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撮影レポート 橋本じゅん 篇

2017.08.31

IHIステージアラウンド東京で上演されている劇団☆新感線の『髑髏城の七人』、第3弾“Season風”で<贋鉄斎>役を演じるのは劇団員の橋本じゅんさんです。1990年の初演版から、1997年版、2004年の『アカドクロ』版までずっと<抜かずの兵庫>役を演じてきた橋本さんですが、今回は満を持しての<贋鉄斎>に初役で挑みます。

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橋本さんが贋鉄斎用の衣裳をつけ、髪型を整え始めた時点で、その様子を見ていたいのうえひでのりさんが「もっと、サイドをペタッとさせたい」とヘアメイク担当の宮内宏明さんにリクエスト。宮内さんは早速、橋本さんの側頭部のボリュームを抑えめのスタイルに直していきます。後ろ髪はそのまま風になびかせたいとのことで、細めの口髭も含めて「また新しいじゅんさんだね!」と周囲のスタッフたちは撮影が始まる前から早くもニヤニヤが止まりません。特にアートディレクターの河野真一さんは、橋本さんの姿を目にした途端「ぷっ」と吹き出しつつ「素晴らしい!」と絶賛。

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胸元を開いてチラリと見えている胸毛も、宮内さんが丁寧に植えていきます。さらにメイクの仕上げとして、顔の真ん中に大きくクロスするように切り傷メイクが施されます。すると、テスト撮影を映し出したモニターをチェックしていた河野さん、この顔の傷の長さを延長し、もう少し太く目立つようにしたいと注文。これにはメイクの内田百合香さんがすぐさま対応し、傷メイクは完成。最後に頭のてっぺんに兜巾(ときん)を装着すると、さあ、撮影開始です。

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カメラマンの野波浩さんが「ずいぶん色っぽく胸元がはだけてるなあ!」と笑いながらシャッターを切っていると、河野さんも「何人なのかよくわからん……」と苦笑い。モニターをチェックしていたスタッフが「なんだかこのじゅんさん、画面から飛び出て来そうじゃない?」とつぶやくと、周囲の人たちも「本当だ!」「間違いない!!」と早速盛り上がり始めました。いのうえさんまでそこに加わり「さすが、フォトジェニックですねえ〜」とニコニコ。

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顔の横に手を持って行った際に気になったようで河野さんが「手に傷メイクを増やしたい、爪ももっと汚そう」と提案。内田さんが橋本さんの手をとって汚しを入れ、傷メイクを足して描いていると、「なんだか、お手入れしてる図みたいだね」と野波さん。それを聞いていた小道具の高橋岳蔵さんが「そう、お気に入りのハンドクリームでね!」とツッコむと、「ますますどこの国の人なのかわからなくなってきた……」と首をかしげながらも、見事なほどに全員が笑顔のスタジオ内。

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衣裳の前田文子さんによると、今回の贋鉄斎の衣裳は直垂(ひたたれ)をベースに、“西洋かぶれ”の刀鍛冶をイメージしてアレンジを加えているとのこと。襟と袖口のフリルやリボンが可愛らしく、重みのある長いマントも印象的。よく見ると肩のあたりや袴の部分につけられているのは、刀の鍔(つば)をデザイン化したオリジナルの紋で、とても素敵です。

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続いて、サーキュレーターやブロワーを使って強めの風を入れながらの全身ショットの撮影に入ります。左肩だけにマントを装着し、玄翁に装着した紐と共にうまく風になびくように調整。この日は特殊効果を担当しているスタッフの南義明さんが“風係”として参加し、工夫を凝らしながら絶妙の風を操っています。

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照明などの位置を変更するまでの、ちょっとした待機時間にはBGMに合わせてカタカタと下駄でリズムを刻む橋本さん。いつものようにレポート用のカメラを見つけると、ウインクしてくれたりもして毎度ながらサービス精神旺盛です。そうやってリラックスモードでいたかと思いきや、河野さんの「いきます!」という撮影再開の合図を聞いた瞬間に、スイッチオン! 目ヂカラならぬ、顔ヂカラがぐーんとアップ。シャッター音に合わせて表情やポーズもいろいろ、自分で工夫しながら変化させていきます。

橋本さんには撮影の合間を縫って、『髑髏城の七人』Season風への想い、そして初めて贋鉄斎を演じることについてなどを伺ってみました。

——橋本さんにとっては、1990年の初演版からこれまで何度も出演してきた『髑髏城の七人』ですが、今回の“Season風”で初めて<贋鉄斎>役を演じるにあたり、今の時点ではどう思われていますか。
どうやるかに関しては、とにかく台本を読んでみてからと思っていたんですが。ついさっき、いのうえさんから「あそこはオモシロおじさんコーナーですから」って言われたんですよね。僕は、それぞれが考えればいいんじゃないかなって思っていたのに、“オモシロおじさんコーナー”なのか……と、今ちょっと唖然としているところなんです(笑)。普通に贋鉄斎でいいんじゃないかと僕は思うんですけどね(笑)。

——面白くない贋鉄斎がいてもいいと?
いや、そうではなくて、花と鳥の後なのでむしろ普通に、台本の通りにやっていればとても面白い役になるじゃないでしょうか。それと今回は、自分がこれまでずっと演じてきた役を、目の前で他の人が演じているのを見ることになるので。果たしてどういう気持ちになるんだろうということも、ひとつ気になるところなんですよね。でも、とにもかくにも重要なのは体力。上演期間中ずっと健康でいられることが、一番大事です。

——客席が360°回転する劇場ということについては、いかがですか。
どんなものなんでしょうね。実を言うと、僕自身が揺れとか回転にあまり強くないほうなので、どうなんだろうと。だって僕、神戸のポートタワーに行った時でさえ、ちょっと気持ち悪くなっちゃいましたからね。あそこは、屋上のレストランがゆっくり回るんですよ。

——くるくる回るものに意外に弱い。
弱いですねえ(笑)。でもまあ、いろいろな意味で話題満載の劇場ということですよね。そうやって、いろいろと仕掛けてくるんですよ、新感線って。だけど、自分が出る前に“Season花”と“Season鳥”をお客さんとして観に行けるというのはちょっと嬉しかった。客席から新感線の舞台を観るのは、久しぶりなので。

——そもそも贋鉄斎という役に対しては、どんなイメージをお持ちでしたか。
それこそ初演版からしばらくは、劇団の先輩の逆木(圭一郎)さんが演じていたキャラクターでしたからね。つまりは「ナントカと鋏(はさみ)は使いよう」ではないけど、あの変態職人・贋鉄斎がいてくれたからこそ、物語がなんとかなったわけでしょう。解決に導いたのは、贋鉄斎が考えた奇策なわけなので。それまではただの変人だと思っていたんだけど、そこまでつきつめることができたら職人なんだなと。職人と変人と天才が入り混じった、奇異なキャラクターですね。だけど今日こうして僕がさせられている格好はなんだか“イタリアのオネエ”がイメージらしいんですが……。これって、一体どういうことなんでしょうねえ(笑)。

——本当に、まだまだ謎ばかりですね(笑)。そして今回の“Season風”では、松山ケンイチさんによる捨之介と天魔王の一人二役バージョンということも特長になるかと思います。松山さんとは、舞台では『蒼の乱』以来の共演ですね。
そうですね。一人二役バージョンは久しぶりなので、少し懐かしい思いもありますし、期待感が強いです。なにしろ、本当に大変だろうと思うので、そういう意味では古田(新太)が一人二役でやっていた時のように、大変な思いをしてやっている姿に座組のみんなが勇気づけられると思うんですよね。そうなると、自分たちも頑張っていこう、みんなで座頭を支えようという動きが起こりやすくなる。また、ケンイチもピュアな人ですから、一生懸命にやるだろうしね。だから僕の中には今、わりと美しい、すがすがしいイメージがあるんです。そんな中で、捨之介がピンチの時に「これがあるよ……」って出てくるのが贋鉄斎。それが「これがあるわよ?」って言い方になるのかもわかりませんけど。

——そんな口調の贋鉄斎も初めてでしょうね(笑)。
そうなるのかどうかはすべて、いのうえさんの演出次第ですけどね。でもやはり、他のバージョンにはない、我々のチームだけが持っている核、中心となるのはやはりその一人二役バージョンだということにはなってくると思うんです。そして、そういう核をやる上で松山ケンイチという人材は、綺麗ごとみたいに聞こえるかもしれないですけど、まさしく全身全霊で引き受けてくれる人なので。ステージ数も多くて大変ですが、そういう意味でもカンパニー全員できっと一丸となれるのではないかなと思っています。