TPPを生き残れ ある農家の取り組み

今日は政府が交渉への参加を表明したTPP=環太平洋パートナーシップ協定を取り上げます。

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TPPはモノやサービスなどの関税をなくして貿易の自由化を徹底的に進めることを目標として、アメリカやオーストラリア、シンガポールなど11か国が交渉に参加しています。さらに中国も関心を示しています。 日本は今月下旬に初めて交渉に参加する見込みですが、農業が大きな打撃を受けると予想されるため農業団体が強く反対しています。TPPに立ち向かおうとする農家を取材しました。

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埼玉県三郷市の広大なハウスで育てられているベビーリーフ。 大熊さんは20人の従業員を雇う会社の社長で、50種類以上のベビーリーフを栽培しています。

「こういうものが10種類くらいで、ベビーリーフミックス」(オオクマ園芸社長・大熊正道さん)

この会社ではJAを通さず、直接、東京都内の高級レストランなど全国の150店舗に出荷していて、新しい契約に対応しきれないほどの人気だといいます。 人気の理由はカスタマイズです。同じ品種でも大きさによって区別することで、300種類以上の商品を用意。顧客の要望に細かく応じることで、高い価格での販売を可能にしているのです。

「小さいものだと1キロ10万円で出してます」(大熊正道さん)

大熊さんは日本のTPP参加に賛成の考えで、関税がゼロになれば人件費が安い東南アジアで商品を作り、日本に逆輸入することも考えているといいます。

「それだけ販路も広がる。TPPいらっしゃい、ウエルカム」(社長大熊正道さん)

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TPPをチャンスととらえる人がいる一方で、日本が「重要品目」と位置づけるコメ農家の思いは複雑です。

「かわいくてしょうがない。この後が楽しみ」(コメ農家・前坂芳則さん)

富山県黒部市で青々と育った稲を見つめるコメ農家の前坂さん。 いざTPP参加となった場合の武器にしようと、新しい品種のコメの栽培に力を入れ始めました。

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富山県の農業研究所が開発し、10年前から本格的な栽培が始まった「てんたかく」。 コシヒカリの収穫が9月なのに対し、8月に収穫できる「早生米」で、いちはやく新米として出荷できます。

「コメがちょうど切れるときに 新米が出せるというのが魅力」(前坂芳則さん)

しかし、TPPに参加すれば海外のコメとの価格競争にさらされる可能性が高い・・・。 そこで、長女の邦子さんは価格競争に巻き込まれる前に「てんたかく」を売り込む方法はないか考えていました。

「付加価値をなんとかつけたい 。ブランド化していきたい」(前坂邦子さん)

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ブランド化することで海外の安いコメに対抗する・・・。 生き残りの道を広げようと前坂さん親子は東京・日本橋の高級デパートに向かいました。

「てんたかく」を売り場に置いてもらえないか担当者との商談に臨んだのです。 しかし・・・。

「新しい品種はお客様の目はいきやすい。ただ、新しいだけでは 購買まではいきにくい・・・。すべての物を百貨店で扱う必要はないし、ふさわしい場所で売ることが一番大事」(食品部門の担当者)

このデパートのコメ売り場には小分けにされ、きれいに包装されるなど、工夫の凝らされた商品が並んでいました。 現実を目の当たりにした前坂さん親子は・・・。

「これ以上に頑張らないと、世界を相手にできないということが 十分に分かりました」(前坂芳則さん)
  「ただおいしいというだけでは 伝わらない。今まではただおいしいですよと言っていたが、もうちょっと絞り込みたい」(前坂邦子さん)

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前坂さんのような小規模な農家に生き残る道はあるのでしょうか。 店内に全国のブランド米がずらりと並ぶこちらの店。 「五つ星お米マイスター」という資格も持つ社長の西島さんは、何度も産地に出向き、個々の農家や自治体の職員らと話をし、ブランド米を作ってきました。

「日本中の人が知っているブランド米になるには、個人の農家の宣伝力とか栽培方法のこだわりではダメ。(それができなければ) 今のままなら消えていく」(「スズノブ」社長・西島豊造さん)

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西島さんは、コメ農家が個別に努力するだけでは、これからの時代を生き残るのは難しいと見ています。 政府が発表した「成長戦略」では、農業の担い手の所得が増えるよう、農地の集約と大規模化による生産コストの削減が掲げられていて、「農業の産業化」が進むことになります。しかし、それでは小規模な農家が淘汰されるのではないかと危惧しているのです。

「産地に行って、農家と直に話し合って、いろんなことを目の前で見ていると、無理だという感じしか してこない。棚田のお米とか、ひとつの集落だけのお米とか、どうやって産業化するんですか」(社長西島豊造さん)

こうした声をTPP交渉参加に舵を切った政府を支える与党・自民党はどう受け止めるのでしょうか。 先月下旬、富山市内で開かれた勉強会で地元選出の国会議員は長年、自民党を支えてきた農家らを前に、こう訴えました。

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「基本的な柱は2つあります。一つは産業政策。もう一つは地域政策。この2つを忘れてはいけない。地域を離れて農政、というものはあり得ないんだと」(自民党・宮腰光寛衆院議員)

不安を抱えながらもがくコメ農家。 ただ、前坂さん親子はあきらめてはいません。

「自分たちでもっともっと攻めていかないと」(前坂邦子さん)
  「これからも生きていくには “自分の道”というのは大事だと思う」(前坂芳則さん)

日本の農業はどこへ向かうのでしょうか。

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