。みなさん、ぜひ劇場に足をお運びください。