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かつて日本の生態ピラミッドの頂点にあったオオカミは、
草食獣を食べることによってその数を調整し、生態系の
バランスを保つ働きをしてきました。
しかし、そのオオカミが我々の前から姿を消しておよそ一世紀が経ち、新たな環境問題がおこっています。北海道ではエゾシカが増え過ぎて森林を荒らし、貴重な原生林までがその脅威に晒されています。本州や四国、九州でも増えすぎたニホンジカやニホンカモシカなどによる獣害で多大なダメージを受けている農林業地域も少なくありません。
●日本にオオカミを導入する試み
東京農工大・丸山直樹教授(野生動物保護学)は日本にオオカミを導入することによって、シカなどの草食動物の個体数を調整させようとする運動を行っています。丸山教授が中心となって1993年に設立された日本オオカミ協会は、これまでに中国、モンゴルなどでオオカミの生態調査、日本でのオオカミ棲息地に適している地域の調査も行うとともに、オオカミに対する偏見をなくすためにシンポジウム開催などの広報活動にも取り組んできました。最近では、森林組合などを中心に検討課題の一つとしてオオカミの導入を取り上げるところも出始め、丸山教授への相談も増えてきています。
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また私有地を買い取って保全し、木を植える「しれとこ100平方メートル運動」を行ってきた北海道・斜里町では、1997年6月より、原始の森を復活させ、絶滅あるいは絶滅の危機にある動物を導入して、生態系を復元する運動「100平方メートル運動の森・トラスト」を展開しています。オオカミも復元対象生物種の候補としてリストアップされており、現在、専門委員会によってその他の動物と共に検討のための資料収集が始められています。しかし、実際の導入となると様々な問題があります。オオカミによる危害を心配する声も根強く残っており、オオカミが生存する諸外国では、共生のための試行錯誤が続けられています。
最近の例ですと、2000年の夏に、ノルウェイとスウェーデンにまたがる南スカンジナビア地域にわずか40頭ほどしか残っていないオオカミのうち、3頭が合法的に駆除されました。理由は、オオカミが牧畜業者の羊を襲うから、というものです。引き続いてノルウェイは、2001年の冬にもオオカミを駆除すると発表し、環境保護団体や自国の一般市民から非難を浴びています。
また、絶滅した地にオオカミを再導入して、比較的成功した例として知られているアメリカ合衆国のモンタナ州でも、オオカミと人間との衝突を避けるために家畜に近付こうとすると電気ショックを与え、「家畜を襲おうとすると痛い目に遭う」ことを学習させてから、オオカミを野に放つという試みがなされています。このような試みは人間にとってもオオカミにとっても福音だと歓迎する人々がいる一方、野生生物の本性を失わせる残酷な行為だと批判する人々もいます。
いずれにせよオオカミを導入するには、餌や行動範囲などの生態学的な土壌はもとより、それ以上に人間側がオオカミについての十分な知識を持ち、偏見のない文化的な土壌が必要不可欠なのはいうまでもありません。
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