日本には島国という地理的条件から、独自の進化をしてきた日本固有の動植物がたくさんいます。しかし近年、産業構造の変革や外来種の移入など、目まぐるしい環境の変化によって日本固有の種が危機に追いやられています。失われつつある日本の希少動植物の保存を目的として全国から様々な情報を収集し、発信していきます。
contents

第4回
ヤンバルクイナを守れ!
保護の状況
ヤンバルクイナの生態
ヤンバルクイナの発見
追いつめられるクイナの仲間
参考文献

バックナンバー

メダカの学校は川の中?
タンポポ戦争の真実
日本にオオカミはいるか?
東京湾のトビハゼ
耳の短い不思議なウサギ
西表島のヤマネコ物語

第2回 タンポポ戦争の真実

●保護の状況
  ヤンバルクイナは公式に「発見」された翌年の一九八二年に、国の天然記念物に指定されました。  略称をIUCNと呼ばれる国際自然保護連合が編纂した『絶滅の危機にある動物一覧』―通称『国際版レッドデータブック』または『国際版レッドリスト』―では、ヤンバルクイナは「絶滅の危機が増大している」危急種とされています。  日本の環境庁が編纂した『日本の絶滅のおそれのある野生生物』―通称『日本版レッドデータブック』または『日本版レッドリスト』―では、「絶滅の危機に瀕している」絶滅危惧種[ぜつめつきぐしゅ]に挙げられています。  このように保護の網がかけられてはいるものの、ヤンバルクイナの保護の状況が万全かというと決してそうではなく、むしろ危機的な状況は日に日に強まっていると言わざるを得ません。

 現在、ヤンバルクイナは、全部で一五○○〜一八○○羽くらい、多くても二○○○羽くらいしかいないだろうと言われています。最新の調査によると、ヤンバルクイナの生息域は確実に狭まっており、開発が進む山原[やんばる]の南側から次第に姿を消しつつある、という残念な報告がなされています。

 現状で最もヤンバルクイナを脅かしているのは、マングースと野良ネコです。どちらも人間の手によって島に持ちこまれた生物です。マングースは、沖縄で人々に大きな害をもたらしている毒蛇ハブを退治するために、人為的に沖縄本島と奄美大島に持ち込まれました。ところが人間の思惑に反して、マングースは獲るのが大変なハブを食べるよりも、簡単に獲れるアマミノクロウサギやヤンバルクイナを食べることを選び、それでなくとも数が少ないアマミノクロウサギやヤンバルクイナの数を減らすことになってしまいました。

 アマミノクロウサギもヤンバルクイナも、マングースのような強力な肉食獣がいない島の中で暮らしていたため、対抗する術を知らずにどんどん食べられてしまったのです。  同じことが野良ネコについても言えます。ネコはマングースと違って愛玩用に人間に連れてこられ、逃げ出したり捨てられたりしたものがあちこちで野生化しました。内地でも野良ネコはいろいろ問題を起こしていますが、沖縄本島のような島で野生化してしまったネコの被害の方がより深刻です。先に述べたように、強力な肉食獣がいない島の中で暮らしてきた生き物たちは、ネコのように敏捷で優れた肉食獣に対抗する術を知らないからです。

 最近になって、人間が勝手に持ち込んだマングースやネコのために、ヤンバルクイナのような在来の生き物が危機に陥っていることがようやく知られるようになりました。現在、マングースや野良ネコをヤンバルクイナが棲む地域から排除しようという意見が強まっています。けれども、マングースもネコも適応力がある強い生き物なので、根付いてしまったものを排除することが難しく、今のところマングースや野良ネコからヤンバルクイナを守る有効な手立ては取られていません。

 ヤンバルクイナを脅かす別の大きな要因は、開発です。人間の生活のために、ヤンバルクイナが棲む地域にも道路やダムが作られ、木が伐られて、ヤンバルクイナの棲める場所が減っています。地元で暮らす人々にとっては、開発は必要なものかも知れません。しかし、豊かな自然はそれ自体で財産です。ヤンバルクイナが棲む森に象徴されるような緑がなくなれば、人間が吸う空気が汚れ、人間が飲む水も涸れてしまいます。人間の知恵を結集して、ヤンバルクイナと人間とが共存できる環境を維持してゆきたいものです。

絶滅の危機にある動植物たち生物図鑑
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