インタビュー

立川談春さん

このドラマのお話を聞いたときの感想は?

昨年『ルーズヴェルト・ゲーム』へ出演させていただきましたが、まさかこんな短いサイクルで次のお話を貰えるとは思っていませんでした。
『ルーズヴェルト・ゲーム』で演じた坂東という社長が印象に残った方もたくさんいらして、「よくやった」とか「よくあんな嫌なヤツを演じられましたね」などと言っていただきましたが、あのドラマから1年で、またこのようなお話しをいただけたのは自信にもなりましたし、とても嬉しかったです。

写真

殿村を演じていて考えることや感じることというと?

原作を読んでいて、まさか自分が殿村を演じることになるとは思ってもいませんでした。殿村はとてもファンの多い人物だと思うのですが、ドラマをご覧になるみなさんの期待を裏切らないよう原作通りの殿村を演出することは、作り手側からするとスリルのないことなのかもしれない…といったことを監督から言われていましたので、最初の頃は、観ている方が何かちょっとした違和感を覚えるようなことができればと考えていました。生意気な言い方かもしれませんが、そこがドラマの中で一つのフックとして、監督の想いを再現できていたとすれば大変うれしいです。
実際、佃製作所での殿村の立場を考えてみると、とても異質な存在だと思うんです。例えば、大手の幹部候補生だったら30代のときに外の空気を吸わせるための出向でしょうけど、殿村の年代での出向となると、いわゆる“肩叩き”と同じようなもの。また、出向して最初の頃はというと、佃製作所側にはメインバンクから送られてきた異物という目線でしか見てもらえずに周りと馴染めず、といって元居た銀行へ戻るあてもない…。
そんな違和感と悲哀を抱えた殿村って、“夢破れた人”なんですよね。ところが、そんな人間の出向した先が、大きな夢を持って頑張っている社長のいる佃製作所だった。そこで、殿村自身もこの会社には違和感を覚えたと思います。きっと殿村も若い頃には夢があったのだろうけど、この年になって出向を命じられた立場からすると、「また新しい夢を見ます」とも言えないでしょうし、どう再スタートをするのかという殿村が抱えていた葛藤など、ちょっと想像していただくと、特に世のお父様方には身に染みるところだと思います。

写真

そんな殿村を演じて難しいと思うところはありますか?

卑怯な言い方をさせていただくと、難しい事がわかるにはあまりにも経験が不足していると思います。「そんなこと言っても、殿村を演じているじゃないか!?」と言われると、それなりにはやっているかもしれません。でもそれって、自分がどうだというよりは、自分を選んだプロデューサーや監督の手柄だと思っています。変わっていると思われるかもしれませんが、なぜそう思えるかというと、自分は落語という個人芸をやっているからでしょうね。
落語は、演出からキャストから下手すりゃ美術、音響、照明、小道具まで自分でやりますけど、一方のドラマは、そこに関わる人がパーツとなって一つの作品を提示するもの。なので、とても新鮮ですし、ドラマの撮影現場へ入ったとき、初めて“人のため”ということを考えました。ドラマって、テレビに映っているのは役者だけですが、その周りには何十人、下手すりゃ100人もの人が睡眠時間を削って毎日頑張っているわけですからね。それを想うと、かなりのプレッシャーですよね。スタッフのみなさんがこんなに頑張っているのだから、自分が画面に映っているシーンはキチンと形にしなければいけないぞと思いますし、そう思えたことは、このお仕事をいただいた中で、自分にとっていちばん良かった点でした。

主演を務める阿部寛さんの印象というと?

落語家だから言えることなのかもしれませんが、主役を張るというのは凄いことだと思います。自分が周りと同等、あるいはそれ以上に、チームリーダーとして引っ張っていかなきゃいけないという気概や責任感がないと持たないのだろうな…ということは、横で見ていて伝わってきますし、演技が良いとか、そういうのではないところでの凄さを感じています。
もう、阿部さんの背中をみていると、自分も頑張らなきゃいけない! と思います。

写真

ご自身もドラマの主役をやってみたいと思われますか?

主演の方のセリフの量なんて、とても覚えられません。落語の方が長いと思われるかもしれませんが、落語は一人で成立しますし、それこそどれだけ間違えてもいいんです。例えば、Aという役を間違えたとしても、Bがフォローすることで最後にまとまればいい。でも、ドラマの場合、Aがセリフを間違えるとBは呆然としますからね。そこで、呆然としたBを見てAも佇むでしょ(笑)。
相手役がどんなトーンでセリフを言ってくるのか、自分が想像出来るような感じで役者さんは来ないでしょうし、セリフを変えてくることもある。そうすると、覚えていたセリフが出てこなかったりしますから。でも、落語の中では、自分の知らないセリフをいうことはありません。
そこの違いは大きいですし、演じる役になりきるドラマの難しさなのだと思います。

落語の世界に入ったきっかけや、当時の夢というと?

ビートたけしさんです。僕らの世代の思春期は漫才ブーム一色で、北野武という人に憧れまくっていました。たけしさんの様に首を曲げながらしゃべるヤツが学校に何人かいましたし、自分もその一人でした。そこから、芸能の世界に興味を持つようになって、そうしたら立川談志に出会って、自分にとって立川談志の方がアブなくて鋭くて、そしておもしろかったんですよね。
その時は、落語家になったらこういう夢を叶えたいといったことは、ゼロでしたね。ただ落語家になりたいと思っただけで、食べられるとかどうとかなんて考えず、落語家になれたという時点で「夢が叶った!」と思っていました。でも、そんな自分に対して師匠は、それだけじゃダメなんだよということを、面とは言ってくれないんです。どんな仕事もそうだと思うのですが、「希望の会社に就職できたので私の夢は叶いました」ということではないはず。そこをスタートに、新たな夢や目標を持たなければならないですし、それは、自分で見つけなければいけないと思います。自分の場合は、弟子入りしたときには、これで夢が叶ったと思っていたのが、段々と人前で喋る機会が増えてきて、そこでお客様に少し喜んでいただける様になってくると、夢とか欲が芽生えてきました。

写真

ご自身の今の夢というと?

おそらく40代ともなると、夢を持たなくなる人も多くなってくる年齢だと思いますが、幸せなことに自分の場合は憧れていたことや、やりたかったことが40代でいろいろと叶いました。
50代になってくる中での夢というと、どんなことなのかなと考えてしまいますが、今のところ落語という仕事の中で少しは“自分がしなければならない役”を与えられている気がするので、それに対しては応えたいという想いはあります。
ただし、本当ならば今も夢を見ないといけないと思います。20代から30代は勢いで突っ走ることができましたが、ある程度経験を積んできた中、50歳になった今、どうして落語をやりたいんだ? とか、そもそもなぜ落語家になったのか? ということと向き合わないといけないと感じています。これは、根気の要ることですし、厳しい作業だと思います。
そんなこともあって、殿村という人物を演じながら、殿村が向かい合う状況の中で新たな夢を見つけていくということを学んでみたいと、ここ最近は考えています。

このドラマにかける想いというと?

もしかして「コイツはいいやつなのかな?」と思っていただければ、少しは殿村という人物を演じられたのかもしれませんね。

土屋太鳳さんがお届けします!下町ロケットニュース!

PAGE TOP