日本には島国という地理的条件から、独自の進化をしてきた日本固有の動植物がたくさんいます。しかし近年、産業構造の変革や外来種の移入など、目まぐるしい環境の変化によって日本固有の種が危機に追いやられています。失われつつある日本の希少動植物の保存を目的として全国から様々な情報を収集し、発信していきます。
contents

第6回
耳の短い不思議なウサギ
耳の短い不思議なウサギ
アマミノクロウサギの特徴
なぜ奄美大島と徳之島に棲んでいるのか
ハブがいたからクロウサギが残った?!
タイムカプセルの島
アマミノクロウサギの一日
アマミノクロウサギの発見と保護の歴史
タイムカプセルの未来
取材協力者・参考文献

バックナンバー

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■タイムカプセルの島

 世界の他の地域で滅びてしまった古い型のウサギの「遺存種」として、奄美大島と徳之島にはアマミノクロウサギが生きています。同様にこの二つの島には、他では見られない貴重な生き物たちがたくさん棲んでいます。面積にすればごく狭い奄美大島や徳之島近辺にしか棲んでいない生き物たちは、大雑把に数えても、哺乳類が約五種、鳥類が約十種、爬虫類が約十三種、両生類が約十種、淡水・汽水域に棲む魚類が約九種もいます。
 なぜこんなに独自の生き物が多いかといいますと、アマミノクロウサギと同様に、それらの生き物はみな南西諸島が大陸とつながっていた時代に島に渡ってきて、後に島に隔離され、独自の姿や生態を維持してきたからです。奄美大島や徳之島は、「生きている化石」や島ならではの生き物たちを保護する、いわばタイムカプセルのような島なのです。
 これらの生き物たちは、みなアマミノクロウサギを含めた島の生態系を構成している大切な一員で、どれか一種が欠けてもバランスが崩れ、生態系全体が崩壊してしまいかねません。アマミノクロウサギが島で安定して暮らし続けるには、これらの生き物たちが全て健在であり続ける必要があります。
 アマミノクロウサギをよく知るために、同じ島に棲む仲間である生き物たちを何種か紹介しましょう。

■ほ乳類

●トゲネズミ

学名:Tokudaia osimensis[トクダイア・オシメンシス]
分類:哺乳綱齧歯[げっし]目ネズミ亜目ネズミ科トゲネズミ属。
分布:世界のうち、奄美大島・徳之島・沖縄本島にしか分布しない。日本固有属であり、日本固有種。
大きさ:頭胴長12cm〜17.5cm、尾長9.8cm〜11.9cm

形態と生態:
シダや草が茂っている場所に棲む。この種の研究は進んでおらず、生態はほとんどわかっていない。奄美大島と徳之島に分布する亜種アマミトゲネズミは、環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧IB類に挙げられている。国の天然記念物にも指定されている。

●ケナガネズミ
学名:Diplothrix legata[ディプロトリクス・レガタ]
分類:哺乳綱齧歯[げっし]目ネズミ亜目ネズミ科ケナガネズミ属。アマミノクロウサギと同じく一属一種。
分布:世界のうち、奄美大島・徳之島・沖縄本島にしか分布しない。日本固有属であり、日本固有種。
大きさ:頭胴長22cm〜33cm、尾長24cm〜33cm


形態と生態:
樹上性で、尾と体毛の長いネズミ。この種の研究は進んでおらず、生態はほとんどわかっていない。日本のネズミの中で最も数が少なく、絶滅に近いと言われ、環境庁(現環境省)のレッドリストで「近い将来における絶滅の危険性が高い」とされる絶滅危惧IB類に挙げられている。国の天然記念物にも指定されている。

   
■鳥類
●アカヒゲ

学名: Erithacus komadori[エリタクス・コマドリ]
分類:鳥綱スズメ目ツグミ科コマドリ属。
分布:世界のうち、日本の南西諸島と男女群島にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:全長14cm


形態と生態:
渡りをしない留鳥で、主に沢沿いの常緑広葉樹に生息する。雄も雌も背が赤茶色をしており、雄だけ顔から胸にかけてひげを生やしたように黒い。さえずりが美しいことで有名である。奄美大島や徳之島に分布する亜種アカヒゲは、環境庁(現環境省)のレッドリストで「絶滅の危険が増大している」とされる絶滅危惧II類に挙げられている。国の天然記念物にも指定されている。
  ●アマミヤマシギ

学名: Scolopax mira[スコロパクス・ミラ]
分類:鳥綱チドリ目シギ科ヤマシギ属。
分布:奄美大島と徳之島と加計呂麻島[かけろまじま]に分布。沖縄本島にも少数が周年生息。日本固有種。
大きさ:全長36cm


形態と生態:
渡りをしない留鳥で、地上性であり、山地の薄暗い林に生息する。鳥には珍しく夜行性で、夜間に林道やサトウキビ畑で餌を取る。外見は本土にいるヤマシギによく似て、嘴が長く、全体的に茶色いまだら模様があって、地味。環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧IB類に挙げられている。

   
●オオトラツグミ

学名: Zoothera major[ゾーテラ・マヨル]
分類:鳥綱スズメ目ツグミ科トラツグミ属。
分布:世界のうち、奄美大島と加計呂麻島にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:全長30cm


形態と生態:
渡りをしない留鳥で、原生的な照葉樹林に生息する。外見は本土にいるトラツグミに酷似しているが、鳴き声が全く違う。夜明け前後によく鳴く。現在の個体数はわずか100羽前後と推定されており、環境庁(現環境省)のレッドリストで「ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い」とされる絶滅危惧IA類に挙げられている。国の天然記念物にも指定されている。
  ●ルリカケス

学名: Garrulus lidthi[ガッルルス・リドティ]
分類:鳥綱スズメ目カラス科カケス属。
分布:世界のうち、奄美大島と加計呂麻島と請島[うけしま]にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:全長38cm


形態と生態:
渡りをしない留鳥で、平地から山地の常緑広葉樹林や農耕地に生息し、人家付近にも多い。頭頂部から頚、胸にかけて瑠璃色で非常に美しい。環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧II類に挙げられている。国の天然記念物にも指定されている。

   
■両生類
●オットンガエル

学名:Rana subaspera[ラナ・スバスペラ]、またはBabina subaspera[バビナ・スバスペラ]
分類:両生綱無尾目アカガエル科アカガエル属、または両生綱無尾目アカガエル科トゲユビガエル属。
分布:世界のうち、奄美大島と加計呂麻島にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:体長9.3cm〜14cm。


形態と生態:
山地や山沿いの低地に棲み、夜行性で、溜まり水の付近で見られる。大型で黄褐色の体色をしており、一見ヒキガエルに似ている。通常のカエルの前肢の指は四本なのに、オットンガエルは前肢に指が五本あるという極めて変わった特徴を持ち、五本目の指には鋭い骨がある。環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧II類に挙げられている。
  ●イシカワガエル

学名: Rana ishikawae[ラナ・イシカワエ]
分類:両生綱無尾目アカガエル科アカガエル属。
分布:世界のうち、奄美大島と沖縄本島にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:体長9cm〜11cm


形態と生態:
山地の森林に生息し、夜行性で、渓流付近に見られる。緑色の地に黒褐色の斑紋があり、指先の吸盤が大きく発達している。環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧IB類に挙げられている。沖縄県のものは県指定の天然記念物となっている。

   
●イボイモリ
学名: Tylototriton andersoni[ティロトリトン・アンデルソニ]
分類:両生綱有尾目イモリ科イボイモリ属。
分布:世界のうち、奄美大島・徳之島・沖縄本島・渡嘉敷島[とかしきじま]にしか分布しない。日本固有種。
大きさ:全長13cm〜19cm


形態と生態:
森林や耕作地の倒木や落ち葉の下にひそんで暮らす。本土にいるニホンイモリ(アカハライモリ)と違い、腹面も背面も黒褐色で、肋骨が体の両側に張り出した形をしており、背の皮膚にいぼがあるように見える。環境庁(現環境省)のレッドリストで絶滅危惧II類に挙げられている。
   

アマミノクロウサギの一日


絶滅の危機にある動植物たち生物図鑑
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